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鉄壁の二塁守備誇る偉才 楽天・藤田一也(上)

プロの野球選手ともなれば拙守のレッテルを貼られる人はそうはいない。ただし、名手とうたわれる人もまれ。「そこそこ守れる」が大半のなか、偉才の誉れが高いのが楽天の二塁手、藤田一也(31)だ。

座右の銘は「一期一会」。打球との縁も大切にしてきた

プロ野球史上トップレベルの評価

難しいバウンドの打球もたやすく手なずけるグラブさばきに、二塁ベースを挟んで遊撃側のゴロまで捕る位置取りの確かさ。

視野の広さと判断力も卓抜だ。1死一、三塁からロッテ・サブローが三塁ゴロを打ったときのこと。普通に併殺を取るには当たりが鈍く、打者走者まで刺せるか微妙なタイミングだった。

そこで二塁・藤田は三塁走者の井口資仁が本塁を狙ったのを見て素早く捕手に送球、挟撃を交えた「三塁―二塁―捕手―三塁」の鮮やかな変則ダブルプレーでピンチを切り抜けた。

確実性と創造性が生み出す至芸の数々。西武守備走塁コーチの奈良原浩はそのゴロ処理の優美さにうなる。「どんなバウンドにも合わせられるから、難しい打球が飛んでもそう見えない。僕はそれが本当の内野手だと思う」

日本ハム内野守備走塁コーチの白井一幸は昨年、ブログで藤田の守備力を「プロ野球史上トップレベル」と言い切った。

打力で劣り専ら控え、トレードに

徳島・鳴門一高(現鳴門渦潮)、近大を経て2005年にドラフト4巡目で横浜(現DeNA)に入団。当時は遊撃手で背番号は「23」。守備位置も背番号も吉田義男(元阪神)と同じで、「ハマの牛若丸」として売り出された。

だが、その堅守が真に必要とされるまでにはかなりの歳月を要した。横浜では仁志敏久と石井琢朗が長く二遊間を張り、打力で劣る藤田は専ら控え。わらにもすがる思いで同僚の村田修一(現巨人)に打撃指導を頼んだこともある。

「悩んでいたので色々なアドバイスをした。よくメシにも連れていった」と村田。やがて石井らが去り、打力が上がっても常時出場とはいかず、ついには12年6月、内村賢介との交換トレードで楽天に出された。

その年の後半にたびたび二塁手で先発し、開花の兆しが見えたなかで迎えた13年春季キャンプ。ここがムチの打ち所とみた楽天首脳陣がカンフル剤を投じた。

打撃練習をともにするグループの編成で藤田をジョーンズ、マギー(現マーリンズ)、松井稼頭央と同じ組に入れたのだ。日米のスターから多くを学んでほしいとの親心。これが効いた。

9年目で初の規定打席到達、Vに貢献

開幕から「2番・二塁」の座をつかむと磨きをかけた守備でしばしばチームの窮地を救い、もはや代えのきかない選手との認識を皆に植え付けた。

9年目で初めて規定打席に達し、打率2割7分5厘。球団創設9年目で初のリーグ優勝と日本シリーズ制覇に貢献し、ベストナインとゴールデングラブ賞を初受賞。監督の星野仙一は「藤田の守備で10勝は拾った」と感謝した。

「人との出会いが大好き」という藤田。横浜を出されて味わった失意が消えるのにそう時間はかからなかった。「2球団でやることで出会いも増えたから」。座右の銘は「一期一会」。打球との縁も大切にした先に栄光が待っていた。

(敬称略)

〔日本経済新聞夕刊2月24日掲載〕

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