2017年11月18日(土)

宙に浮く日本初の位置天文衛星 国際情勢が翻弄

2014/5/17 7:00
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 完成しながら飛び立てない日本の人工衛星がある。星々の正確な位置を観測して宇宙のカタログをつくろうと、国立天文台などが進めている計画の第1号衛星「ナノジャスミン」。ウクライナのロケットで、ブラジルから打ち上げようとしたが、ブラジルの発射場建設が遅れ、衛星は現在、東京大学で「休眠中」。さらにウクライナ情勢の緊迫が追い打ちをかけている。

ウクライナ情勢に揺れる人工衛星、完成3年飛び立てず。日本初の位置天文観測衛星「ナノジャスミン」、2015年打ち上げ目指す

ウクライナ情勢に揺れる人工衛星、完成3年飛び立てず。日本初の位置天文観測衛星「ナノジャスミン」、2015年打ち上げ目指す

■宇宙の精密地図を作製するはずが…

 飛び立てずにいるのは、日本初の位置天文観測衛星「ナノジャスミン」。重さ35キログラムの超小型衛星で、国立天文台や東京大、京都大の学生らが中心となって開発した。恒星の位置や運動を正確に観測し銀河系の精密な地図をつくるのが目的で、現在、2015年の打ち上げを目指している。

 位置天文観測衛星としては欧州宇宙機関(ESA)が1989年に「ヒッパルコス衛星」を、2013年「ガイア衛星」を打ち上げてリードしているが、日本も超小型衛星「ナノジャスミン」を打ち上げ、欧州の観測データと照合することで、精度の高い星の地図をつくろうと考えた。第1号の超小型「ナノジャスミン」に続き、第2号衛星「小型ジャスミン」、第3号衛星「中型ジャスミン」まで、3ステップの打ち上げ計画を立てている。

 打ち上げを待っているのは、第1号衛星「ナノジャスミン」。2010年には組み立てを完了し、当初、2011年の打ち上げを目指していたが、不運が襲った。

■ブラジルの建設遅れから負の連鎖に

 日本のロケットで日本から打ち上げるのではなく、旧ソ連のロケット・ミサイル技術を継承したとされるウクライナの「サイクロン4」というロケットで、ブラジルのアルカンタラ射場から打ち上げを計画していた。ロケットはあるが自国に発射場がないウクライナ、発射場をつくりたいがロケットがないブラジル、人工衛星を打ち上げたいが費用や軌道などの面で日本からは打ち上げられない日本の3つがタッグを組んだ計画だった。ところが、ブラジルの発射場建設が遅れに遅れ、衛星は現在、東京大で保管され出番を待つ状態が続いている。

 日本のロケットに乗り換えようにも、日本は安全性の要求レベルが高いうえ、切り離し装置の違いなどから大幅な設計変更を迫られるなどの事情もあり、容易ではない。

 ウクライナからの要請でようやくブラジルが発射場建設を急ぎ始めた矢先に襲ったのが、ウクライナ情勢の緊迫。ウクライナとの連絡も滞り始めたという。

 プロジェクトを推進する郷田直輝・国立天文台JASMINE検討室室長は、「日本の天文学者でウクライナ情勢を気にしているのは私ぐらいでしょうか」と苦笑交じりに、国際情勢に揺れる胸の内を語る。

(映像報道部 菊次正明)

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