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遺族年金いくらもらえる 妻の老後に備える第一歩

かさむ生活費 早めの試算と貯蓄を

 男性より長生きする可能性が高い女性は夫の死後、自分の生活をどう営むか考えておくことが老後の安心につながる。夫が亡くなれば遺族年金を受け取ることができるが、受給額は夫の職業や収入、自分の働き方などによって変わる。万が一、一人暮らしになった場合に備え、遺族年金の基本と注意点を知っておこう。

「もし夫が亡くなったら十分な生活費があるだろうか」。静岡県に住む専業主婦のAさん(56)はこう話す。夫は64歳。65歳になる4月に退職し本格的な年金生活に入る。お互いが平均寿命まで生きると想定してもAさんが一人で暮らす期間は長くなりそうで生活設計を考え直したいという。

Aさんのケースは決して例外ではない。生命保険文化センターが18歳から69歳の男女約4千人に聞いた2013年度「生活保障に関する調査」によると、「老後生活に不安を感じる」と回答した女性は88%と男性の84%を4ポイント上回った。不安の内容として女性の83%が「公的年金だけでは不十分」と回答(複数回答)。「配偶者に先立たれると経済的に苦しくなる」という人も29%いた。

こうした不安を払拭するには、夫に先立たれた後、もらえる年金はいくらあるのか、生活費はいくらかかるのかなどを試算し準備しておくことが必要だろう。

生計を維持している人が亡くなったとき、残された家族に支給されるのが「遺族年金」。亡くなった人が国民年金に加入していた自営業者なら「遺族基礎年金」、厚生年金に加入していた会社員なら「遺族基礎年金」に加え「遺族厚生年金」を受け取ることができる。ただ、「遺族基礎年金」は子どものいる妻が対象で、支給期間は子どもが18歳になった年度末までだ。

上乗せは3通り

子どもが独立したシニア世代の夫婦で、会社員だった夫がなくなった場合を考えてみよう。妻は夫が受給していた老齢厚生年金の一部を「遺族厚生年金」として受け取ることができる。妻の受け取り方は3パターンあり(図参照)、厚生年金に加入していた期間のある妻は、最も金額が高いものが支給される。

いずれのパターンも妻は自分の老齢基礎年金は受け取れる。違うのは上乗せ部分だ。第1のパターンは、自分の老齢厚生年金のみを受け取る。第2は夫の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3に相当する額をもらう。第3は妻の老齢厚生年金の2分の1、夫の老齢厚生年金の2分の1を合計した相当額を上乗せする。

第2と第3は妻が厚生年金に加入していたことを考慮し、まず妻の老齢厚生年金の満額を支給。差額を夫の老齢厚生年金から「遺族厚生年金」として支給する。妻自身の年金部分は雑所得として課税対象になるが、遺族年金として支給される金額は非課税だ。

支給額は第2のパターンが最も多くなる場合が多い。共働きで妻の保険料が高く、働いていた期間も長いケースでは第1や第3の支給額が多くなることもある。

厚生年金に加入していなかった専業主婦は自分の老齢基礎年金に加え「遺族厚生年金」として夫の老齢厚生年金の4分の3を受け取る。

社会保険労務士で税理士の佐藤正明氏は「年金受給前でも『ねんきん定期便』や『ねんきんネット』で夫と自分の老齢厚生年金の金額を確認すれば、ある程度は自分で試算できる。面倒なら年金事務所で確認する方法もある」と助言する。

夫の死後、自分が受け取る遺族厚生年金の見込み額を年金事務所で問い合わせるなら夫の委任状と妻の本人確認書類が必要。夫自身が生前に確認するなら、年金手帳と本人確認書類が必要になる。

「死別後に1000万円」

現在65歳以上で遺族厚生年金を受け取っている女性は「自身の老齢基礎年金が月4万~5万円、夫の遺族年金を7万円程度受給している人が多い」と話すのは社会保険労務士の井戸美枝氏。1カ月の公的年金収入は12万円程度の人が多いという。では、支出となる生活費はどの程度必要だろうか。

総務省の家計調査によると、60歳以上の女性の単身世帯の1カ月の支出平均額は約15万1000円。約12万円の年金よりも多く、毎月約3万円が不足する。日々の生活費だけで年約36万円、65歳で夫を亡くして年金を受け取り始め90歳まで生きるとすれば、約900万円が不足する計算。「夫の死後、一人になった時の生活費として1000万円程度を用意する必要がある」(井戸氏)という。

ただ、この試算はあくまで平均値をもとにしたもの。老後に必要な資金は住まいが持ち家なのか賃貸なのか、住む場所が都市部なのか地方なのかなどによっても大きく変わる。ずっと健康でいられるとも限らない。

ファイナンシャルプランナー(FP)の大竹のり子氏は「日々の生活費に加え、病気や介護に備える費用として200万~300万円を計算に入れる必要がある」と話す。老人ホームなど介護施設の費用は様々だが、首都圏の民間有料老人ホームは毎月15万~30万円程度の費用がかかるとも言われる。

こうした多額の老後資金を用意するには早めの準備が大切だ。「40代くらいから自分の最期をどう迎えるのか、老人ホームなどの介護施設に入居するのかどうかなどを具体的に考え始めると、必要な資金が見えてコツコツ貯蓄するきっかけになる」(FPの安田まゆみ氏)という。(川本和佳英)

[日本経済新聞朝刊2014年2月12日付]

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