養育費足りない、払えない…離婚後に困った場合は
民法では、両親が離婚しても子供を扶養する義務があるとしています。さらに、子供の利益を最優先にして両親が話し合って養育費を決めるように求めています。基本的に養育費の支払い義務は子供が20歳になるまでですが、両親とも大学を卒業しているのなら、子供にも大卒まで養育費を払う運用が一般的です。

養育費の金額はどうやって決まるのかをまず確認しましょう。2003年に家庭裁判所の裁判官が、養育費の目安を導くための算定表を公表しています。図のように、夫婦それぞれの年収と子供の年齢や人数などをもとに割り出せるようになっています。通常はこの算定表などをもとに、離婚するときに養育費を決め、毎月決まった額を払うケースが多いでしょう。
もちろん、当事者の事情が変われば、最初に決めた金額を変更することができます。例えば、養育費を受け取って子供を育てている元妻が体調を崩して働けなくなったり、子供が成長して教育費がかさんだりといったことは、増額を求める理由になります。
一方、養育費を支払う元夫の側も、リストラで年収が大幅に減ったことなどを理由として減額を求めることができます。元妻が別の男性と再婚し、新しい夫が妻と元夫との間の子供を養子縁組した場合も、減額や支払いをやめる理由になります。
ただ、「離婚して何年もたっている元夫に、いきなり百万円単位の入学費などを一度に払ってほしいと求めても、認められる可能性は低い」と、離婚関連の法務に詳しい金澄道子弁護士は話します。養育費の増額について話を円滑に進めるためには、離婚後も子供の進路について相談や報告をしておいた方がいいでしょう。
実は、離婚したカップルのうち養育費の支払いをきちんと決めているのは4割程度にすぎません。支払っている金額も「子供1人なら月額約3万円、2人なら約5万円、3人なら約6万円が相場」(金澄弁護士)といいます。算定表よりも低い金額しか支払われていないことが多いのが現状のようです。
支払いが滞った場合は、養育費を取り決めた家庭裁判所の調停証書や審判などがあれば、家裁に履行勧告や命令を出してもらえます。強制執行で元夫の給料を差し押さえるという方法もあります。しかし、強制執行をすれば、相手の社内での立場が悪くなって関係が一段とこじれる可能性もあります。養育費の取り立て自体が難しくなる恐れもあるので、慎重に検討すべきでしょう。
[日本経済新聞朝刊2014年4月23日付]