中東混迷の原点 「パレスチナ問題」を振り返る

2015/1/20付
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 安倍晋三首相は1月16~21日の日程で中東諸国を歴訪している。19日のイスラエルに続き、20日にはパレスチナを訪問。「双方に真の友人として率直な助言を行っていきたい」と積極的平和主義への意欲を語った。だが、パレスチナ問題の根は深く、一朝一夕には解決できそうにない。最近の「イスラム国」に至るまで中東が混迷する火種となっているパレスチナ問題の歴史を振り返ってみよう。

中東地域歴訪のため羽田空港を出発する安倍首相と昭恵夫人
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中東地域歴訪のため羽田空港を出発する安倍首相と昭恵夫人

■2千年前から続く複雑な歴史

 パレスチナ問題の、そもそものいきさつは約2千年前にまでさかのぼる。現在のイスラエルがある地中海東岸は、ユダヤ人にとって旧約聖書で「神が与えた約束の地」と書かれている土地だった。それを根拠に、ヨーロッパを中心に迫害を受けていたユダヤ人が希望を抱いて移住した。

パレスチナにはいまから2千年ほど前、ユダヤ人の王国が存在していました。やがてローマ帝国によって王国が滅ぼされます。その結果、ユダヤ人たちはこの地を追い出され、世界各地に離散していくわけです。このうち、欧州に行ったユダヤ人たちはキリスト教社会で大変な差別を受けました。

宗教で読み解く中東問題(2013年7月15日)

ユダヤ教の教典でもある旧約聖書には、パレスチナは「神が与えた約束の地」と書かれていて、紀元前にはユダヤ人の国家が栄えていた。パレスチナでの国家再建はユダヤ人の悲願だった

パレスチナって国じゃないの?(2011年10月5日)

 第2次世界大戦後に、移住したユダヤ人によりイスラエルが建国されたことで紛争へと発展する。イスラエルに反対する周辺アラブ諸国との間で戦争が勃発した。

パレスチナ難民が生まれるきっかけになったイスラエルの建国は、1948年(昭和23年)5月14日でした。1947年(昭和22年)に国際連合でパレスチナをアラブ人とユダヤ人の国家に分ける決議が採択されたことがきっかけです。

2000年続く対立、パレスチナ問題の明日(2014年3月24日)

イスラエルが建国を宣言した翌日に、周辺のアラブ諸国で構成するアラブ連合軍がイスラエルに攻め込みます。エジプト、シリア、ヨルダン、レバノン、イラクの5カ国です。国連決議があったとしても「勝手に異教徒がやってきて、国をつくるなんてとんでもない」と考えたのです。これが第1次中東戦争へと発展していきます。

2000年続く対立、パレスチナ問題の明日(2014年3月24日)

 第1次~4次と4度にわたって繰り返された戦争でイスラエルは領土を大幅に拡大。多くのパレスチナ人が難民となった。

1947年(昭和22年)、国連総会がパレスチナをアラブ人国家とユダヤ人国家、そしてエルサレムを国際管理地区に分割する決議をしたことに始まります。イスラエル建国によってパレスチナに住んでいた多くのアラブの人々が難民となりました。あるいは、それを巡り周辺のアラブ諸国と対立し、大きなものだけでも4回の戦争が起きたのです。

宗教で読み解く中東問題(2013年7月15日)

第2次中東戦争では、スエズ運河をエジプトが国営化したことに怒った英国とフランスが何とかスエズ運河を取り戻したいと考え、イスラエルと英国、フランスが裏で手を握ってスエズを攻撃させました。

第3次中東戦争では、エジプト、あるいはシリアが攻撃しようとしていることに気がついたイスラエルが先制攻撃をしました。これによって一挙にエジプトのシナイ半島も、シリアのゴラン高原も占領しました。このときイスラエルはエルサレムの西側だけでなく東側も占領して、「エルサレムは分割することのできない永遠の首都である」と宣言しました。(中略)国連決議ではエルサレムを国際管理していることになっていますから、国際社会は認めていません。

第3次中東戦争後、イスラエルとエジプトの和平が進展しました。エジプトにはシナイ半島を返還してもらいたい思惑もあり、結局、イスラエルを国家として承認したのです。シナイ半島はエジプトに返還されました。これを当時、「土地と平和の交換」という言い方をしました。

宗教で読み解く中東問題(2013年7月15日)

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■暴力から対話へ

 度重なる暴力の連鎖を断ち切る機会は何回かあった。もっとも大きなチャンスだったのは、1993年に当時の米大統領ビル・クリントン氏の口利きによりイスラエルとパレスチナの間で「パレスチナ暫定自治宣言(オスロ合意)」が結ばれたときだ。

 このときは、イスラエルとパレスチナがはじめてお互いの存在を認め、イスラエル軍は第3次中東戦争で占領したガザとヨルダン川西岸の両地区から撤退してパレスチナ側が暫定自治を行うことや、境界線や最終地位を巡る交渉を進めることで合意した。

パレスチナ問題には1993年(平成5年)に転機が訪れます。イスラエルとパレスチナの間で歴史的な合意が結ばれたのです。パレスチナ暫定自治宣言(オスロ合意)です。ノルウェーがイスラエルとパレスチナの代表をひそかに首都オスロに招き、和平協定を結ばせようと交渉をしていたのです。

2000年続く対立、パレスチナ問題の明日(2014年3月24日)

イスラエルとパレスチナの間で交わした1993年の合意では、一定の地域でパレスチナの自治を認める約束をしたんだ。それで、パレスチナが独立するまでの仮の政府として自治政府ができた。

パレスチナって国じゃないの?(2011年10月5日)

日本記者クラブで会見するPLOのアラファト議長
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日本記者クラブで会見するPLOのアラファト議長

■和平に失敗、再び対立へ

 だが、オスロ合意を結んだ双方の当事者、イスラエルのラビン首相(当時)とPLO(パレスチナ解放機構)のアラファト議長(当時)の2人が相次いで死亡したことで、せっかくの和平プロセスも頓挫。キーパーソンがいなくなってしまったことで、さらに深い混迷に陥ってしまった。

カリスマ的存在だったアラファト議長がいなくなってしまった後、パレスチナ側は大きく分裂します。PLOには穏健派から過激派まで様々な派閥があったのですが、それまではアラファト議長が押さえ込み、一つに束ねてきたのです。

主流派のファタハは、パレスチナ国家をつくるうえではイスラエルを国家として承認し、うまくやっていかなくてはならないという穏健派。これに対してイスラエルは絶対に認められない、イスラエルをなくして我々の国家にすべきだと考えているのが過激派のハマスです。この結果、パレスチナ自治政府は二つに分断されています。

2000年続く対立、パレスチナ問題の明日(2014年3月24日)

ヨルダン川西岸ラマラで投石のために集まってきたパレスチナ人の10代の若者
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ヨルダン川西岸ラマラで投石のために集まってきたパレスチナ人の10代の若者

 その後、米国などの仲介で和平交渉を再開する動きは何度もあったが、いずれも具体的な成果を上げるにいたらなかった。パレスチナは成果の上がらないイスラエルとの直接交渉ではなく、国連などの国際組織での存在感を高めるという新しい戦略に変えてきている。

パレスチナ自治政府のアッバス議長は(2011年9月)23日、国連に加盟を申請した。イスラエルの反発は必至で、パレスチナ問題の解決がさらに遠のく恐れが強まってきた。

中東問題、解決遠のく パレスチナ国連加盟申請(2011年9月24日)

パレスチナが置かれた立場については、国際社会の同情が高まり、去年(2012年)11月29日には、国連総会で、パレスチナの国連での立場を「オブザーバー組織」から「オブザーバー国家」に格上げする決議案を賛成多数で採択しました。

日本に飛び火しかねない中東混乱の構図(2013年2月25日)

2014年暮れにヨルダン川西岸のパレスチナ自治区ベツレヘムに設置されたクリスマスツリーと治安部隊(中野智明氏撮影)=共同
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2014年暮れにヨルダン川西岸のパレスチナ自治区ベツレヘムに設置されたクリスマスツリーと治安部隊(中野智明氏撮影)=共同

 国連でイスラエルとパレスチナの両者に平和的な解決を促す動きは依然として続いている。だが、各国の思惑がからみあっており、必ずしもうまくいっているとはいえない。そんな状況の中で現地を直接訪問し、両方の要人と会う安倍首相の力量が試される。

国連安全保障理事会は30日、パレスチナとイスラエルの2国家共存につながる平和的解決策を1年以内にまとめるよう求める決議案を採決した。理事国15カ国中、採択に必要な9カ国の賛成が得られず、決議案は否決された。

国連安保理、パレスチナ問題巡る決議案否決(2014年12月31日)

安倍晋三首相は18日午後(日本時間同日深夜~19日未明)、エルサレム市内のホテルでイスラエルのネタニヤフ首相らとの少人数の会談に臨んだ。安倍氏は中東和平問題に関し、停滞するパレスチナとの和平交渉の再開を促した。

(安倍首相は)「対立がエスカレートするような言動は控えてほしい」と要請。イスラエル政府が占領地で進める入植活動は国際法に違反するとして停止を求めた。

首相「中東和平交渉再開を」 イスラエル首相と会談(19日)

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