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インバウンド消費に減速懸念

1~7月の訪日客数は前年同期比47%増の1105万人となった

海外からの訪日客(インバウンド)の増加が加速している。企業や商店街、観光地は旺盛な消費を取り込もうと手を打つが、中国株安や人民元の切り下げなど注意が必要な材料も出てきた。

訪日客、過去最速で1000万人突破

日本政府観光局が19日発表した1~7月の訪日客数は前年同期比47%増の1105万人となった。1000万人の大台到達は昨年より3カ月早く、過去最速となる。
中国をはじめとするアジアからの訪日客が急増しており、観光庁は「特段の外的要因がない限り、通年で1800万人を超える見込み」と分析している。
7月に日本を訪れた外国人は前年同月比51%増の191万人で、単月としてこれまでで最も多かった。訪日客数が大きく伸びているのは、円安で日本での滞在や買い物が割安になっているのに加え、政府による査証(ビザ)の発給要件緩和や消費税の免税制度拡充などが要因とみられる。
1~7月の訪日客数を国・地域別にみると、中国が前年同期に比べ2倍強の275万人で首位となった。2位は韓国の216万人(42%増)、3位は台湾の215万人(29%増)で、香港、米国が続いた。
中国からの訪日客の大幅な増加は、日本政府が今年1月に何度も入国できる数次ビザの発給要件を緩めたことも背景にある。外務省によると、中国向けのビザ発給数(1回限りも含む)は2014年が204万件で、13年の2倍強となった。発給要件の緩和で今年も増えているとみられる。
日本政府は「東京五輪のある2020年までに訪日客2000万人」の目標を掲げている。今年の前倒し達成も現実味を帯びている。
訪日客1105万人、中国・アジアから中心に47%増(8月20日)

迎える方も日々進化

ラオックスは四半期ごとに公表していた国内免税店の販売動向を7月分から毎月公表する。大半が訪日外国人客で、インバウンド消費の動向をいち早く示す指標としても注目される。
ラオックス秋葉原本店(東京・千代田)は夏休み期間中も訪日客でにぎわう
ラオックス、免税店販売動向を毎月公表へ(8月20日)
ビックカメラは主力店舗で外貨両替機の設置を始める。26日に有楽町店(東京・千代田)、27日にビックロ(東京・新宿)で運用を始める。
各店とも総合カウンターの場所に設置し、ドル、ユーロ、人民元など12通貨を当日のレートで円に替えることができる。円を海外の通貨には替えられない。
ビックカメラ、店舗に外貨両替機(8月21日)

関西はインバウンドの恩恵を最も受けている地域の一つだ。

大阪・心斎橋筋商店街は大丸心斎橋店と組み、9月下旬、南館に統一免税カウンターを設置する。高級ブランドを持つ百貨店と商店街が手を組むのは、岡山市、札幌市と並び先進的な取り組みだ。
アジアの富 ミナミへ・熱風インバウンド(8月13日)
大阪・ミナミの黒門市場では訪日客向けに、鮮魚店や青果店などがすしや刺し身、果物などをその場で食べられるようにしている。
「2010年ごろから始め、いまでは商店街そのものが『イートイン』」(商店街振興組合の吉田清純専務理事)。同組合の調査では観光客の75%が2時間以上滞在しており、多くのお金が落ちる。
黒門市場でマグロの解体に見入る外国人観光客ら(12日、大阪市中央区)
中国人好み 包装も客室も・熱風インバウンド(8月13日)
「フランス人を探せ」――。旅行業界は今、フランスや香港からの旅行客の動向に注目している。流行に敏感な彼らが旅行分野でもトレンドを先取りするからだ。
「フランス人の動向探れ」・熱風インバウンド(8月14日)

中国株安と人民元安の影響は?

絶好調のインバウンド消費に冷や水を浴びせかねないのが、中国株安と人民元切り下げだ。

中国人を中心とした訪日客(インバウンド)消費に減速リスクがちらつき始めた。中国景気の悪化や人民元安が、消費動向に水を差しかねないとの見方だ。
小売りや日用品メーカーなどには収益面で強力な追い風だっただけに、株式市場も警戒感を強めつつある。
資生堂は15年4~6月期の国内の増収額の6割を訪日客向けが占め、連結営業利益は前年同期比9.6倍の130億円に達した。コーセーも美白化粧品が人気で、4~6月期の訪日客向け売上高は5倍に膨らんだ。
訪日客は高額品を好んで買うため、採算改善につながりやすい。「西鉄城」ブランドで中国でも有名なシチズンホールディングスは、腕時計の国内単価が2割上昇した。
そんなインバウンド消費に冷や水を浴びせかねないのが、中国株安と人民元切り下げだ。観光庁によると4~6月期の訪日客消費のうち、中国は40%を占めた。中国人の訪日客は中間層以上が多く、株安による「逆資産効果」は無視できない。
元安が進めば中国人にとって日本製品の割安感が薄れる影響もある。野村証券の高橋泰洋氏は「人民元の10%切り下げは、訪日客消費を2%押し下げる」と試算する。
もっとも、高橋氏は「中国の1人当たりの所得が伸びれば、来日客数の増加は続く」とみる。元安による輸出回復や景気刺激策が経済を下支えすれば、インバウンド消費に大きな影響を与えない可能性はある。
インバウンドに減速懸念 消費関連銘柄の下げ目立つ(8月24日)
1~5月の訪日客の前年同期比の伸び率は首都圏の空港の31%に対し、関空は55%と高い
新関西国際空港会社社長の安藤圭一氏は、「現時点で人民元の下げ幅は限定的なので、大きなマイナス要因にはならないとみている。さらに元安が進めば中国人の訪日観光や『爆買い』の需要が弱まる恐れがあるので、動向を注意深く観察する必要がある」
「重要なのは、訪日客の増加を円安による一過性のもので終わらせないことだ。円高に戻っても日本に来続けてもらえるように観光拠点の価値を高め、通信事情をよくし、英語での対応を充実させる努力が必要だ」と語った。
訪日ブーム、地方への影響は 新関空社長・安藤圭一氏(8月24日)

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