実は足りているプロテイン 上手な活用法や摂取量は?

最近「プロテイン入り」のお菓子やゼリー飲料、ヨーグルトなどを多く見かける。プロテイン粉末の売り上げも伸びているという。人気の背景や効率的な取り方を探ってみた。
プロテインは「たんぱく質」を意味する言葉だが、国内では牛乳などが原料の粉末商品を指すことが多い。そもそも、たんぱく質は1日どれくらい取ればいいのだろうか。
スポーツ選手の栄養管理などを手がける管理栄養士の橋本玲子さんによると、体重1キログラムあたり1日1グラムのたんぱく質を取るのが基本。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」によると、平均の推奨量は成人女性が1日50グラム、成人男性が60~65グラムだ。

実は現在の日本では、たんぱく質の摂取量自体はほぼ足りている。国民健康・栄養調査によると、30代の女性は平均して1日60グラム以上のたんぱく質を取っており「それほど不足を心配しなくていい栄養素」(橋本さん)だ。
ただ、たんぱく質はこまめに取るほうが血中アミノ酸濃度を高く保て、筋肉や健康の維持に役立つ。「食事が基本だが、1食抜かしたり、(たんぱく質含有量が少ない)おにぎりだけで済ましたりする人、運動習慣のある人などは、プロテイン粉末や食品をうまく活用するのも手」という。
プロテインの粉末はどう選べばいいのか。
大きく原材料の違いにより「ホエイ」「カゼイン」「ソイ」に分けられる。ホエイとカゼインは牛乳由来で動物性、ソイは大豆由来で植物性のたんぱく質だ。
乳清から作るホエイプロテインは吸収が早く、ソイやカゼインは吸収が遅い。日本プロテイン協会の藤戸正彦さんは「筋力を向上させたい人はホエイがお薦め。体内で作れないBCAA(分岐鎖アミノ酸のバリン、ロイシン、イソロイシン)が多く含まれ、運動後にすばやくホエイを摂取するのがコツ」と話す。
粉末を液体に溶かす環境が整っていない場合はどうするか。最近は粉末以外の商品も多く出ている。
日本経済新聞の本社近くのコンビニには、プロテインバーやパック入り飲料、ゼリー状の飲料のほか、たんぱく質が約10グラム入ったヨーグルト「オイコス」などが並ぶ。ゆで卵やサラダチキン、サラダフィッシュなど高たんぱく質のお総菜も棚の広い面積を占める。日清食品は4月、たんぱく質が従来の1・5倍含まれたカップヌードルを発売した。
これまでプロテインを300種類以上試した「プロテインひろこ」こと森口ひろ子さんは「食事が十分に取れず、たんぱく質だけを効率的に補いたいときは粉末、おやつ代わりにはバーやヨーグルトがお薦め」と助言する。「同じ味は飽きる、冬場は冷水で割るとおなかが冷える、などの理由で、続けられなくなるケースもある。無理なく摂取できる方法や商品を見つけられるとよい」(森口さん)
取り過ぎは問題なのだろうか。藤戸さんによると「一度に吸収できるたんぱく質は約20グラム。そのためにも1日の必要量を何回かに分けて取ることがポイント」。運動する人は体重1キログラムあたり1日2グラムほど取ってもいいが、20グラムを大幅に上回る量を取っても吸収できず、内臓に負担がかかることもある。
藤戸さんと森口さんの助言を参考に、気になったプロテイン粉末を購入してみた。
まず試したのは「IZMOO2 ホエイプロテイン ストロベリー風味」。粉末プロテインはチョコやバニラ味が多いなか、ストロベリー味は珍しいという。パッケージの説明書きにあるように牛乳で割りシェイクすると、泡が立ち、味もスムージーのよう。知らずに飲んだらプロテインと分からないおいしさだ。
次に「INNOCECT クリケットプロテイン」を試した。これは最近話題のコオロギとエンドウ豆のたんぱく質を使ったもの。コオロギはたんぱく質含有率が高く、持続可能な食材として注目されている。粉末を冷水で割って飲む。ついコオロギの味を探してしまう自分がいたが、特に飲みにくさや味への違和感は感じなかった。
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プロテイン粉末市場 2020年は4割拡大

プロテイン粉末市場は2015年から拡大している。市場調査会社インテージによると20年は前年比4割増の152億円。「新型コロナウイルスの感染拡大で運動不足となり、健康や体形を維持するために需要が高まったのではないか」(同社の木地利光さん)。今年も販売は好調だという。
現在のブームは女性消費者が目立つのも特徴だ。この5年間でプロテインを買った女性は3倍に増え、特に10~30代で伸びが顕著だ。プロテイン協会の藤戸さんは「数年前まではボディービルダーやアスリートらが中心だった。今は美容・健康のために女性が注目しており、特にソイプロテインに注目が集まっている」と話す。
(砂山絵理子)
[NIKKEIプラス1 2021年7月3日付]
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