「ノンアルコールビール」巡る"熱い"戦い

2015/3/11 18:00
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アルコール度数ゼロのビール風味飲料、いわゆる「ノンアルコールビール」の戦いが激しさを増している。一般消費者を巡る市場だけでなく、法廷でも争われることとなった"熱い"争いの行方は?

酒類売り場のノンアルコールコーナー(東京都練馬区のいなげや練馬上石神井南店)

酒類売り場のノンアルコールコーナー(東京都練馬区のいなげや練馬上石神井南店)

■ビール救う「おいしい」市場

ノンアルコールビールの歴史は意外と新しい。1パーセント未満のアルコール分がわずかに含まれる超低アルコール飲料は以前からあったが、アルコール分がまったく含まれない製品として登場したのは2009年4月とわずか6年前だ。道路交通法による罰則が強化されるなど飲酒運転に対する規制が厳しくなった時期という追い風もあり、発売されると市場で急速に受け入れられていった。

2009年発売のキリンビール「フリー」を先駆けに、人気の高いノンアルコールビール。アルコール度数ゼロの特徴がドライバーなどに受け入れられ、サントリーやアサヒなど大手が相次ぎ参入した。(中略)近年はこの2社が糖質・カロリーもゼロの商品を手掛け、消費者が手軽にビール風味を楽しめる清涼飲料として需要が広がっている。

急速に売り上げを伸ばすノンアルコールビールは、落ち込みが続くビール市場の救世主として各メーカーが次々と参入してきた。

ビール系飲料は低迷が続いている。ビール大手5社の課税済み出荷量は2014年まで10年連続で前年割れだ。

成熟飲料、トクホの波 伊藤園はウーロン茶発売(2月19日)

ビール系飲料の落ち込みが続くなか、収益性の高い「ノンアル」は有望市場。

ビール系飲料が10年連続で縮小する一方、ノンアルコールビールは15年の市場が1680万ケース(1ケースは大瓶20本換算)と2.4%増加する見込み。350ミリリットルの店頭想定価格は145円前後と第三のビールと同程度。「酒税がない分、収益面での貢献度も高く、新たな稼ぎ頭となっている」(大手メーカー)

市場規模としては、年間出荷量約4億ケースのビール類の20分の1に満たないノンアルコールビールだが、長く頭打ちが続くビール類に対し、市場の伸び代は大きい。しかも酒税がかからないので利幅も大きい。

シェア2%の屈辱、「ドライゼロ」で巻き返したアサヒ(2013年6月24日)

■技術進歩で味も進歩

(サントリーは)ビール風味の飲料であっても飲み応えが得られるように、企業ノウハウを注ぎ込んだ。具体的にはエキス分の総量、酸性やアルカリ性の度合いを示すpH、糖質を一定範囲に調整して実現し、特許を取得した

ノンアルコール飲料のヒットの理由は「0.00%に加え、味の進化」(サッポロビール・サッポロブランド戦略部の桑原敏輝マネージャー)。

ノンアルコール飲料、子供もOK? 会議中は?(2012年8月1日)

■いつ誰でも飲んでいい?

ノンアルコールビールは、アルコール成分が入っていない点でソフトドリンクと変わりない。そのため、これまでのビールではあり得なかった場所でも飲まれることが増えてきた。

ビジネスの場でもノンアルコール飲料は広がる。コクヨは今年6月から東京の品川オフィスの商談スペースで、お茶代わりに「オールフリー」を出し始めた。瓶からグラスに注いだ後は、自然と「乾杯」の声が上がる。それで打ち解けるせいか、コミュニケーションが深まるという。

ノンアルコールカクテルの種類が豊富な「オーロララウンジ」(東京都新宿区の京王プラザホテル)

ノンアルコールカクテルの種類が豊富な「オーロララウンジ」(東京都新宿区の京王プラザホテル)

だが、ビールの代替品として登場した経緯から、まだまだ「いつでもどこでも誰が飲んでもOK」というわけにはいかないようだ。

メーカーは「未成年のための商品ではない」と口をそろえ、小売店にも酒類売り場に置くよう要請している。

「子どもも摂取を繰り返すと、味だけでなく香り、発泡感、色すべてに慣れてくる。のどの渇きをいやす、雰囲気が楽しいなどで快感を覚えると、本物のアルコールに抵抗感がなくなる」と指摘する。

「飲んだ気になる」からありがたいと思う人たちがいる一方、だからオンタイムでは飲むべきではないと考える人たちもいる。酔う酔わないではなく、けじめの問題というわけだ。許容度は、その人の職業やライフスタイル、立場によって変わってくる。

「妊婦が飲む」はOKが54%。「授乳で禁酒中。周りが飲んでいるときに雰囲気だけでも合わせたいからノンアルコールビールは大助かり」(30代)。逆にNGが最も多かったのは「会議中に飲む」92%だった。「子どもが飲む」のNG派は90%。「運転の前に飲む」はNGが58%だった。

ノンアルコール飲料、子供もOK? 会議中は?(2012年8月1日)

ノンアルコールビールは女性にも人気(東京都豊島区のプロント東武池袋駅店)

ノンアルコールビールは女性にも人気(東京都豊島区のプロント東武池袋駅店)

■健康志向の製品も登場

市場での好評さを受けて「ノンアルコール」の流れはビール風飲料にとどまらず幅広く拡大し始めている。

酒類各社は「ジントニック」などのカクテル、酎ハイ、ワイン、日本酒、梅酒、甘酒など様々な酒の「ノンアルコール版」を相次ぎ売り出している。販路もスーパーなどの家庭用だけでなく、飲食店でも提供してもらえるように営業を強化。消費者の健康志向も手伝い、ノンアルコール商品を手軽に試飲できる場が目立ち始めている。

黒ビール風・ドライ… ノンアルコール飲料多彩に(2012年3月15日)

さらに最近では「健康にいい」といった機能性をウリにする製品まで登場するようになっている。

出荷量がピークの1994年には酒類市場の4分の3を占めたビール類だが、健康志向を強める消費者が他の飲料に流れるのは先進国共通の傾向となっている。

縮むビール市場 ワイン・ハイボールに流出(2012年10月12日)

消費者庁は18日、サッポロビールと花王がトクホに申請していたアルコール度数ゼロのビール風味飲料2品についてトクホ表示を許可した。他のビール大手も申請しており各社のトクホ商品が出そろう可能性が高まった。

サッポロは今春以降にノンアルコールビールのトクホ「サッポロプラス」(350ミリリットル)を発売する。食物繊維を豊富に含み糖の吸収を抑える。血糖値が気になる人向けにアピールする。花王の「へルシアモルトスタイル」(350ミリリットル)は茶カテキンの働きで脂肪を消費しやすくする。

競合他社も準備を進める。アサヒビールやサントリービールも消費者庁にノンアルコールビールのトクホ表示を申請ずみ。キリンビールも申請したもようだ。許可を受け順調に商品化されればビール4社の「トクホノンアルコールビール」が年内にも店頭に並ぶ。

成熟飲料、トクホの波 伊藤園はウーロン茶発売(2月19日)

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