始球式は何のため? 球界のためでしょ

(1/3ページ)
2014/3/23 7:00
保存
共有
印刷
その他

現役時代から疑問に思っていたことの一つに始球式がある。若いタレントやアイドルの始球式に身を乗り出してみたこともあったが、その一方で、なぜこの人がマウンドにいるのだろうというケースも少なくなかった。何のため、誰のための儀式なのか、違和感を抱いていた。その長年の疑問に明快な解答と確信を与えてくれたのが、3月10日、巨人―阪神、伝統の一戦の始球式だった。

伝説の沢村栄治の一人娘ら始球式

プロ野球誕生80周年記念として、三重県伊勢市(旧宇治山田市)で行われたオープン戦の始球式を務めたのはご当地出身、伝説の投手、沢村栄治さんの一人娘である酒井美緒さん。そしてもう一人、沢村さんと投げ合ったこれまた伝説の阪神OB、巨人戦にめっぽう強かった西村幸生投手のおいごさん、お二人による始球式だった。

沢村さんも西村さんも第2次世界大戦で戦死されている。沢村さんは1944年12月2日、屋久島西方沖で、西村さんは45年4月3日フィリピンのバタンガスで亡くなられている。沢村さんは「生きて帰れたら、いい父親になる」と奥さん宛に書いたのが最後の手紙となってしまった。

プロ野球の草創期を支えた人たちとその家族が、どれだけ「時代」に翻弄されたことか。44年生まれ、69歳の酒井さんの投球は堂々たるストライクだった。過酷な運命を生きながらも、沢村さんの血がしっかりと受け継がれていたことにジーンときた。父親として、野球人として、さぞかし無念だったろうと思うと目頭が熱くなる。それと同時に、始球式本来の姿はこういうことではないか、と思ったのだ。

語り継がれる大リーグ相手の快投

34年にベーブ・ルース、ルー・ゲーリッグらを擁する大リーグ選抜が来日し、日本選抜と戦った。当時プロ野球というものが存在していなかった日本は、盛んに行われていた大学野球の選手を中心にチームを編成した。日本選抜はまったく歯が立たず、結果は18戦全敗。しかし、その中で唯一、大リーグ選抜をきりきり舞いにさせた試合があった。

静岡県の草薙球場での試合、当時17歳だった沢村さんが、バリバリの大リーガー相手にバッタバッタと三振を奪った。唯一、ゲーリッグに本塁打を打たれ0-1で負けたものの、その好投は伝説となり今でも語り継がれている。そしてその年、読売巨人軍の前身となった大日本東京野球倶楽部(くらぶ)が設立された。

  • 1
  • 2
  • 3
  • 次へ
保存
共有
印刷
その他

プロ野球コラム

電子版トップ



[PR]