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過去10年の勝ち組投信、銘柄・運用体制ここが違う

 長期で好成績を続ける投資信託が少ないとされる日本。しかし例外もある。投信評価会社モーニングスターが初めて発表した「10年間でみた優秀投信」(ファンド・オブ・ザ・ディケード)の顔ぶれから、長期で勝ってきた投信の強みを探った。

「少額投資非課税制度(NISA)開始もあり長期運用の関心が高まった」。モーニングスターの朝倉智也社長は1月末に「ディケード(10年)」を発表した理由をそう話す。騰落率、成績のブレの少なさ、運用体制の充実も含めた総合評価だ。

基準価格が4.7倍に

日本株で運用する「JPM ザ・ジャパン」は昨年末までの10年間で基準価格(分配金再投資ベース)は4.7倍。日経平均株価と比べ"勝ちっぷり"は際立つ(表A、グラフB)。

大きなサイクルを読み、大型株から小型株、内需株から輸出関連株など「変幻自在」に入れ替える。多くの投信は「一人負け」を嫌うので東証1部時価総額の順位と似た銘柄構成にしがちだが、ザ・ジャパンの昨年末の組み入れ上位は東京都競馬東京ドームなどで全く異なる。

ファンドマネジャーは2006年から継続して担当。チームは計10人で全員が調査担当と投資判断業務を兼ねる。運用会社の調査は業種別など分担制が一般的だが、ザ・ジャパンは担当を決めず年に計2500社程度を自由に企業取材。各自が広い対象の中から相対的に魅力度の高いテーマを選び組み入れる。

好成績が評判になり、昨年4月に純資産が急拡大した。5月以降の成績はこの投信では珍しく、市場平均を若干下回った。「独自の銘柄を選んで勝つ強みが、運用額が増えて薄まったのでは」との心配も一部で聞かれる。実際に過去、好成績だったファンドが規模拡大後に成績が鈍化することはよく見られた。

ファンドマネジャーは「多く組み入れた内需株が春先までの上昇の反動で一服した要因が大きい。今の規模の純資産で運用が変質することはない」と答える。規模拡大後も好調を維持できるか注目の時期だ。

10年で基準価格が2.6倍になった「ライジング・サン」は、中期的に高成長が見込める小型株が中心。多くの中小型ファンドは上場直後で注目度の高い「旬の銘柄」に投資しがち。しかしそうした銘柄は注目が薄れれば急落することも多い。

「ライジング・サン」は経営の安定にも注目。結果、中小型ファンドには珍しく約8割が東証1部だ。「競合の撤退や規制緩和など、近い将来に割安さが解消すると確信できた銘柄に投資する」(藤村忠弘シニアファンドマネジャー)。藤村氏は00年のファンド設定以来一貫して実質的な担当を続けている。

国・業種の偏りなく

担当の長さは今回選ばれたファンドの多くで共通。外国株の「Avest-E」は割安株投資で知られる米ハリス・アソシエイツ社が運用を担当。2人のファンドマネジャーはともに10年超継続して担当している。

チームが、特定の業種や国に特化せず、企業取材を元に割安株を自由に選ぶ体制も「ザ・ジャパン」などと似る。国別の組み入れ比率で2位がスイスなのも珍しい。10年間で基準価格は2.2倍だが、この間の外国株(日本除く)の指数の上昇率は6割強にとどまる。

日本債券の「DLIBJ公社債オープン(中期コース)」は好成績の国内債券ファンドとして業界で著名。「株や為替のリスクは避けたいが預貯金金利では不満という人向け」(山崎信人上席ファンドマネジャー)。

国債・社債の比率や投資対象債券の平均残存年数を、かなり自由に変えられる仕組み。過去も金利や景気に合わせて構成比を変え、リスクを抑えながら好成績を維持した。設定当初から組み入れ銘柄を全部開示するなど透明度も高い。山崎氏も運用開始から一貫して責任者だ。

外国債券の「ピムコ ハイ・インカム毎月分配型ファンド」や「悠々債券」は、高格付け債だけでなくハイリスクハイリターンの低格付け債にも投資する。景気状況によりそれぞれの分野が補い合い、長期で相対的に高いリターンを達成してきた。

もちろん「10年で勝ったファンド」が今後も勝つとは限らない。コストは高めのファンドが多い点にも注意が必要。幅広い資産に分散する基本を踏まえ、資金の一部で投資時期も分けながら活用したい。

日本の課題は米国と違いファンドマネジャーの名前や経歴の開示義務がないこと。今回の優秀ファンドの多くも独自の銘柄選別が強みなだけに、ファンドマネジャーの腕は重要。ただ開示義務がないので突然変わっても投資家に通常わからない。今後の義務化を求める声も多い。(編集委員 田村正之)

投信選び、成績のブレにも注目を


 投信選びでは成績のブレ(リスク)にも注目したい。リターンとリスクのバランスを示す指標として「シャープレシオ」があり、値が大きい方が優れている。様々な投信検索サイトや運用会社のホームページで調べられる。日本株、外国株などによって標準的な数値は異なるので、同じ投資対象の中で比べよう。今回の7投信は当然、シャープレシオが高いものが多い。日本経済新聞電子版のマネー「投信・ETF」欄の「投信発掘ツール」では、シャープレシオとコストなど様々な指標を組み合わせた投信選びが可能だ。

[日本経済新聞朝刊2014年3月12日付]

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