ルーキーで賞金ランク8位 ゴルフ・比嘉真美子(上)
「怒とうの1年」。比嘉真美子(20)は昨季をこう振り返る。2012年7月のプロテストに合格したばかりのルーキーが2勝をマークし賞金ランク8位(7865万円)に。メジャー初挑戦の全英リコー女子オープンでは7位に食い込んだ。12月10日、東京都内で開かれた「LPGAアワード」では新人賞を受賞、賞金女王の森田理香子らと並んで晴れ舞台に立った。
■ジュニア時代から大器と注目

沖縄・本部中3年で2年連続出場した09年ダイキンオーキッドで12位に入るなど、ジュニア時代から大器と注目されていた。11年と12年には日本女子アマを連覇し、12年9月に下部ツアーながら優勝も飾った。
それを考えれば、シーズン第5戦のヤマハ女子オープン(4月、静岡・葛城GC山名)でのツアー初Vもさほど驚きではないだろう。
開幕から2連続予選落ちしたが、毎週試合に出るのは初めて。「ペースがつかめれば大丈夫かな」と焦りはなかった。「葛城は風が吹くと聞いてヤマハにピークを合わせた。4日間大会は実力が出る」と言ってのけた。
5打差の12位発進した最終日、最大瞬間風速21.3メートルの強風が吹き荒れた。身をすくめる難コンディションも、沖縄育ちの比嘉には慣れっこだ。「風が吹いたら私の日」。1番をボギーで出たが、3バーディーを奪い返して首位に並んだ。
■自分信じる心の強さ
プレーオフで言い聞かせたのは「絶対に自分を曲げない」。苦い教訓があった。前年10月の富士通女子。ふだんならティーショットを刻まないホールで刻んでボギーをたたき後半失速、初優勝の好機を逸した。
だから「相手のことは意識せず、自分のプレーに集中する」と心がけた。武器は飛距離。プレーオフの18番(パー5)でもあくまで2オン狙い。
2ホール目で第2打がバンカーにつかまったが、1メートル強に寄せてバーディー。テレサ・ルー(台湾)と大江香織を退けた。
6月に2勝目を挙げ、全英出場の目標もクリア。「歴史あるセントアンドルーズで思いっきり楽しんでできた。かなりの自信になった」。11年、英ロイヤルリバプールで行われた大会で初日90をたたいたとは思えない奮戦だった。
■人に頼らず客観的で冷静
自分を信じる。心の強さは日本女子プロ(北海道・恵庭CC)でも印象的だった。プレーオフ6ホール目でイ・ボミ(韓国)に屈し、史上初の10代での国内メジャー制覇を逃したが、敗戦につながった「池ポチャ」に悔いはない。
「一生懸命やった。結果は満足ではないけど受け入れようと」。グッドルーザーは一見、ふてぶてしく見えるほど精神的にタフである。
1年前から指導しているトレーナーの佐保豊は「運動神経が良く、体の使い方がうまい」こと、さらに「メンタリティーの強さ」を長所に挙げる。「人に頼らず客観的で冷静に考えている」
小学1年のときに兄を、高校3年だった11年6月には父の宏さんを亡くした。3人きょうだいの末っ子は、初優勝時も涙を見せず「つらいことがありすぎて……。(プロ入り後は)母と姉を支えたいという気持ちが強くなった」と気丈に語った。
(敬称略)
〔日本経済新聞夕刊1月27日掲載〕