税の申告漏れ防止を目的に今年末から、国外に5千万円を超す財産がある人は国外財産調書の申告が義務付けられる。今年分の提出期限は来年3月17日。税務当局は調書をどう使うのか。個人はどう対応すればよいだろう。
「取引相場は4千万~5千万円台と幅がある。申告すべきか」。米国のハワイにコンドミニアム(分譲マンション)を持つ神奈川県在住の吉田伸二氏(仮名、60)は悩んでいる。
■戸惑う富裕層
国外財産はコンドミニアムだけ。老後をハワイで過ごそうと思い1998年に約1億円で購入。2008年のリーマン・ショック後、価格は大幅に下がったという。ところが最近、顧問税理士から国外財産調書の申告制度が始まることを聞き、調べてみると申告が必要か微妙な水準。目下、税理士と対応を相談中だ。
「国外に持つマンションは来年売るのに……」とぼやくのは東京都に住む香山忠氏(仮名、66)。東南アジアで人材派遣業をしており、現地に事務所(事業用不動産)と滞在用マンションを保有する。資産価値は5千万円を超えるが、マンションは相場が上昇したので売ることにした。売却益を確定申告をするので、調書の提出は不要と思っていたが、税理士から「年末時点で持っているなら申告を」と説得されている。
国外財産調書制度の始動を控え国外に財産を持つ人たちが対策に動き始めた。同制度は年末に5千万円を超す国外財産がある個人に種類や価額を税務署に申告させるもの(表A)。近年増えている国外財産の申告漏れ是正が目的だ。