マラソンレースでいつも30キロを過ぎたあたりからペースダウンしてしまう。もっと練習で20キロや30キロといった長い距離を走るのを増やしたほうがいいのだろうか?――そんなことはありません。むやみに距離走の頻度を上げても体にダメージが蓄積し、レースで力を出し切れず逆効果に終わってしまいかねないからです。単純に長く走るだけではない変化をつけた練習メニューで、レース終盤の粘りを身につけましょう。
■練習でのケガやブランクを避ける
耐久競技であるマラソンは、球技などのように「練習でできないことは本番でもできない」という考え方は当てはまりません。例えばゴルフのショット、テニスのサーブ、バスケのフリースロー、あるいはフィギュアスケートの回転など、短い時間に集中して動き、結果が表れるものとは性格が異なるといえます。
より本番に近い形の練習をしなければと考えて、20キロや30キロの長い距離をレース設定に近いペースで走ることを繰り返していては、体にダメージを残し体力を消耗させてしまいます。ケガのリスクを高める恐れもあります。長い距離を走り切った達成感は得られても、その練習がレースで発揮される力につながるかは疑問です。
もちろんこうした距離走を適度に取り入れることで、距離感覚やペース感覚が磨かれる、精神力が鍛えられるといったメリットがあります。呼吸が荒くならずに余裕を持って走り続ける能力を高めることができ、実際のレースペースでの走り「スピード持久力」が備わります。レースの3~4週間前に30キロ走を一度済ませておくといった練習も有効です。
しかし、仮に練習で本番に近い40キロをレース設定ペース通りに走り切れたとしても、その負荷が高すぎるために、次の日以降は練習のブランクが長くなってしまったり、体を傷つけるだけに終わってしまったりするケースがよくあります。
40キロを気持ちよく走るのはレース当日まで残しておくようなトレーニングの進め方をすべきだと思います。控えめの距離設定と控えめのペース設定で、ペースを上げたい気持ちを我慢して抑え気味に走り続ける練習メニューをこなしていくことが大事です。
■30キロ地点の体の状態つくり出すメニュー
宇宙飛行士が出発前に宇宙でトレーニングすることはないですよね。プールの水中で無重力みたいな状態をつくり出して訓練したり、シミュレーターで実際の操縦を模して訓練したりしている映像をよく見ます。
フルマラソンも実際に40キロを走ることがすなわち対策練習ということにはなりません。適度な負荷で、複数回の練習を通して体をさいなむのです。やがて体はレースの30キロ地点に似たような疲弊した状態になります。
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