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活況の部屋、若武者競う 大相撲・千代鳳(上)

九重部屋は、20代前半の若い力士の競い合いによる「相乗効果」で5人もの関取(幕内4、十両1)が番付に並ぶ。先頭を走るのが今場所、21歳の若さで小結に昇進した鹿児島・志布志市出身の千代鳳だ。

大学出の千代大龍(25)、千代鳳の兄の千代丸(23)、小気味よい相撲の千代の国(23)、十両の千代皇(22)、幕下にもモンゴル出身の千代翔馬(22)らが控える。この活況は他の部屋の垂ぜんの的である。

親方の指導で眠れる才能覚醒

「同年代のお相撲さんがオレもオレもと上を目指す気持ちを強く持って頑張っているということに尽きる」と師匠の九重親方(元横綱千代の富士)は言うのだが、眠れる才能を覚醒させる指導法もあるようだ。

場所前の稽古場では、千代の国と千代丸の三番稽古(同じ力士が続けてとる)から千代鳳が加わって3人での申し合いとなった。右肩が痛いという千代丸は全く勝てない。師匠から容赦ない叱責が飛ぶ。

仕上げの一番きついぶつかり稽古で兄に胸を出したのが、弟の千代鳳だった。

立つ気力も無くなって砂まみれになって土俵にはう兄を弟は気合を入れるため両手で思い切り顔を張った。あの手この手で兄に締めの力を出させようとする。「さあ、我慢して、力出せ!」。千代鳳は「丸(兄)は泣いたら力出すんです。もっと怒らせて(反発心をあおって)やれば。やるからには一緒に頑張りたいですから、きつくてもそれで気持ちに火がついてくれたらうれしいです」。

「力出せ!」兄にも容赦なし

「自分も幕下のころ、千代の国にこんな感じで胸を借りて鍛えてもらった。厳しくやってもらわないと地力がつかないですから」。弟は自分がやることをやっているという自信があるから兄にも「力出せ」と言えるのだという。稽古場では「兄弟とかは考えない。中学で柔道の試合(県大会優勝、九州3位の実績)をやっている時も年齢とか先輩とかは関係なかった」。

兄は2007年に初土俵を踏んだ。翌年弟が入門。弟は序二段で左膝前十字靱帯断裂という重傷を負うが、休場を挟みながら基本を鍛え直して番付を上げてきた。弟が昨年九州場所で十両優勝を飾ると、低迷していた兄が猛烈に奮起して、兄弟で十両を連続制覇した。「丸の場合は十両を3場所で通過したけど自分は十両で丸2年かかった。何で兄が下でうろちょろしていたのか分からない」

部屋の稽古では「負けられない」

千代鳳は九重部屋の優等生で師匠も「まじめで素直に聞く耳を持って自分を導ける」と太鼓判を押す。その自覚も本人は十分だが、178.5センチの兄千代丸は最近、体重が10キロ増え180キロを超え、顔も体もはち切れて師匠に説教される。

「弟の10分の1も稽古しなくて幕内を務められるんだから、もっとやれば"兄弟三役"も夢じゃない、という気持ちでやってもらいたい」

千代鳳は部屋の稽古ではほぼ負けなし。「三役に上がったので負けられない。そういうのがあるので一番一番集中してとっている」。兄弟子の千代の国は「最近まで五分だったけど鳳は花開いちゃったすね」と、あきれ顔だった。

(敬称略)

〔日本経済新聞夕刊5月12日掲載〕

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