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ウクライナからの目覚まし音

編集委員 小平龍四郎

ロシアのクリミア半島編入に揺れるウクライナの国内総生産(GDP)は1700億ドル強。県内総生産が約16兆円の静岡県ほどの大きさだ。平時ならば世界経済の中での存在感は必ずしも大きくない。

そんな国の行く末を投資家が見ている。

日興アセットマネジメントは3月初め、株式投資の方針を「オーバーウエート」(買い超過)から「ニュートラル」(売り買い中立)へと急きょ引き下げた。「ウクライナ情勢を巡る緊張の高まり」が主な理由だ。同社は今週にも投資方針を決める会議を改めて開くが「リスクをさらに抑制する方向になるのではないか」(チーフグローバルストラテジストのジョン・ヴェイル氏)という。

バンクオブアメリカ・メリルリンチの3月の世界投資家調査では、8割の回答者が「地政学リスク」への警戒を示した。株式を「買い超過」とする投資家の割合も急速に減り、ウクライナ情勢への懸念の広がりを印象づけた。

ウクライナを巡る主要7カ国(G7)とロシアの対立を「新冷戦」と呼ぶ向きがある。軍事的緊張が高まれば、マネーの流れがリスク回避の様相を強め、経常赤字国からの資金流出が加速、世界の金融市場は混乱に陥る――。そんな危機の波及経路を予想する声も聞かれる。

とはいえ、ウクライナ情勢が象徴する地政学リスクは決して想定外のことではない。米国が量的緩和の出口を探る今年は市場の楽観が後退し、政治・外交の市場への影響力が強まることを多くの専門家は予想していた。

国際政治分析に定評のある米調査会社ユーラシア・グループは、年始に発表した「2014年の十大リスク」の一つとして「ロシア」をあげた。支持率の低下と国内経済の停滞に悩むプーチン大統領がどんな行動に走るか分からない、という分析だった。

米ストラテジストのバイロン・ウィーン氏も恒例の「びっくり十大予想」の中で、地政学リスクの高まりで今年の米株式相場が一時的に調整する可能性を指摘していた。

実際に今年の株式相場が不安定ななか、最近の同氏は「世界的に厳しい選択肢を取りたくないムードがまん延している」と先進国の政治リスクにも言及する。構造改革や成長戦略の結果がなかなか出ない日本もその中に含まれる。

日本は昨年末からの株価の下落率が10%強とG7の中で突出している。環太平洋経済連携協定(TPP)の合意に不透明感が強まっていることなどもあり、株式市場がリスク回避の動きに翻弄されやすくなっているのかもしれない。

ウクライナ情勢の緊迫を、結束が緩みがちな欧州への「ウエークアップコール」と評したのは著名投資家のジョージ・ソロス氏だ。改革の手綱を緩めるわけにはいかない日本の政府や企業にも、その目覚まし音は響いている。

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