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本当に家財のため? 賃貸物件で勧められる保険

 この春、就職や単身赴任といった新生活で賃貸住宅を借り、入居条件として家財の保険に入るよう求められた人は多いだろう。不動産業者の店頭でなんとなく契約したり、保険会社のパンフレットにある家財評価の「目安」をうのみにしたりすると無駄な保険料を払うリスクがある。家財がどのくらいあるのか、万が一の場合にいくら保険金が要るのか。自分のものさしで考えれば保険料を節約できる可能性がある。

「そんなに家財はないんですけど……」。東京都内のIT会社に就職して賃貸マンションを借りた中西裕太さん(仮名、23)は首をかしげる。不動産業者で「勧められるまま契約した」という家財保険の保険金額は261万9000円。「家電は安いモノしかないし、新調したスーツなどを入れても家財はせいぜい70万円くらい」という。2年契約の保険料は1万5000円だった。

「借家賠」とセット

賃貸住宅の保険は家財保険を中心にいくつかある(表A)。不動産業者がその代理店をしている。入居者は家賃や敷金など、もっと大きなコストに関心が向きがちだが、家財に必要以上の保険をかけるのは避けたい。保険料が高くなるだけで、保険金は実際の損害額までしか出ない。

不動産業者が入居者に家財保険の加入を求めるのは、それとセットになっている「借家人賠償責任保険(借家賠)」に入ってもらうことが主な目的とされる。借家賠がない入居者が火災を起こしたりして被害の賠償金が払えないと、家主が大きな損失を被り、入居者自身も経済的に追い詰められかねないからだ。

ところが借家賠だけでは保険料が安く、不動産業者にとっては代理店ビジネスの魅力が乏しい。このため保険会社は「家財保険とセットにして保険料をかさ上げせざるを得ない面がある」(ある損保幹部)という。中西さんが契約した少額短期保険会社(少短)の場合、保険料の30~45%ほどが代理店の手数料だ。

契約手続きにあまり手間がかからない少短の家財保険を扱う不動産業者は多いが、入居者にとっては保険金額の選択肢が少ない。最大手の全管協共済会(東京・中央)は最低金額が400万円。木造などに比べ燃えにくい鉄筋コンクリート造りのマンションに入居するなら、インターネットなどで自分で損害保険会社の代理店を見つけ、保険金額を下げて契約すれば保険料を節約できる。

「ちょっといいソファを買ったりしたので、万が一の場合は家財をすべて買い直したい」。広告代理店勤務の相川由美さん(仮名、32)は昨年、家財保険の保険金額を550万円に倍増させた。かねて同居していた男性(38)と晴れて入籍したのを機に、数十万円かけて輸入家具などを買いそろえたからだ。

世帯年収は1千万円以上、家賃が月22万円の賃貸マンションで暮らす相川さん夫婦。懇意にしているあいおいニッセイ同和損害保険の代理店で見積もった保険金額は世間の平均よりも多そうだが、実は同社が世帯主の年齢と家族構成からはじき出した家財評価の目安は1250万円と、この夫婦をはるかに上回る。

ただし保険各社が示す目安はまちまち(表B)。損害保険ジャパンの参考資料では世帯主が40歳、夫婦と子ども2人の標準世帯の家財評価は和服が118万円、ピアノなど楽器が47万3000円、タンス類が65万8000円、パソコンは周辺機器を含めて49万7000円というが、どの世帯にも当てはまるとは限らない。

よく考えずに目安のまま契約すれば保険料が無駄になりかねない。投資教育アドバイザーの大江英樹さんは「いったん具体的な数字を示されると思考がそこにつなぎ留められてしまう『アンカリング効果』に気を付けてほしい」と警鐘を鳴らしている。

保険会社のパンフレットは「タンスから歯ブラシまで、みんな家財です」などと強調するが、保険金額は家財をどのくらい持っているかではなく、どのくらいの補償が要るかで決めよう。賃貸情報サイト「ホームズ」の藤塚寛夫さんは「大きな家財をざっと足せばいい。一人暮らしなら50万円が一つのメドになるのではないか」と指摘する。

地震はカバーせず

賃貸住宅の家財保険は「かけ過ぎ」の面がある一方、地震保険の契約が少ない。約5割の市場シェアがあるとみられる少短の家財保険には制度上、地震保険が付けられず、地震による揺れ、火災、津波などで家財が壊れたり、燃えたりしても保険金は出ない。

損保会社の地震保険の保険料は都道府県によって大きく異なるが、東京都は鉄筋コンクリート造りで保険金額100万円当たり年間1690円。これまで意識していなかった家財保険のかけ過ぎを削り、その分を地震保険に充てるのも一案だ。相川さんは「家財保険をちょっと減らしてでも、地震保険に入ったほうがいいよ」と夫に相談してみるという。(表悟志)

補償対象や額、見極めて節約


 川崎市の賃貸マンションに住む会社員、大下順子さん(仮名、36)は3月、インターネットで見つけたアイアル少額短期保険(東京・中央)の「ネットdeマンション保険」に加入した。家財保険300万円、借家人賠償責任保険1000万円で保険料は年間4200円。「不動産業者に紹介された保険の半額以下だった」と満足そうだ。
 保険料が安いのはマンション中高層階では少ない洪水などの被害を補償しないため。こうした補償内容や保険料は少短各社のサイトで確認できるし、損害保険各社も代理店に電話すれば見積もりを出してもらえる。自分に必要な補償と保険金額を見極めたうえで手間を惜しまずに比較検討すれば、数千円の節約につながる場合がある。
[日本経済新聞朝刊2014年4月23日付]

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