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誰も住まぬ実家 お荷物にしない管理・節税術

 持ち家で暮らしていた親が老人ホームに入ったり、亡くなったりすると、だれも住まない空き家をどうするかという問題が出てくる。売却や賃貸が選択肢になるが、税金が増えたり、逆に節税になったりする場合がある。資産価値を維持するため空き家の管理も欠かせない。空き家対策の基本と注意点をまとめた。

「お隣さんから電話があってビックリしました。月1回くらいは通っていたのですが……」。東京都世田谷区の主婦、山口和子さん(仮名、62)は昨夏の騒動を振り返る。一人暮らしだった父親が老人ホームに入り、空き家になった横浜市の実家にスズメバチが巣をつくっていたという。専門業者に駆除してもらったが、これを機に管理をプロに任せることにした。

山口さんが契約したのは大東建託グループの大東建物管理(東京・港)。賃貸住宅の管理ノウハウがある同社スタッフが月1回、空き家に立ち入り、窓を開けて換気したり、水を流したりする。庭木の確認や郵便物の整理なども含めて料金は月1万800円。山口さんは「きちんと写真付きの報告書が送られてくるから安心」と満足そうだ。

管理に参入相次ぐ

空き家管理サービスの多くはこれまで地元の不動産会社が手がけてきたが、ここにきて綜合警備保障(ALSOK)、東急リバブル(東京・渋谷)といった企業が相次いで参入。センサーで侵入者を見つけて警備員が駆けつけるALSOKのサービスは契約が1000件を超えた。「老人ホームへの入所や相続など高齢者に関係する空き家が約6割を占める」という。

空き家の家財を片付けるサービスもある。大阪府河内長野市の主婦、井上幸子さん(同、73)は、老人ホームに入っていた母親をみとり、遺品整理を専門会社、リリーフ(兵庫県西宮市)に任せた。料金は約15万円。相続した空き家に「趣味だった書道の掛け軸や着物などがいっぱい。情が入って自分では捨てられなかった」という。引っ越し大手のヤマトホームコンビニエンス(東京・中央)も同様のサービスを手がける。

相続前に親が空き家を売りたいなら、親が住まなくなってから3年目の年末が一つの節目になる。マイホームを売った譲渡所得は3000万円まで税金がかからないが、このタイミングを過ぎると税務署に居住用財産として扱ってもらえず、課税される。税率は所有期間が5年超なら20.315%だから、譲渡所得が1000万円であれば約200万円の税金がかかる。

いくらで買ったのか分からない先祖代々の家などは売却価格の5%を取得費とみなすため、譲渡所得が大きくなりがちだ。相続に詳しい三菱UFJ信託銀行の灰谷健司執行役員は「空き家の土地建物の取得費がいくらなのか、早めに確認しておいたほうがいい」と助言する。家を取り壊して土地だけを売る場合も、取り壊しから1年以内に契約を結べば譲渡所得3000万円まで税金がかからない。

「貸家にすれば相続税の節税になるし、いずれは自分が住んでもいい」。東京都の会社員、田中義一さん(同、55)は、同居する母親名義の実家を貸家にできないか検討することにした。空き家になっている実家は名古屋市の地下鉄駅近くにあり、家族向け賃貸住宅のニーズは強い。あらかじめ決めた期間で終了する「定期借家契約」にしておけば、いずれ田中さんがUターンできる。

空き家を賃貸住宅にすれば相続税を計算する際の評価額が下がる。ただし入居実績がある、入居を募集しているなど貸家として実態を伴うことが必要。田中さんの実家の評価額は空き家では3646万円だが、貸家は1620万円になる。土地の評価額を15%、建物を30%それぞれ下げられるうえ、面積200平方メートルまでの土地は一定の条件を満たすと、さらに50%減額できる特例があるからだ。

「いずれ住む」は…

田中さんはいずれ母親の財産を弟と2人で相続する。貸家にしておけば、2015年に相続税の基礎控除が縮小されても相続税は掛からない。ただし貸家は屋根や外壁、水回り設備、内装のリフォームなど初期投資をしなければならず、その後の修繕も家主の負担。固定資産税もかかるため、必ずしも期待した収益が上がるとは限らない。

税理士法人レガシィ(東京・千代田)の天野隆・代表社員税理士は「自分はいずれ実家に戻って暮らすつもりでも配偶者が付いてくるとは限らず、実際には戻れない人が多い」と指摘する。賃貸用などを除く個人住宅の空き家は2008年で約270万戸と10年前に比べ5割近く増えた。空き家になりそうな親の家があるなら、売るのか、貸すのか、家族のだれかが住むのか。機会をみつけて話し合ってはどうだろう。(表悟志)

修繕費かけず貸せる 借り主負担の「DIY型」指針


 一戸建ての空き家を貸す場合、修繕に数百万円かかることがある。所有者は「金をかけて貸すより、空き家にしておいた方がいい」と考えがちで、空き家増加の一因になっている。このため国土交通省は3月、「借り主負担DIY型」の賃貸借契約のガイドラインを公表した。
 これは借り主が自己負担で修繕したり、設備を入れ替えたりすれば安い家賃で借りることができるという内容。退去時の原状回復の義務がなく、所有者も初期投資なしで賃貸できるのがメリットだ。潜在ニーズは大きいとみられ、今後はトラブル防止の仕組みなど実務ノウハウの蓄積が期待されている。

[日本経済新聞朝刊2014年7月2日付]

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