2019年9月19日(木)

米欧の「制裁」を笑ったプーチン大統領
論説委員 太田泰彦

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2014/6/1 7:00
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その理由としてバイレル事務局長が挙げたのは、ウクライナ経由でロシアからEU域内の産業に供給される天然ガスの問題だけではなかった。ロシアがガスの元栓を閉めれば、EUが困るのは事実だが、現実にはEUとロシアの経済はそれ以上に深い関係にある。

■経済は相互依存

ドイツやオーストリアはロシアへの巨大な直接投資を抱える。ドイツのダイムラーやフランスのプジョー・シトロエン、ルノーを筆頭に、EU主要国の自動車大手や機械メーカーはロシア国内に生産拠点を築いている。BPやロイヤル・ダッチ・シェルなど英国、オランダに拠点を置く国際資源メジャーも、ロシアの国営資源企業と共同でロシア国内のエネルギー権益を握っている。

多くのウクライナ国民が現状に心を痛めている

多くのウクライナ国民が現状に心を痛めている

労働市場の改革で功績を上げたドイツのゲアハルト・シュレーダー前首相は、2006年にロシアの国営天然ガス会社「ガスプロム」の子会社の役員に就任。ガスプロムのパイプライン事業に自ら関わり、文字通り独・ロシア間のビジネスのパイプ役を果たしている。EU経済界とロシアは、既にお互いを必要とする、切っても切れない依存関係にあるのだ。

EUの経団連であるビジネス・ヨーロッパの立場は微妙だ。対ロシア制裁は基本的に支持しない。けれども「EU理事会が政治決断で制裁を決めた場合は、その決定を受け入れる」という。産業界の損得勘定によってEUの政治的な結束を損ねてはならないという、ギリギリの判断だったのだろう。支持はしないけれど、反対もしない。玉虫色ともいえる、なんとも苦しい公式見解である。

煮え切らない印象のEUの対ロ制裁だが、その舞台裏にはこんな現実の経済の姿がある。

さらに北大西洋条約機構(NATO)の要である米国の姿勢も、決して強気とはいえない。クリミア問題に関してオバマ大統領は、早々に「武力介入しない」と公言してしまった。4月にハーグで開いた核安全保障サミットで「NATOの同盟国を守るためには軍事力の行使も辞さないが、ウクライナのクリミアはその適用対象ではない」と発言した。

たとえ実際に軍事介入をする意思がないとしても、米国の大統領がそれをわざわざ対外的に口にする必要はないだろう。外交の経験不足なのか、米国内の評判ばかりを意識する癖なのか。いずれにしても、プーチン大統領は「オバマ政権、恐れるに足らず」と、ニヤリと笑ったに違いない。

 「私が見た『未来世紀ジパング』」はテレビ東京系列で毎週月曜夜10時から放送する「日経スペシャル 未来世紀ジパング~沸騰現場の経済学~」(http://www.tv-tokyo.co.jp/zipangu/)と連動し、日本のこれからを左右する世界の動きを番組コメンテーターの目で伝えます。随時掲載します。筆者が登場する「ニュースが伝えない『ウクライナ騒動』~意外な日本ブーム~」は6月2日放送の予定です。
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