キャンプ用品、災害でも活躍 テント使って安眠確保

キャンプで使う道具には、災害時にも使えるものが多い。とくに避難生活で役立つのがテントだ。避難所や車中泊以外に、テント生活という選択肢があることを知って、災害に備えておこう。
地震や洪水などの災害発生後、身の安全が確保できてからライフラインが復旧するまでのあいだに行われる「2次避難」。学校や公民館などの避難所に身を寄せる選択肢もあるが、他人との共同生活や、プライバシーが確保できないなどの理由で、ストレスを感じてしまうこともある。
車での寝泊まりも考えられるが、車中泊テクニックを知らないと、車内はただの居心地が悪い空間になってしまう。背もたれを倒しただけの仮眠ばかりでは、エコノミークラス症候群さえ引き起こしかねない。避難を快適にするつもりが、逆に病気になってしまうこともあるのだ。
考えてほしいのは「テント生活」という選択肢だ。プライバシーを確保できるので、横になりたいときや授乳したいときでも、周囲の目を気にしなくてすむ。自宅で介護をしている家族がいたり、ペットがいたりしても、一緒に生活できる。
薄い布1枚のテントより、クッション性のあるシートや窓ガラスがある車の方が快適だと思っている人は多い。しかし車は宿泊を前提に設計されていないので外気の影響を受けやすく、意外とグッスリ寝られない。エンジンをかけ、エアコンをつけて寝ればいいと考える人もいそうだが、エンジン音はうるさいし、排ガスで周囲にも迷惑をかける。テントはその点、宿泊のために作られた道具なので快適に眠れる。
ただし、テントだけがあれば快眠できるというわけではない。テント内で快適に寝るためには、マットと寝袋が必要になる。テントのフロア全面に敷く「テントマット」は、地面からの湿気の侵入を防ぎ、ひとりにひとつ必要な「パーソナルマット」は、地面の凹凸の影響を和らげ、地面からの冷気を遮断する。そしてその上に、布団代わりとなる「寝袋」を敷くことで快適に寝られる。とくに冬場は、寝袋がないと寒くて寝られないので、できれば冬用の寝袋を準備しておきたい。

このようにテントを活用した避難生活のメリットは大きいが、デメリットがあることも覚えておきたい。例えば食料や日用品の配給。自治体によって配給は、避難所で生活している人を優先するところも多い。テントに避難している場合、配給を受けられないケースもある。
そんなときに備えて、食料の備蓄もしておきたい。食料の備蓄は最低3日分、できれば1週間分の準備があるといいとされている。水はひとり1日1リットル、調理を含めると3リットルの水が必要だ。キャンプ用品とあわせて、インスタント食品やレトルト食品、缶詰などを家族分ストックしておくといいだろう。
備蓄している食料を調理するためには「バーナー」が必要となる。レトルトのカレーやごはんを湯煎できるくらいの「クッカー」と一緒に準備しておけば、温かい食事をとることができる。とくに冬場は温かい食事をとると、気持ちを穏やかにしてくれるものだ。ただし、テント内は火気厳禁。一酸化炭素中毒や火災の原因になるので、決して使わないようにしたい。
テント生活には、もう一つデメリットがある。それは環境に大きく左右されるということ。夏はテント内が高温になり、中に居続けることが難しい。また雨が降り、地面に水がたまってしまうと浸水の恐れもある。
それを解消するためには、テントを張る場所を選ぶこと。夏場はできるだけ木陰を選んでテントを立てる。樹木の蒸散作用によって周辺の気温が下がるので、建物の陰などに比べると格段に涼しい。また雨による浸水を避けるには、水たまりができそうな場所にテントを張るのを避ければ、雨が降ったぐらいで浸水することはない。
テントのほかに備えておきたいキャンプ用品には、水の配給を受けるときに便利な「ウオータータンク」、電源確保用の「ポータブル電源」、両手をふさぐことなく照らせる「ヘッドランプ」などがある。防災グッズとして一度にそろえるのは大変なので、アウトドアレジャーを楽しみつつ、少しずつそろえよう。
◇ ◇ ◇
楽しみながら道具に慣れる

テントで寝たことがない人は「地面に寝るなんて絶対にイヤ!」という人もいる。けれど一度キャンプをすれば、車よりテントの方が快適なこともわかるし、野外で寝泊まりすることが、さほど不快ではないということもわかるはず。
だからキャンプ用品を防災グッズとして準備しておくだけでなく、日ごろからキャンプを楽しんで、グッズに慣れておくことをおすすめしたい。そうすれば、いざというときに迷わずグッズを使えるし、野外での生活に慣れておくこともできる。
(アウトドアライター 牛島 義之)
[NIKKEIプラス1 2021年7月31日付]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。