2018年8月15日(水)

変わる大学入試、改革の行方を探る

2016/4/5 18:00
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東大は推薦入試を導入し、グローバル社会で活躍できる人材を育てる(東京都文京区の安田講堂)

東大は推薦入試を導入し、グローバル社会で活躍できる人材を育てる(東京都文京区の安田講堂)

 文部科学省の有識者会議が大学入試改革の最終報告をまとめた。2020年度の新テスト導入を目指すものの実現にはなお課題が多い。入試はどうなるのか。改革の行方を探る。

■「脱日本型」模索 欧米は予算も人手も桁違い

大学を活性化させるため、多様な能力や個性を重視する。東大の推薦入試の狙いは、20年度から始まる「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」などが目指す国の改革とも重なる。

東大などが手厚い入試による異才発掘に乗り出した背景には国際競争力の低下への危機感もある。だが欧米の一流校は先を行く。「入学者1人の採用コストは2231ドル(約25万円)」「学部定員3200人を選抜するため、毎年1万人以上を面接する」。

専任スタッフをそろえる欧米の一流校に対して、日本の大学の多くは教員が入試業務を兼任する。参加した国内の大学関係者は「入試にかける予算も人手も桁違いだ」と話す。

変わる大学入試(上)「脱日本型」模索 欧米、予算も人手も桁違い(4月3日)

■理念だけでは学生とれない

毎年10万人の受験生を集める早稲田大学。私学の雄が今、入試の現状に危機感を募らせている。「一般入試とAO(アドミッション・オフィス)・推薦入試の入学者比率を逆転させる」。昨年12月、鎌田薫総長は現在、入学者の6割を占める一般入試(筆記試験)を4割まで引き下げる長期目標を発表した。

「東大との併願組はいらない。早稲田で学ぶ志のある高校生を全国から集め、キャンパスに多様性を取り戻したい」と鎌田総長。手始めに2018年度から、地域貢献に関心を持つ高校生に対象を絞った奨学金付きAO入試を導入する。

文部科学省の有識者会議がまとめた入試改革の最終報告は、各大学が教育理念に沿った入学者受け入れ方針(アドミッション・ポリシー)に基づき、学生を選抜するよう提言した。だが定員割れで苦しむ大学には絵空事に映る。

定員を確保できている中堅大学も現実は厳しい。「人物本位の丁寧な入試で本当にほしい学生を選抜できれば理想。でも、そんなことを言っていたら定員は埋まらない」。実践女子大の井原徹理事長は打ち明ける。学生欲しさに、学力を問う余裕を失う大学。この構造にメスを入れない限り、入試の現場はいつまでも変わらない。

変わる大学入試(中)理念だけでは学生とれぬ 「中堅以下」置き去りに(4月4日)

入試は長く偏差値に縛られてきた

入試は長く偏差値に縛られてきた

■新テスト、具体像描けず

「拙速なロードマップは避けるべきだ」3月16日、東京・竹橋で開かれた国立大学協会の総会後の記者会見。京都大学の山極寿一学長が「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の2020年度導入に異を唱えた。

大学入試センター試験に代わる学力評価テストは、マークシート式とは別に記述式を導入する。だが誰が採点し、公平性をどう担保するのか――。同25日の文部科学省の有識者会議の最終報告でも、50万人を超えるセンター試験と同規模の受験者を想定する記述式の課題は残ったまま。

思考力や表現力などを問う新しい入試の具体像は見えない。それでも中学や高校の一部は少子化時代の生き残りを懸け、走り出す。都内のある大手進学塾は16年度からアクティブ・ラーニング(能動的な学習)を取り入れた講座を設置。グループディスカッションやグループワークを取り入れた課題解決型の授業を始める。

変わる大学入試(下) 新テスト具体像描けず 生き残りへ「最適解」探る(4月5日)

最終報告案をまとめた高大接続システム改革会議であいさつする安西座長(左)(3月25日、文科省)

最終報告案をまとめた高大接続システム改革会議であいさつする安西座長(左)(3月25日、文科省)

■東大・京大新入生が語る推薦・特色入試合格まで

中学時代から東大に憧れ、当初は一般入試を受けるつもりでした。「高校3年間はずっと勉強かな」と考えた時期もありましたが、興味を持った活動には積極的に関わり、1年生の頃から県内の高校生と中国の高校生との交流事業などに携わりました。

昨年11月に出願して今年2月の合格発表まで3カ月もかかることや、小論文の提出が必要なことなどから一般入試に絞ってはとの声もありましたが、志望動機をまとめるうちに、大学で何を学びたいのか改めて整理できました。

面接では、震災の経験から減災や防災、コミュニティーの希薄化などに建築の観点から取り組みたいといった将来の目標を伝えました。入学後も幅広く学び、様々な人と関わりながら、東大が求める「知のプロフェッショナル」を目指します。

東京大の推薦入試に合格した鈴木敦己さん

東京大の推薦入試に合格した鈴木敦己さん

 京大に対しては中学時代から学校が企画した授業見学や進学した先輩の話を聞く機会があり、あこがれていました。高校の授業を通じて株価や景気に関心を持つようになり、大学で経済を本格的に学びたいと思いました。しかし、ほとんど勉強せず、現役時代は京大より2ランク下の大学も不合格でした。

特色入試を知ったのは浪人中だった昨年夏。一般入試での京大受験は諦めていましたが、通っていた予備校の小論文講習で高得点を取れたこともあり、受験を決意しました。

提出書類のうち、入学後の学習目標などを記す「学びの設計書」には、行動経済学を専攻し、将来は大学院に進みたいと書きました。京大のホームページで開設科目を見たり、既に進学した高校の同級生に授業内容を聞いたりして、具体的に学びたいことをまとめました。

小論文試験では「現代における『自由』の問題を取り上げ、論じろ」といった問題が出ました。日ごろ新聞を読んだりニュースを見て関心のあった障害者と健常者との格差の是正を取り上げ、書き切ることができました。

東大・京大新入生が語る 推薦・特色入試合格まで 変わる大学入試(上)(4月3日)

■早大総長「独創性伸ばす評価法を」

多様な個性を持つ学生が切磋琢磨(せっさたくま)し、幅広く飛び立っていくことが早稲田の伝統だが、最近は均質化が進んでいると感じる。日本の初等中等教育の成果でもあるのだろうが、大学入学が最終目標になり、そのためにマークシート式など、答えのある問題をどれだけ早く解けるかが重視される流れが小中高校を通じて際立っている。

 偏差値至上主義から、生徒が独創的に考える力を伸ばせるように評価の方法も変えなければならない。高校3年間の学びの全体をきちんと入試で評価する仕組みが重要だ。

 在学生の成績を平均してみると、最も高いのは意欲を持って入学したAO入試の学生だ。東京大や京都大が不合格だった学生の中には「自分はこんな場所にいるはずじゃなかった」「本当は東大に受かっていたけど、熱が出ちゃって」などといつまでも考え、入学後も向学心がなくなったり、斜に構えたりすることが今もある。

早大にとっても、学生にとっても望ましいことではない。これも学生や保護者が偏差値に縛られているからだと思う。同時に「早稲田に入れば他大学よりずっといい学びができる」と伝えられていない大学側にも問題はある。800近くある大学によって特徴は違うが、各大学が「ここに入れば新しい人生がある」という魅力や強み、ブランドイメージを作り、もっと発信していくべきだ。

大学入試改革「独創性伸ばす評価法を」早大・鎌田総長 変わる大学入試(中)(4月4日)

鎌田薫 早稲田大学総長

鎌田薫 早稲田大学総長

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