2018年10月21日(日)

うるさ型オーナーにご用心

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2014/2/23 7:00
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中世フランドルの画家、ブリューゲル一族の絵にスケートやカーリングに興じる人々が描かれている。勝ち負けを争う競技性は当時からあっただろうが、庶民の遊びだから、負けても王様や領主のような偉い人が「あの子、大事なときには必ず転ぶ」といった突っ込みを入れてくることはなかったはずだ。

森喜朗東京五輪・パラリンピック組織委員会会長の講演での発言が波紋を呼んだ。フィギュアスケート女子の浅田真央の演技に「大事なときに転ぶ」の発言。団体戦での起用についても「負けると分かっていた。浅田真央選手を出して恥をかかせることはなかった」と話したという。

耳に残る不快感はどこから

講演の子細をみていくと、悪意はなかったことがわかってくるし、浅田への思いやりと取れる部分がかなりある。発言の一部だけを取り上げるのはフェアでない。それにしても耳に残る不快感はなんだろう。

元首相の肩書のゆえだろうか。「おかみ」にこうも言われなくてはならないのか、という圧迫感は否めない。

その昔、雪山や氷の大地に暮らす人々は金メダルも銀メダルも関係なく、冬期間のせめてものなぐさみとして、氷雪と戯れていた。メダルや国民栄誉賞の栄に浴すことはないかわりに、負ける自由も保障されていた。

初めはリンクもスキーのジャンプ台もそりのコースも全部手作りで、大会は同好の士の集いとして行われた。毎年年越しの恒例行事となっている欧州伝統のジャンプ週間に、その名残をみた気がした。

この景色はブリューゲルの時代とそんなに変わっていないのではないか――。ジャンプ週間を取材して回って、そんな感覚に包まれたものだった。

オーベルストドルフ、ガルミッシュパルテンキルヘン、インスブルック、ビショフスホーヘン。

10日間ほどかけて、ドイツ、オーストリアの田舎をめぐるツアーは牧歌的だった。試合を終えると、次の街に向かう。峠の境を越えるとやがて教会の尖塔(せんとう)がみえてきて、新しい街に着く。教会の周りにちょっとした広場があって、家々が続く。街を過ぎてもう一つ峠を越えるとまた教会の塔がみえてきて……といった具合だ。

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コラム「氷雪のスケッチ」

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