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仮想通貨 それでも増殖

~ビットコインはIT革命の新たな主役となるか~

写真は語る

大手取引所「マウントゴックス」の経営破綻から間もなく2カ月。インターネット上の仮想通貨ビットコインについて日本は所管官庁を決めておらず、その存在は宙に浮いたままだ。一方、海外では送金手段として広く用いられ始めている。「革新的な決済手段」なのか、「金融システムに咲くあだ花」なのか。仮想通貨にまつわる国内の動きを追い、その可能性や課題を探った。

金融システム変える可能性

2月末、仮想通貨「ビットコイン」を顧客から預かり、現金への両替サービスを行っていたマウントゴックスが取引を停止し、経営破綻した。麻生太郎財務相は記者会見で、「どこかで破綻すると思っていた」と語った。

犠牲は大きかった。東京地方裁判所は4月16日、マウントゴックスの民事再生手続き開始の申し立てを棄却し、破産手続に移行することが確実となったためだ。

破産すれば会社は清算され、被害の弁済は難しくなる。顧客が保有する75万ビットコイン(当時の評価額で470億円前後、その後、20万ビットコインが残存と発表)と顧客の預かり金最大で28億円は消失したまま。マウントゴックスの破綻は1取引所のセキュリティの弱さとの指摘もあるが、捜査当局のメスが入っていないため実態は未解明のままだ。ドルに対する交換価値は回復し、海外では普及を続けているが、監督当局が不在のまま膨張している。

2009年から運用が始まったビットコインは、低コストで決済が可能なシステムとして海外で利用されてきた。管理を政府や中央銀行などの組織が行わず、世界中の取引参加者がコンピューターで結びつき、そのネットワーク内で取引が正常なものか承認作業を行っている。作業はマイニングと呼ばれ、膨大な計算量を必要とする。ブロックと呼ばれる取引記録が公開されており、取引内容の改ざんなど不正行為が出来ないように維持し続けられている。

2013年の1年間でビットコインの価格は100倍以上に跳ね上がり、投機性に注目が集まったが、デジタルであるにもかかわらず偽装が生まれないそのシステムに革新性があるといわれている。

取引参加者とプログラムだけでシステムが維持、管理されるため、利用者は取引手数料をほとんど負担せずに済む。大型システムを駆使する既存の銀行が高額の手数料を徴収するサービスを提供するのと対照的だ。米バンクオブアメリカは昨年末のリポートで、ビットコインは既存の送金サービスに並ぶ存在となるだろうと報告している。

早稲田大学ファイナンス総合研究所の野口悠紀雄氏は、「コスト意識の高い企業が送金や決済手段として使い始めるのでは」と話す。金融システムが整っていないアジアなどの新興国から始まり、国内でもライバル企業の利用で一気に波及する可能性があると予測する。「経済や金融システムに大きな影響を与えるだろう」と野口氏は語る。

一方、「匿名性」という便利さが悪用され、不正取引の温床になっているとの疑念も消えない。マネーロンダリング(資金洗浄)やテロ資金の対策を担う国際組織、金融活動作業部会(FATF)は世界的な調査を始める方針だ。

中国やロシアなど取引を規制する国がある一方で、シンガポールやドイツなど事実上容認する国も出てきた。日本は「課税対象にする」と表明し存在を認めたものの、所管官庁を決めていない。利用者保護の問題をどうするかなど課題は山積している。

派生コイン 次々誕生

ライトコイン、ドギーコイン――。ビットコインの成功以来、同様の派生コインが次々と誕生している。現在100種類以上存在し、インターネット上にはビットコインを基軸コインにした交換レートもあり、外為市場のようにコイン同士が交換されている。

今年1月に日本で誕生した仮想通貨「モナーコイン」のイベントが先月、約70人の参加者を集め東京都内で行われた。コインを使った即売会も行われ、スイーツや衣類などの販売が行われていた。

国内でビットコインを使える店舗も増えている。大阪・心斎橋の美容室ではビットコインでの支払いを2月から受け付け始めた。同店では近隣の飲食店十数店と地域一帯での普及を進めており、両替機能付きのATMを今夏、設置する予定だ。

米グーグルのエリック・シュミット会長は先月行われた講演でビットコインのシステムを高く評価し、「ビットコイン関連ビジネスが今後急拡大するだろう」と可能性について熱く語った。

さらに米国ではビットコインの技術を応用した「イーサリアム」というシステムが注目を集めている。電子書籍や音楽などの著作物、契約書や信書、株や債券などデジタルで表現できるあらゆる情報を、インターネット上であたかもモノのように流通させることが可能になる。モノの所有権移転の形がすっかり変わり、既存の社会構造に大きな変革をもたらす存在になるかもしれない。

ビットコインは仮想通貨であるにとどまらず、新たなIT革命の担い手となる可能性を秘めている。

写真部 瀬口蔵弘、寺沢将幸

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