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ウエアラブル競争幕開け ソニー、生活を「見える化」

米グーグルが4月中旬に眼鏡型の「グーグル・グラス」を1日限定で一般販売するなど、2014年は「ウエアラブル元年」になりそう。腕時計型の「ギア」で矢継ぎ早に新製品を投入する韓国のサムスン電子を含め、今のところ海外勢が席巻している。日本勢はスマートフォン(スマホ)時代到来に後れを取ったが、復活のチャンスはあるのか。

「今日はほとんど電子書籍を読めなかった」――。スペインのバルセロナに住む女性会社員のアナさん(28)は帰宅すると、スマホのアプリ「ライフログ」をチェックする。先週末に購入して手首に24時間付けているソニーの「スマートバンドSWR10」とスマホが連携し、アナさんの日常を記録している。

1日に1時間の読書、30分のジョギング、6時間の睡眠などの目標を設定。SNS(交流サイト)などは1時間以内と決めた。日々の達成度のほか、1カ月の平均値を確認することもできる。生活の様子を「見える化」することで、遊びや仕事にメリハリが出てきた。

歩数や睡眠記録

ソニーは3月から、欧州など一部の地域でスマートバンドの販売を始めた。価格は99ユーロ(約1万4000円)。今後、日米でも発売する。バンドに仕込んだセンサー部品「コア」で、歩数や走った時間、消費カロリー、睡眠の深さなどを記録する。活動量計の機能に加え、スマホと連携し、位置や天候などの情報も自動で取り込む。SNSや電話の利用、音楽鑑賞、写真撮影なども記録し、日常生活を網羅する。

現在は独自開発のアプリで13種類の活動を記録するが、今後は「API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)」と呼ぶ技術仕様を公開し、他社との連携も視野に入れる。

 「スマートバンドは人間の生活に24時間密着する商品。行動記録を将来の生活のヒントにしてほしい」。ソニーモバイルコミュニケーションズのスウェーデン・ルンドオフィスで商品企画を担当した宮沢秀右プロダクトマネジャーは話す。

ヒトエは肌着感覚で着用し、心拍数を計測できる

開発に着手したのは13年初め。「スマホより、もっと体に近づいた商品を作る」(宮沢氏)のが目標だった。ソニーは1979年発売の「ウォークマン」で音楽を屋外に持ち出すことを 「発明」した。同社が提案するライフログ(生活記録)機器は市場の関心も高い。

SNSに詳しいアジャイルメディア・ネットワーク(東京・渋谷)の徳力基彦取締役は、ウエアラブル機器の登場で「消費者はライフログの収集をゲーム感覚で楽しむようになる」と予想する。歩数計の時代から「自分の活動を記録したいという欲求は誰にでもあった」が、収集できる情報が増えて「楽しみ方が一気に広がった」と話す。

ウエアラブルはデジタル分野の企業以外にも商機をもたらす。

体調の異変察知

一人暮らしのお年寄りが自宅で突然、心筋梗塞で倒れた。幸い、十数分後には救急車が到着。九死に一生を得た。命を救ったのは、一枚の衣服。近隣の医師が衣服から発信される心電波形の異変に気付いた。

近い将来、こうした医療の進化を体感できそうだ。NTTグループがパートナーに選んだのが東レだ。共同開発した機能素材「hitoe(ヒトエ)」を組み込んだシャツを着ているだけで心拍数を高精度で計測する。

直径700ナノ(ナノは10億分の1)メートルの極細ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維に電気を通しやすい高分子ポリマー樹脂を含浸させ、電極にする。通常のPET繊維は15マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルで、肌に触れる面積が小さい。「東レの技術が必要だった」と、NTTマイクロシステムインテグレーション研究所で開発を担当した小泉弘主幹研究員は話す。

3枚のヒトエをシャツの胸部に貼り付け、左肩近くの発信器から心電波形をスマホに転送する。価格はシャツ1枚が1万円前後の見通し。将来は医療機器としての認可取得も視野に入れる。

NTTドコモは14年中に、まずスポーツや健康増進分野でヒトエを活用したサービスを展開する計画。1月の発表以降、約50社から問い合わせがある。さらに、「集めた生体情報をビッグデータ化したマーケティング活動」(NTTドコモ)も検討する。例えば、心拍数の動きで消費者が無意識のレベルで新製品のテレビCMをどのように感じたかを調べることも技術的には可能だ。

話題先行のウエアラブルだが、まだ市場は動き出したばかり。創意工夫で、日本勢にもまだまだチャンスがある。

[日経産業新聞2014年4月28日付]

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