/

走ってダイエット ストレッチで代謝アップ

ランニングインストラクター 斉藤太郎

日ごろからランニングをしているのに、なかなか体重が減らない。そんな悩みを抱えるランナーも多いのではないでしょうか。走ることはダイエットに有効な手段ですが、押さえるべきツボを意識する必要があります。痩せることを目的にこれからランニングを始めようという人にも役立つ、ダイエットに効果的なトレーニング法を紹介します。

硬直した筋肉、エネルギー消費の妨げに

じっとしていてもエネルギーを消費する基礎代謝は、筋肉量の多い人の方が高いです。代謝を上げて太りにくい体にするために、腹筋運動など筋力トレーニングに励むことも一つの手ではあります。

しかし、体幹の表層にある大きな筋肉が硬直したまま筋トレをしても、それよりも深層にある小さな筋肉の動きを妨げることになってしまいます。がんじがらめにされた深層の筋肉の動きが制約されて十分に伸縮できず、筋肉があっても眠った状態でエネルギー消費が極めて低い体です。

ランニングの時も凝り固まった体幹では筋肉が十分に活動できないために、せっかく走ってもエネルギーの消費は低くなってしまいます。

自分が持っている筋肉を活性化するためには、筋トレよりもストレッチで緩めてあげるのが先です。

ランニング前に体内の循環促進

肩甲骨と骨盤まわりをほぐすストレッチを紹介します。手で水をかくような動きです。椅子に座って脚を開いた姿勢をとり、両手の甲を合わせるような感じで、息を吐きながら両腕を前に伸ばします。背中を丸め、左右の肩甲骨が離れた状態で、骨盤は後傾します。

続いて息を吸いながら肘を後ろに引き背筋を反らせます。この時は左右の肩甲骨が寄った状態、骨盤は前傾します。前へ伸ばして1・2、後ろに引いて3・4のリズム。これを5回を目安に繰り返してみましょう。(写真1

私がクラブで指導している市民ランナーの中で目立つのが、肋骨が詰まったような姿勢で硬直している人。仕事中に猫背姿勢で座り続けているのが原因と思われます。

こうした状態をほぐすのにいいのが床に寝転がって体をひねるストレッチ。あおむけになって両手を広げ、両脚を伸ばした姿勢から、片方の脚を真上に上げた後、体幹をねじりながら脚を反対側に倒します。なるべく膝を床に付けるようにして、深く呼吸しながら脚を伸ばします。膝は軽く曲げて構いません。左右それぞれ30秒間、2セットを目安にしてください。(写真2

このストレッチの発展形として、倒した脚で自転車をこぐような感じで膝をゆっくり動かすのもいいでしょう。膝を上げる時に丁寧にゆっくり持ち上げることで、お尻の筋肉が緩みます。

私のランニング講習会では、こうしたストレッチを走る前に行うようにしています。そうすることで滞っていた体内の循環が促されるのか、受講生の皆さんの顔がポーッと赤らみます。「まだ走ってもいないのに、体の芯からポカポカしてきた」との感想を聞きます。この芯から燃えている状態をつくったうえでランニングを始めるのが理想的です。

ストレッチは風呂上がりや就寝前にも取り入れてみてください。お休み前のストレッチで、寝ている間のカロリー消費も変わってくるはずです。血液の循環が促されるので疲労回復にも効果があります。

短時間でも走る頻度高い方がいい

それでは、どのようなトレーニングの仕方がダイエットにいいのでしょうか。例えば1日に60分走ろうとするなら、一度にまとめて60分走るよりも、朝と夕方に30分ずつなど2回に分けて走る方がより効果的といえます。

走った後しばらくは脚が熱を持ってポカポカ火照った状態が続いていると思います。走っている間だけでなく、運動後にはそのまましばらくエネルギーを消費し続けている時間があるのです。この時間が1回よりも2回であるほうが、よりエネルギーを多く消費できるというわけです。

1日単位でもそうですが、1週間単位でも同じことが当てはまります。土日の週2回だけのランニングよりも、平日も含めて少しでも多く運動するようにしましょう。1回の時間は15~30分程度でも構いません。コンスタントにランニングやウオーキングでエネルギーを消費する習慣を身につけたいものです。

平日と休日の運動メニューの例が表Aです。平日は走る時間がどれだけ取れるか人それぞれでしょうから、1~2日くらいからでいいので試してみてください。

併せて、比較的時間に余裕があるときにお勧めしたい、ダイエットに効果的なトレーニングを3つ紹介します。(表B

大きなフォームで足腰に刺激

まず、走る距離を短く切って本数を多くしたインターバル走。1キロ走を10~15本、いつものジョギングよりやや速いペースで、間は1分間のウオーキングでつなぎます。距離が分からないならば時間を基準にして、5分間ランを10本のインターバル、間を1分間ウオークでつなげば、1時間のトレーニングになります。

スローペースのジョギングばかり続けている人は、動きがだんだん小さくなり、だらだらと引き締まらない練習に終始してしまいがち。フルマラソンからハーフマラソンのペースで伸び伸びと走りましょう。

次に、ジョギングの合間に坂道走りを入れるトレーニング。平地のジョギング15分に続けて坂道150メートルの上り下りを5本、そのまま15分ジョグに戻って締めくくります。上り坂は5~10キロのレースで走るくらいの快調なペース、下りはゆっくりジョギングで流します。

上り坂走では体の真下で地面を確実に捉え、大きなフォームで走ることを意識してください。足腰の筋肉に刺激が入り、体が引き締まりやすくなります。

このほか、2時間程度かけてゆっくり走るトレーニングも有効です。ランニングによる消費カロリーはおおよそ「移動距離(km)×体重(kg)」。体重60キロの人がフルマラソン42kmを走ると約2500kcal消費します。脚の動きを止めることなく移動し続けることで、じっくりとエネルギーを消費。途中で歩いても、トイレや給水の休憩で立ち止まるくらいなら大丈夫です。

ランニング前後のストレッチや着替え、コースへの移動などを含めると、なかなか時間が取れないという人も多いと思います。忙しい日常生活でも、通勤・通学で歩く区間を長めにする日を設けたり、建物内での移動で階段をできるだけ使ったりすることで、こまめに体を使うことを意識するのが大事です。

汗かくために厚着は間違い

ダイエットのために走っている人が「着込んで汗をたくさんかけば体重が減るだろう」と考えることがありますが、これは大きな誤解。走った後、体重計に乗って減量を確認、元に戻ってはいけないと思って十分な水分補給をしないことなど、もってのほかです。

厚着をして走ると、確かにたくさん汗をかくかもしれませんが、フォームが縮こまってしまい、伸び伸びと走ることができません。暑い夏はもちろん、どんな季節であっても、フォームを崩さない、軽やかで心地よく走れるウエアを選んでください。

体の約60%は水分です。夏場は1回のランニングで体重が1キロ以上減ることも珍しくありません。ただ、これは水分が出てしまっただけ。脂肪が減ったわけではありません。良いフォームで心地よく走ることが、上手にエネルギーを燃やし、脂肪の減少につながります。

厚着して我慢しながらのランニングは、体内のバランスを崩すだけでなくストレスがたまることにも。エネルギーを効率よく燃焼させるためのビタミンの吸収が、ストレスによって阻害されてしまいます。疲労する割にエネルギーの燃焼効率が悪く、走っても痩せない自分にイライラするなど、百害あって一利なしです。

汗をかくとナトリウムやカリウムなど体のバランスを保つのに欠かせないミネラルも流れ出てしまいます。失ったものは速やかに補給してあげましょう。スポーツドリンクを飲むのが手っ取り早いですが、このほかにも味噌汁、お茶と梅干しや味噌キュウリなどもいいと思います。

<クールダウン>ランニング人生、道は一つじゃない
 小説「かもめのジョナサン」を読んだのは、大学時代に競走部でトレーニングに没頭していた頃でした。他のカモメたちが餌を得るために飛んでいる中で、ただ一羽、飛ぶこと自体に夢中になって高度な飛行技術を磨いていったジョナサン。その「完成版」を手にして、あの頃の思い出がよみがえってきました。
 「普通に生きる多くのカモメのように、苦しみや痛みとは無縁に楽しく過ごす選択肢もあるのに、どうして自分たちはつらいトレーニングの道を選んでいるのだろう」。仲間たちと冗談交じりに語り合ったものです。
 その後の実業団コーチ時代、メダリストになるために会社から給料をもらって鍛錬に励むアスリートたちに接してきました。ただ、結果が全ての勝負の世界、頂点を極めるに至らないまま引退、以後はランニングとは関わらなくなってしまうという人がほとんどでした。
 ランニングブームの昨今は、引退後にオシャレに走る環境も整い、その気になればサークルで市民ランナーを指導するといった道もできてきました。記録に挑戦することだけが全てではなく、思い思いのスタイルで走る。いい時代になったと思います。

さいとう・たろう 1974年生まれ。国学院久我山高―早大。リクルートRCコーチ時代にシドニー五輪代表選手を指導。2002年からNPO法人ニッポンランナーズ(千葉県佐倉市)ヘッドコーチ。走り方、歩き方、ストレッチ法など体の動きのツボを押さえたうえでの指導に定評がある。300人を超える会員を指導するかたわら、国際サッカー連盟(FIFA)ランニングインストラクターとして、各国のレフェリーにも走り方を講習している。「骨盤、肩甲骨、姿勢」の3要素を重視しており、その頭の文字をとった「こけし走り」を提唱。著書に「こけし走り」(池田書店)、「42.195キロ トレーニング編」(フリースペース)など。

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン