/

C組日本の敵を知る 対戦3カ国の戦力分析

ワールドカップ(W杯)ブラジル大会で1次リーグC組の日本はコートジボワール(日本時間15日)、ギリシャ(同20日)、コロンビア(同25日)の順に対戦する。決勝トーナメントに進むのは4チームのうち2チーム。勝利のカギはどこにあるか、対戦国を分析する。

コートジボワール

もう孤高のエースではないのかも。速くて強くて何でもできるのに、どこか歯車が合わない。部族・宗教が違うし、メンバーの大半が出たサッカーアカデミーに縁がない……。チームメートとの様々な「不仲」の理由が取り沙汰されてきたコートジボワールのFWドログバ。そんな過去2大会の姿は、今は薄れた。

36歳になり、かつてのスピードやキレは失われた。その代わり、味方を頼り、頼られるようになった。本来のフィニッシャーだけでなく、ボールをいったん預かり、味方に配り直す役目が増えている。特に試合中、常に見ているのが左のジェルビーニョ。スピード豊かな9歳下のドリブラーとの距離が近くても遠くても、ドログバはボールを持つと真っ先にパスを送る。

前線に強力ホットライン

4日の米国での強化試合、エルサルバドル戦は2-1で勝利。2ゴールはこの2人で奪った。ドログバのスルーパスを受けたジェルビーニョがGKをかわして1点。今度は「お返し」のクロスから、ドログバが全盛期を思わせるジャンピングボレーで決めた。

最高の"後ろ盾"を得たジェルビーニョは、左外という持ち場から離れ、中央、右と自在に浮遊する。カルー、グラデルという他の2列目も、2人に気持ちよく動いてもらうことを重視している。「チームとして一つになれている。自信を持ってブラジルに行ける」とジェルビーニョ。かつてのチームには当てはまらなかった言葉だろう。

日本としてはこのホットラインをどう分断するか。2人への監視の目を強めることはもちろんだが、ボールの供給源を断ちたい。後方の選手で展開力があるのは、ボランチのティオテと右SBのオーリエくらい。重点的にプレッシャーを掛ければ攻撃は沈滞するはず。

連係深まる攻撃と逆に、「守備はこれからも改善しないといけない」とラムシ監督。CB2人のうち、K・トゥーレはマラリアを5月に発症。まだ本調子ではない。

空中戦に強いバンバも、監督にとっては頭痛の種。縦パスを受けようと下がる相手FWを猛然と追うのはいいが、意外にソフトな当たりで簡単にポストプレーを許す。逆に自分が飛び出したため凸凹になったDFラインの裏を狙われ、あわやという場面が多い。ティオテとセレイの両ボランチは本当にハードに当たるが、ときには勢いあまって前線まで飛び出し、後ろががら空きになる。

DFとボランチの間、CBの裏にすっぽりとできるスペース。日本の香川、岡崎らがうまく出入りすれば好機は十分つくれる。

ただ、守備に不安があるのは日本も同じ。打ち合いの予感が漂う。あとはどちらが決めるところを決められるか……。ゴールの近くではいまだ決定力抜群のドログバは、その意味でも恐ろしい。

不確定要素が一つ。中央のMFとしては世界屈指のY・トゥーレの去就。故障から1週間前にチームに合流したが、実戦はまだ。監督は「プレーの準備ができるまでは復帰しない」と語るにとどめる。この剛柔兼ね備えた巨星がトップ下に戻れば、守備は改善する。一方、かつて不仲がささやかれたドログバらとの連係はいまひとつ。「両雄」をどう並び立てるのかという新たな難問が出てくる。

コロンビア

もし世界的なストライカーであるFWファルカオ(モナコ)がW杯に参加していたら、コロンビアは優勝候補の一角に名を連ねていた。だが、1月に後方からの悪質なタックルを受け、左膝を負傷。南米予選の13試合でチーム最多の9得点を記録した主役が祭典の舞台に立てなくなった。その穴の大きさは計り知れない。

しかし、今回のコロンビアが多彩なアタッカーをそろえているのも確か。FWには予選でファルカオに次ぐ6点を取ったグティエレス、セビリアの欧州リーグ優勝に貢献したバッカ、昨季から2年連続でポルトガルリーグの得点王に輝いたマルティネスがいる。

基本布陣は4-4-2。モナコでファルカオとコンビを組む左MFロドリゲスが攻めを構築するキーマン。右MFクアドラードには突破力、パンチ力がある。ボランチにアギラル、サンチェスとメンバーはほぼ固定され、インテル・ミラノのMFグアリンは途中出場でペースを変える役割に回りそうだ。

速攻主体、光る個の突破力

コロンビアといえば1990年代に3大会連続でW杯に出場し、MFバルデラマ、リンコン、FWアスプリージャ、GKイギータら奇抜な選手たちがサッカーファンを魅了した。その最盛期だった94年米国大会で期待を裏切り、1次リーグ敗退。オウンゴールを犯したDFエスコバルが大会後、射殺されるという悲劇がサッカー史に残っている。

当時のコロンビアは細かな技術をもとにしたショートパスの交換で相手をもてあそぶようだったが、その分、攻めが遅くなっていたのも事実。今回のチームは対照的に速攻を主体に戦う。

それはアルゼンチン人のペケルマン監督が指揮をとっていることとも関係しているだろう。理論家・戦術家で若手育成に定評があり、U-20(20歳以下)アルゼンチン代表監督としてU-20W杯で3度優勝。2006年W杯ではアルゼンチン代表を率いて8強入りした。

コロンビアが今大会の予選序盤につまずいた後の12年1月に監督に就任。規律を持ち込み、ブラジルがいないとはいえ、アルゼンチンに次ぐ2位で突破した。

4大会ぶりにW杯出場を決めた昨年10月のチリ戦は前半0-3の劣勢から追いついている。PKを2つ得る幸運があったとはいえ、試合を投げ出さずに盛り返したあたりに、90年代のチームに欠けていた規律の高さが表れている。

コロンビアにしてはボール保持にこだわらず、ロングパスを多用するあたりは現実的。個の力を打ち出した逆襲速攻は鮮やかで、加速されてしまうと相手はファウルなしに止めにくくなる。

弱みを探すとするならCBにある。38歳のジェペスに頼り、サパタも安定感に欠ける。機動力のある相手には苦しむ。もっとも、守備の問題はその前の段階にあるのかもしれない。攻めが個人による仕掛け中心のため、どうしてもボールを失ったときのバランスが悪く、組織的なプレスが掛かりにくい。攻撃から守備への切り替えの遅さ、つたなさが弱点になる。

ボリビア戦で競り合うギリシャのサマラス(7番)=USA TODAY
ギリシャ

夏休みが終わったら、坊ちゃん刈りだった同級生が急に茶髪になっていたような驚き。6日に米国で本番前の最後の試合、ボリビア戦に臨んだギリシャ代表。少々意外ないでたちでの登場だった。

2004年の欧州選手権優勝という栄光とともに始まった堅守速攻の基本スタイルは10年間変わっていない。長身DFで自陣深くに人垣を構築。前の選手も相手のパスコースを切り、激しく体を寄せる。攻撃はカウンター中心で徹底してリスクを避ける。今大会の欧州予選でも12試合中8試合で得点を許さなかった。

5月31日にアウェーで行ったポルトガル戦は特に顕著だった。終盤になるまで自陣にこもりっぱなし。ボールを奪っても前に走る人数はわずかで、半ば攻撃を放棄したような試合運び。ピンチもチャンスも少ない0-0のドローだった。

それが2-1で勝った6日のボリビア戦で一変した。4-3-3の布陣は同じだが、とにかく重心が前掛かり。相手のペナルティーエリアに4人が飛び込み、両SBが高い位置を取る。守備も低く構えず、前線からプレスを掛ける。

おかげで、左ウイングのサマラスを軸にした攻撃が機能した。身長192センチの大型FWが下がってボールを引き出し、体を張ってキープ。空いたスペースにMFコネやSBホレバスが上がり、クロスを送る。シンプルで効率のいい連係だった。キーマンとなったコネは控え組から先発に抜てきされた格好。動いてさばいて攻めを構築し、クロスに走り込んで先制点まで挙げる活躍だった。

堅守速攻から脱皮ねらう

直近3試合でノーゴールだったのに、一挙2得点での快勝。なぜチームが急に変わったのか。「いつもはチャンスをつくれるが、決められなかった。今日はそれを決められただけ」とサントス監督。監督業をいったん廃業、技師を経てカムバックした苦労人は容易に心の内を明かさない。

一因は苦しい台所事情だろう。ドイツ1部リーグでも有数のハードマーカー、CBパパスタソプロスは脚の故障でいまだベンチにも入れない。大黒柱を欠いた守備陣は、敏しょう性の欠如という弱点があらわになる。最終ラインが必要以上に下がる傾向もあり、ミドルシュートをよく打たれる。ボリビア戦の1失点はまさにこの形。

予選でチーム最多得点を挙げたFWミトログルも、クラブで試合から遠ざかっており不調。代役候補のゲカスも34歳という年齢からか、キレがない。攻守の核が本調子でない中、監督はスタイルの幅を広げる必要性を感じたのだろう。パスをさばけるベテランMFのカラグニスに、小柄なドリブラーのフェトファツィディス。攻撃に変化をつけられる控えの力を再確認できたことにも、手応えを感じているはず。

ただ、10年間の積み重ねがあるチーム。4年前の日本代表のように、W杯直前になって180度違う形につくり直すことはないだろう。ボリビア戦ではDFラインの裏をつかれ、カウンターでピンチを招く「副作用」も。得点力は高くないだけに、まず失点を避ける試合運びが基本になる。

「W杯に向けて良い状態になってきた」とサントス監督。2種類の戦い方をどう使い分けるかという課題はあるが、「リードされたらお手上げ」という反発力に欠けたチームではなくなっている。

(吉田誠一、谷口誠)

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン