安保法案、全体像を改めて整理

2015/5/15 18:00 (2015/7/16 18:00更新)
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野党議員が退席する中、安保法案を可決した衆院本会議(16日午後)

野党議員が退席する中、安保法案を可決した衆院本会議(16日午後)

集団的自衛権の行使容認を柱とする安全保障関連法案が衆院を通過した。法案の全体像を改めて整理するとともに、衆院の審議を振り返った。

■集団的自衛権とは

集団的自衛権は日本が直接攻撃されなくても、友好国が攻撃を受けた場合に武力を使って共同で反撃する権利。
政府は憲法9条の下では専守防衛に徹するため行使できないとしてきたが、昨年7月の閣議で解釈を変更し、行使を容認した。

集団的自衛権 憲法解釈変更で行使容認(5月15日)

■集団的自衛権行使の3要件とは

法案には集団的自衛権の行使について(1)日本の存立を脅かす明白な危険がある(存立危機事態)(2)他に適当な手段がない(3)必要最小限度の実力行使にとどめる――の3要件を明記した。
首相は「厳格な歯止めを定めた。極めて限定的に行使する」と強調した。

■関連法案は2本立て

関連法案は自衛隊法や武力攻撃事態法など10法の改正案を束ねた「平和安全法制整備法案」と、国際紛争に対処する他国軍の後方支援のため、自衛隊の海外派遣を随時可能にする新法案「国際平和支援法案」の2本立てだ。

他国軍の後方支援はこれまで、個別に特別措置法を制定してきた。特措法では活動範囲を「非戦闘地域」などとしていたが、国際平和支援法案では「現に戦闘行為を行っている現場以外」に広げた。
支援メニューに弾薬提供や戦闘作戦に参加する戦闘機への給油などを追加。自衛隊の関与が増す分、紛争に巻き込まれるリスクも高まる。

自衛隊の活動範囲を日本周辺に事実上制限してきた周辺事態法は重要影響事態法案に名前を変えて、地理的な制約を外す。中国と周辺国の対立が激化している南シナ海などが想定される。米国以外の軍への支援も可能となる。
他国の部隊が襲われた場合の「駆けつけ警護」も解禁する。自衛隊法改正案には平時に日本の防衛のために活動する米艦の防護を盛りこんだ。

■衆院審議は集団的自衛権に集中

安保法案は有事から平時まで幅広く網羅し、自衛隊が様々な事態に切れ目なく対応できるようにするものだ。ただ、衆院特別委の質疑が集中したのは、集団的自衛権の問題だった。
6月、安保法案に「違憲」の疑問が投げかけられた。衆院憲法審査会に出席した与党推薦者を含めた憲法学者が「憲法違反」と指摘した。それからの法案審議は違憲論争一色となる。

焦点になったのは政府が挙げた合憲の根拠だ。外国からの武力攻撃で日本人の権利が根底から覆されるなら必要最小限の自衛権行使を認めるとした1972年の政府見解の一部を使った。しかし、72年見解は結論部分で集団的自衛権の行使を禁じている。野党側はその矛盾を追及した。
政府は補強材料として59年の最高裁判決(砂川判決)も挙げた。「国の存立を全うするための自衛の措置は国家固有の権能」とした判決だ。安保法案の「存立危機事態」を想起させるが、野党側は集団的自衛権行使とは関係がないと反論し、平行線をたどった。
政府側は中国の海洋進出などを念頭に、安保環境が根本的に変わったと理解を求め、安倍晋三首相は「正当性には完全に確信を持っている」と主張した。法律論と、国民の安全を守る現実の政治との違いなども説明しているが、あまり浸透していない。

■「存立危機」にあいまいさ

実際にどのようなケースが集団的自衛権を使える「存立危機事態」にあたるのか、曖昧にしていることも、安保法案をわかりにくくしている。

政府は「政策的な中身を(他国に)さらす」(首相)と具体的な事例を挙げるのを避けた。審議で示したケースは二つだけ。

一つが朝鮮半島有事の際、弾道ミサイル防衛や邦人輸送にあたる米艦が攻撃されたときの防護。もう一つが日本の石油タンカーの多くが通過する中東・ホルムズ海峡での機雷掃海だ。ほかにどのような場合があるのかは、政府の裁量による。

■今国会での法案成立が確実に

野党は16日午後、衆院本会議の採決を前に退席し、採決に抗議する意思を示した。

民主党の岡田克也代表は(採決に先立つ)反対討論で「強行採決は戦後民主主義の大きな汚点になる。集団的自衛権の行使を認めるという憲法改正に匹敵するような憲法解釈の変更だ」と指摘した。
与党は法案が参院に送付された後、60日たっても法案を議決しない場合、否決したとみなして衆院の3分の2以上の賛成で再可決できる「60日ルール」の活用も視野に入れている。9月14日から同ルールを適用できる。
安保関連法案は9月27日までの今国会中の成立の公算が大きくなった。
安保法案、衆院通過 今国会での成立が確実に(7月16日)
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