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ベール脱いだLINE MALL スマホECの本命へ

 無料通話・チャットアプリで世界3億人、国内5500万人超の会員を抱えるLINE(東京・渋谷)がEC(電子商取引)の新アプリ「LINE MALL(ラインモール)」の配信を始めた。急成長するスマートフォン(スマホ)向けEC分野への参入を表明してから丸4カ月。楽天やヤフー、アマゾンを脅かす存在になるのでは、と臆測を呼ぶ一方、同社幹部は「詳細はリリースまで非公開」と黙して語らなかった。ようやくベールを脱いだLINEのEC。戦略を森川亮社長に聞いた。

「僕らが目指しているのはコミュニケーションとECを結びつけたようなサービス。売りは、すてきな商品、そしてそれらを販売する人との出会いを通じて、共感や感動体験でより深くつながっていくような、スマートフォンらしい新しいショッピング体験です」

LINE MALLのリリース直後、LINEを率いる森川社長は、新サービスをこう表現した。

12月20日、LINEはアンドロイドOS端末向けのLINE MALLを配信、サービスを開始した。iOS端末向けは米アップルの年末休暇で年内に間に合わなかったが、年明けにも開始される見込みだ。ようやく姿を現したLINE流のECは、具体的にどんなサービスなのか。実際にアプリを使ってみた。

新品・中古が混じった「フリーマーケット」

アプリをダウンロードして開く。利用に際し改めて会員になる必要はなく、LINE認証の確認画面でタップするだけ。中に入ると、女性向けファッション関連の商品が目立っていた。

「ef-de」「5000円」と書かれた薄いピンクのワンピースをタップすると、タグなどを拡大した別カットの写真とともに、商品情報が出てくる。「商品の状態」は「中古(非常によい)」で、送料込みの値段だ。旧来型のECモールやオークションサイトでは購入者が送料を負担することが多いが、ここではすべての商品が送料を含んだ販売価格となっている。

ワンピースの売り主は若い女性。そのページを見ると、衣服のほかにバーバリーのハンドバッグやウールのマフラー、オーガニックのシャンプーなど、女性が好みそうな商品を新品・中古あわせて120点以上も出品していた。上部のハートマークの横には「15」。ほかのユーザーから「お気に入り」された数だ。ショップを見ているというよりは、その女性のワードローブをのぞいているような感覚。「フリーマーケット」のアプリといってもよい。試しに出品もしてみた。

オークションサイトのように、何を出品してもよい。選んだのは本。出品の画面はシンプルに1ページ。写真を撮り、カテゴリを「本」とする。商品名、販売価格、状態、配送方法をそれぞれ選択。任意の販売価格を入れると10%を引いた販売利益が表示される。これが「手取り」だ。あとは出品ボタンを押すだけ。わずか2分程度で売り主になれた。

「商品数や安さを売りにしたサービスではない」

買うのも売るのも、とにかくシンプルでカジュアルという印象。同じECでも旧来型のECとは一線を画する。ただし、LINE MALLがキラ星のごとく現れた斬新なサービスかというと、そうではない。森川社長はこう説明する。

「これまでのECはとにかく商品がたくさんあって検索をして見つけて買うという指名買いのようなもの。ただ、最近のソーシャルコマースというかスマートフォンのECはどちらかというとセレクトショップに近いような、売り手側の思いを伝えるようなもの。出会い感というんですか、出合い頭でいいと思ったら買うような、そういうスタイルも広がってきている。LINE MALLもその方向で、商品数や安さを売りにしたサービスではない」

LINE MALLは一見、「Fril(フリル)」や「メルカリ」といったスマホ向けの新興ECアプリとよく似ている。利用シーンに加え、ファッションから食品、電気製品まで、新品と中古が幅広くそろう様は「ヤフオク!」を想起させる。出店者側からすれば昨年から急速に勢力を拡大している「STORES.jp」や「BASE」といった出店料・手数料無料の「新興ECモール」とも似ている。

共通していえるのは、誰もが手軽に売り手になれる「CtoC(消費者から消費者)」を基軸としたECであるということ。LINE MALLは新興のECアプリ・モールを意識しているのか。あるいはヤフオク!が競合となるのか。森川社長に突っ込んだ。

「どこかと戦うとか、倒すということではなく、一連の文脈の中で出てきたサービス。僕たちは、マップを作ってここが空いているから取りましょうとか、大きいからここを狙いましょうという仕事の進め方をしていないんですね。もちろん、似たようなサービスを参考にはするけれど、特定のどこかを意識してサービスを作っているわけではない」

旧来型ECの領域もカバー

質問は不発に終わった。そのはず、LINE MALLがぴたりとはまる既存サービスはない。個人が露店を並べるフリーマーケットの合間に、旧来型ECで販売してきた伝統的な企業も出店を構えるから、なおさらだ。

現状、売り手は圧倒的に個人が多いが、中には「BtoC(企業から消費者)」も混じっている。食品スーパーの成城石井はワインやチーズなどの食品を、古着のセレクトショップを展開するRAGTAGはブランド品の古着を、丸善&ジュンク堂ネットストアはコミック全巻などを販売している。

これらは、LINE MALLの「公式ストア」。ただし、商品一覧で公式ストアが目立っているわけでもなく、公式ストア一覧があるわけでもない。あくまでLINE MALL上での扱いは個人と並列。このBtoCついて、森川社長はこう話す。

「B(企業)もC(個人)も関係なく、価値のあるものを買えるという体験が大事。BもCも関係なく価値のあるものが生き残る。そういう時代なんだと思います。ただ、やってみて今後、見せ方は変えていくかもしれない。それも兼ねたテストという意味合いもある」

企業出店が増えるのは来春以降

森川社長がテストと話すように、LINE MALLがその全貌を見せたわけではない。今回はあくまで「プレオープン」。メディア向け説明会など本格的なお披露目は、来春に予定している「グランドオープン」の際に行う計画だ。

グランドオープンで大きく変わるのは、公式ストアの拡充。現在、販売している公式ストアは、BtoCのテスト販売に協力するごく一部の企業に限られ、来春のグランドオープン以降、順次、公式ストアを増やしていくという。森川社長いわく「企業さんから出店したいというお問い合わせがかなりきている」ということだが、「スタンプ」の始まりがそうだったように、しばらくは待たされることになるだろう。

販売形態も、現状のままとは限らない。LINE全体が「常に走りながら考えている」(舛田執行役員)というように、LINEにとって完成形はない。森川社長は今後の展開をこう語る。

「まずはECにフォーカスした。(今後、たとえば)オークション機能を付けるかもしれないし、付けないかもしれない。もしかしたら企業の方は、LINE向け専用商品の開発をするかもしれない。ただ、まだまだECに抵抗がある人もいると思うんですよ。本当に利用者がいい商品を出し続けてくれるのか。あるいは怪しい人や企業が混じってくるかもしれない。なので、まずは安定的に安心できるものからスタートして、そこから進化させていく考えです」

LINE本体とは別の関係性を構築

現在は、LINE本体の友だち関係とLINE MALL内でのコミュニケーションは切り離されているが、これも変わる可能性がある。

「LINE POP」や「ポコパン」といった人気のLINEゲームでは、LINEの友だちと点数を競ったり、協力しあったりすることができる。LINEの関係性を持ち込めることが人気の要素にもなっていた。しかし、LINE MALLでは現状、LINE上の関係性を持ち込むことはできない。

商品や出品者をお気に入りに入れたり、商品のコメント欄を通じてやりとしたりするコミュニケーション機能はあるが、LINEとは別。ログインはLINEのIDを使うが、LINE MALL上での表示名は新たに設定する。LINEの友だちに出品していることを知らせたい場合は、別途、LINEのタイムライン機能やトーク機能を使って通知しなければならない。

「何を出品しているか見られたくない人もいるので、あえて分けている」(広報担当者)。ただし、「これも、やりながら考えていく」(森川社長)。今後はLINE MALL内でLINEの友だち関係が利用できるようになる可能性もある。

LINE上では、数百万人の友だち(フォロワー)を抱える企業の公式アカウントが続出しており、小規模な店舗が商用利用できる「LINE@」の利用も進んでいる。これらとLINE MALLの連携は現状ゼロだが、これも今後、かかわってくると見られる。

初心者層から一気に市場を寡占

つまり、LINE MALLにはまだまだ発展・進化の余地が残されている。すでに操作性やコンセプト、扱う商品の幅などで、新興ECアプリや新興モールに並んだといえる。新興勢が勝っているのは始めた時期くらいだが、LINEが逆転不可能なほど、圧倒的な市場シェアを抑えたところはない。

背後に抱える会員基盤や企業利用の実績ではヤフーなど老舗EC勢にひけをとらない。個人出品の利用が進めばヤフオク!に影響が及ぶのは必至で、企業出品の利用が進めば楽天など巨大ECモールにも少なからず影響が及ぶだろう。森川社長はいう。

「我々のサービス投入はちょうど新しい市場が盛り上がってきたタイミングであり、決して早いわけではない。あとから出すからには一番いいサービスを出さなければいけない。ただ、機能が多ければいいサービスなのかというと違うところもあって、使いやすさや本当に欲しい商品があるかどうかが重要。誰でもすんなりと入りやすいサービスを目指します」

LINE以前に「カカオトーク」など同様のアプリはあったが、LINEは市場の黎明(れいめい)期に初心者層を意識した高品質のサービスを出し、後発ながら一気に市場を占拠した。中高生や主婦層などのライトユーザーかつボリュームの大きいすそ野から広まり、フェイスブックやツイッターを初期から使いこなしていたコア層にも、いつしか浸透していった。

LINEでやってのけた偉業の再来をECでも果たすか。実績を見るに、その可能性は高い。

(電子報道部 井上理)

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