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あてにならぬ坪単価 戸建て購入で泣かない心得

予算オーバー、付帯工事や商談に注意

 一戸建て住宅を建てる人がまず気になるのが、どのくらいの予算でどんな家が建つのかだろう。ところが住宅展示場に出掛けると、肝心の価格がよく分からないまま熱心な営業を受けることがある。価格表示などの業界ルールがない注文住宅の商談は容易ではない。建築費が予想外に膨らんで家計に影響が出ないよう予算づくりの基礎を知っておきたい。

「大手住宅メーカーだから安心だし、妻が気に入ったから契約したんですが……」。東京都内で自宅を新築中の会社員、田中博さん(仮名、64)にとって「800万円の予算オーバー」は唯一の誤算だった。親の代からの家で暮らしてきた田中さん夫婦にとって家づくりは初めての経験。当初考えていた建て替え予算は2000万円だったが、なぜ4割も増えたのだろうか。

価格明示されず

田中さん夫婦が予算づくりの目安にしたのは、家の床面積1坪(3.3平方メートル)当たりの単価だった。妻の恵子さん(同、63)が建築関係の仕事をしている兄から「坪単価は80万円くらい」と聞いており、これにおよその床面積25坪を掛けて2000万円としたが「想定していなかった地盤改良や外構工事に結構お金がかかった」(恵子さん)と振り返る。

一戸建て住宅は本体工事だけでなく、本体に電気やガス、上下水道をつないだり、門扉や塀など外構を設置したりする付帯工事が欠かせない。不動産登記や火災保険料といった諸費用もかかる。リクルート住まいカンパニー(東京・千代田)の中谷明日香氏によると「本体工事が7割、付帯工事が2割、諸費用が1割がおおまかな目安」だが、地盤改良などで付帯工事費が膨らむことが少なくない。

そもそも坪単価という用語に明確な定義がない。マンション業界には景品表示法に基づく「公正競争規約」という自主ルールがあるが、注文住宅ではこうした規約がないからだ。「本体工事の一部を付帯工事に回して坪単価を安く見せる」(業界関係者)といった例もあるとされる。

情報収集のため住宅展示場のモデルハウスを見学しても、価格に関する情報はほとんど明示されていない。住宅メーカーの業界団体、住宅生産振興財団(東京・港)の2013年の調査では来場者の60%が「価格が表示されているモデルハウス」を求めているが、住宅メーカー各社は「注文住宅は二つと同じものがないから」と表示に消極的だ。

確かに注文住宅は建物の設計、仕様だけでなく土地の形や地盤の固さ、周辺道路の状況などによって総工費が変わるが、価格を表示しない理由はそれだけではなさそうだ。

仮に全く同じ本体工事であっても「営業マンは顧客の懐具合を探りながら見積価格を出す」と住宅の品質検査やコンサルティングなどを手掛ける、住まいと土地の総合相談センター(東京・品川)の市村博代表は話す。大手住宅メーカーの場合、40%程度の粗利益率を想定して見積価格を示すが、商談で20~25%程度まで値引きに応じるとの指摘が多い。

モデルハウスでは営業マンから連絡先や家づくりの検討状況について記入を求められるが、安易に応じないほうがいい。アンケートを取った営業マンが商談の担当になる会社が多いからだ。住宅営業の経験があり不動産仲介を手掛ける、しあわせな家(横浜市)の山田篤代表取締役は「同じ住宅メーカーでも営業マンは玉石混交。説明を聞いて、気に入らなければ日を改めたほうがいい」と助言する。

本音の八掛けを

相性のよさそうな営業マンが見つかって商談に入っても「本当の予算の八掛けくらいを伝えたほうがいい」(市村氏)。ほとんどのモデルハウスは見栄えがよく豪華なオプション仕様で建てられる。モデルハウスのイメージが強いと、見積もりのベースとなる標準仕様では物足りなく感じ、予算が膨らみやすくなる。

良品計画の住宅子会社、MUJI HOUSE(東京・豊島)が本体工事の価格と仕様をすべて表示する規格住宅「無印良品の家」を売り出すなど、一戸建て住宅でも価格の分かりやすさを重視する住宅メーカーが出てきた。ただし自由設計をうたう注文住宅を建てるなら、価格をめぐって営業マンとの多少の駆け引きは避けて通れない。

初めての家づくりで専門知識がない人には荷が重いが、市村氏は「数千万円の買い物なのだから、格好を付けて『いい人』になってはいけない。見積書などで分からない項目はすべて説明を求めて『うるさい人』と思われるくらいがちょうどいい」と心構えを説く。(表悟志)

建築士に事前相談、理想に近い家


 「豪華なオプションだらけで間取りも現実的でなかった」。住宅展示場のモデルハウスを見学した埼玉県の団体職員、三沢大輔さん(仮名、38)はこう話す。そこで住宅雑誌で見つけた一般財団法人、住まいづくりナビセンター(東京・中央)を訪問。同センターは現役で住宅設計に関わる1級建築士が中立的な立場で相談に応じる。
 三沢さんは3回の面談で家づくりの計画書をまとめる5000円のプログラムを利用した。「資金計画から具体的な設計アイデアまで幅広い助言をもらえた」と振り返る。計画書を元に地元の住宅メーカーと契約し、理想に近い家を手に入れることができたという。

[日本経済新聞朝刊2014年5月21日付]

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