おひとりさま女性、「自分年金」2600万円への道 - 日本経済新聞
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おひとりさま女性、「自分年金」2600万円への道

 女性が生涯独身でいることを決めたら、早めに老後資金の見通しを確認しよう。一般に女性は男性より長生きなうえ、公的年金の支給額が少ない。そのため年金の不足分を補う「自分年金」づくりを強く意識する必要がある。漠然とした不安を抱えるより、備えるべき額を把握してすぐに動き出した方が賢明だ。

「私の年金、これだけしかないの?」。都内に住むシングルの会社員、山田涼子さん(41、仮名)は初めて日本年金機構の「ねんきんネット」で見込み額を調べてショックを受けた。

このまま働き続けると65歳から受け取る年金は月14万円程度。マンション購入の相談で訪れたファイナンシャルプランナー(FP)に老後への備え不足を指摘され、慌てて家計の見直しと積み立てを始めた。

山田さんの年金額は女性にしては少なくない。厚生労働省によると女性の厚生年金の平均月額は10万2千円。現役時代の給与と加入期間で決まるため、女性は男性より少ない傾向が顕著だ(グラフA)。女性が7割を占める非正規雇用では厚生年金の受給資格が得られないケースもある。その場合もらえるのは基礎年金だけになり、額はさらに少なくなる。

ではシングル女性は自分年金をいくら用意すればいいのか。求める生活水準や死亡年齢、年金額、企業年金の有無などによって変わるが、FPの氏家祥美氏は60歳から平均寿命の87歳までに必要な資金として2000万円が目安になるという。

賃貸なら余分に

総務省の家計調査によると、60歳以上の女性単身世帯の平均消費支出は月15万円程度。年金がもらえない60~64歳分の約900万円は自分で用意する必要がある。加えて年金受給が始まっても65歳以上の単身無職世帯では月2万8000円程度不足するため、65~87歳に約740万円が必要で、これに入院などの予備費300万円を入れると2000万円程度になる。

ただこれはあくまでも平均値を使った試算。例えば家計調査で住居費は月1万5千円程度と低く「賃貸住宅に住む場合は余分に準備しなければならない」(氏家氏)。

米運用大手アライアンス・バーンスタイン(AB)の後藤順一郎・未来総研ディレクターは「豊かな生活に必要な資金」として月額26万円を想定。この場合、自分で賄わなければならない老後の不足額は2611万円とシングル男性(674万円)の4倍近くに達する。「現役時代の賃金の低さと寿命の長さが大きな要因」(後藤氏)だ。

後藤氏は「支出の合計額」から「収入の合計額」を引く方法で試算。65歳まで働き続け、65歳時点の平均余命(23.82歳)より余裕を見て30年間、つまり95歳まで生きる前提とした。65歳まで働いたことを考慮するため、収入は厚労省の賃金構造基本統計調査をもとに年金が月14万円、退職一時金1709万円と算出している(図B)

老後の生活費は見通しにくいが「現在の8掛け程度で考えるといい」(FPの山本節子氏)。親からの贈与や相続もありうる人は早めに話し合い、老後資金に織り込んでおいた方がいいだろう。ただ、こうして割り出した自分年金額も年金の支給開始年齢引き上げや平均余命の延びを考慮に入れると「さらに増える可能性がある」(後藤氏)ことは頭に入れておきたい。

早めに積み立て

シングル女性の中には「節約志向は強いが、普通預金や定期預金にそのまま置いている人を見かける」と氏家氏は指摘する。

扶養控除などがある子持ち世帯に比べ「独身者は税負担が相対的に重くなりやすい」(同)面も見逃せない。マイホームを購入しても単身用の50平方メートル未満であれば、住宅ローン控除は受けられない。後藤氏は「資産形成では確定拠出年金や少額投資非課税制度(NISA)といった税制メリットのある制度を活用するのが一案」と助言する。

「2000万円ためるのは無理と思う人も多い」(氏家氏)が、諦めるのは早計だ。後藤氏が示した自分年金額2600万円程度を40歳から積み立て投資で備える場合、年2%の利回りで月6万7千円弱、年3%では5万8千円でたどり着く。積み立て開始は早いほどいい(表C)

投資にリスクは付きものだが「長生きする可能性、今後の物価上昇リスクを考えると、運用である程度リスクを取ることを考える必要はある」(後藤氏)。しかし実際に準備を始めている人は多くない。年金シニアプラン総合研究機構が40、50代の独身女性を中心に調査したところ「老後の生活費が不安」と答えた割合が9割近くだったが「老後の生活設計をまだ考えていない」との割合が未婚者全体の46%を占めた。

氏家氏は「結婚するかどうかは未定で、老後を真剣に考えることも先送りしている人は多い」と指摘する。まず年金額や企業年金の見込み額、保険の満期金などをチェックすることから始めてはどうだろうか。(下前俊輔)

[日本経済新聞朝刊2014年2月26日付]

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