年金これだけ… 離婚決意も揺らぐ「分割」の誤解
対象や期間に注意

2014/5/3 7:00
保存
共有
印刷
その他
 専業主婦のAさん(55)は会社員の夫(59)との離婚を考えている。離婚の際に夫婦の年金を分割できる制度があると知ったが、どんな手続きをすればいいのか、確認しておきたい。

離婚の際に夫婦の年金を分割できる制度が導入されたのは2007年です。翌08年には専業主婦(第3号被保険者)を対象にした仕組みもできました。それ以降に離婚した場合、妻側が請求するだけで年金分割が可能になりました。

夫が将来受け取る年金額の半分をまるまる妻がもらえると思いがちですが、実際はそうではありません。Aさんのように夫が会社員、妻は専業主婦という想定で説明しましょう。

まず、分割される年金の「種類」についてです。対象は、厚生年金のうち、現役時代の収入に応じて受給額が決まる「報酬比例部分」です。収入と無関係の「基礎年金」は分割できません。勤め先の会社が設ける「企業年金」も、分割対象ではありません。

夫が公務員などだったら、分割されるのは共済年金のうちの報酬比例部分です。夫が自営業なら加入先は国民年金で、分割する部分はありません。

次に年金の「期間」についてです。分割で考慮されるのは2人が結婚してから離婚するまでです。その間に納付した保険料が算定ベースになります。別居していた期間も含みますが、独身時代は対象外です。

期間についてもうひとつ重要なのが、「08年4月1日」(専業主婦の場合)という日付です。この日を起点として、離婚した日までの期間については、請求すれば、年金は自動的に50%に分割されます。

一方、この日より前の期間については、年金を分割するのか、その割合はいくらなのかを両者で話し合い合意する必要があります。合意できなければ家庭裁判所に審判や調停を申し立てます。「審判になれば、ほとんどのケースで50%の分割になる」とフラクタル法律事務所の弁護士、田村勇人さんは言います。

ちなみに、夫婦共働きで2人とも会社員といった場合、双方の収入額が重要になります。収入が多い方から少ない方へ年金の一部を分けるのが基本です。

分割の請求には2人そろって年金事務所へ行く必要があります。別れた後に顔を合わせるのはいやだというなら弁護士らに任せるのが得策です。請求できるのは離婚後2年以内です。

弁護士の堀井亜生さんは「分割額が思っていたほど大きくないことを妻が知り、離婚を思いとどまる例もある」と話します。勤続・婚姻期間40年、平均手取り賃金40万円弱というモデル世帯で見ると、妻が分割を受ける可能性のある報酬比例部分は多くて5万円、基礎年金と合わせても11万円ほど。夫に先立たれた場合に受け取る遺族厚生年金より少ないのが一般的です。

[日本経済新聞朝刊2014年4月30日付]

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]