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鮮魚、焼酎… 「うま味」引き出す熟成ビジネス
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2013/11/18 3:30
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海中のゆらぎ、凍る一歩手前の温度、音楽の振動――。様々な外的環境を使って食品を熟成させる取り組みが広がりをみせている。食品を一定期間寝かせて、うま味や甘味などを上手に引き出す。食材の虚偽表示が相次ぎ問題となる中、手間ひまをかけてつくりあげた美味が、成熟した食市場で消費者の心をつかんでいる。

■氷温×鮮魚

氷温とはセ氏0度から食品が凍る一歩手前までの温度。氷温を保つために開発された「氷温ジェルアイス」が鮮魚の輸送に利用されている(鳥取県米子市の氷温協会)

氷温とはセ氏0度から食品が凍る一歩手前までの温度。氷温を保つために開発された「氷温ジェルアイス」が鮮魚の輸送に利用されている(鳥取県米子市の氷温協会)

氷温ジェルアイスの直径は0.1~0.5ミリと細かく球状。海水から作られ、塩分濃度の調節で細かな温度設定ができる

氷温ジェルアイスの直径は0.1~0.5ミリと細かく球状。海水から作られ、塩分濃度の調節で細かな温度設定ができる

水はセ氏0度で凍るが、果物や肉、魚など食品はセ氏0度を少し下回る温度域で凍る。個々の食品が凍る一歩手前の温度域を使って食品を熟成させる技術を「氷温熟成」と呼ぶ。有害な微生物の働きが抑えられ、寒さというストレスが加わることでうま味や甘味が引き出されるという。

鳥取県米子市の「氷温協会」では、「氷温ジェルアイス」という海水で作られたシャーベット状の氷を開発し、海産物を輸送しながら熟成させる技術に使い始めた。通常の氷に比べて粒が細かく、食品全体を速いスピードで冷やすことができ、塩分濃度を微調節することで魚種ごとに適した熟成温度をつくり出せるという。氷温協会では氷温熟成技術の普及を進めており、今まで600品目以上の食品が同協会の指導のもと全国の企業から販売されたという。県特産の松葉ガニを生のまま熟成輸送させる試験を現在行っている。

約マイナス1度の氷温庫で貯蔵されるブドウ。氷温熟成は、もともと特産の果物を冷蔵で長期貯蔵する研究の過程で生まれた技術だ(鳥取県米子市の東亜青果)

約マイナス1度の氷温庫で貯蔵されるブドウ。氷温熟成は、もともと特産の果物を冷蔵で長期貯蔵する研究の過程で生まれた技術だ(鳥取県米子市の東亜青果)

氷温熟成技術の普及をはかる「氷温協会」に認定された食品のパッケージ。加工食品を中心にコメ、酒、果物など累計で600品目以上に達した(鳥取県米子市)

氷温熟成技術の普及をはかる「氷温協会」に認定された食品のパッケージ。加工食品を中心にコメ、酒、果物など累計で600品目以上に達した(鳥取県米子市)


■海底×泡盛

沖縄本島東海岸沖、水深約18メートルの海底に並ぶ泡盛の一升瓶。漁師でダイバーの玉栄将幸さんは、ダイビング客らとの晩酌を楽しむために15年ほど前から海底貯蔵を始めた

沖縄本島東海岸沖、水深約18メートルの海底に並ぶ泡盛の一升瓶。漁師でダイバーの玉栄将幸さんは、ダイビング客らとの晩酌を楽しむために15年ほど前から海底貯蔵を始めた

「沈没船から引き揚げられた酒は味がいい」。海と酒にまつわるエピソードを再現しようと、沖縄県うるま市のダイビングショップ経営者、玉栄将幸さんは泡盛の海底貯蔵を行っている。沖縄本島の東海岸沖、水深約18メートルの岩陰に100本あまりの一升瓶が並ぶ。海中の波動で瓶がゆったりと揺れ、アルコールと水の分子がうまく合わさり味がまろやかになるという。

海底で酒を貯蔵し熟成させる取り組みが各地で盛んだ。沖縄県本部町の「琉宮城蝶々園」では、同様の手法で熟成させた泡盛を特産品として販売、古酒のような味わいに観光客の人気が集まっている。相模原市の酒類販売会社「コモンセンス」は、静岡県南伊豆町の沖合の海底で7カ月間寝かせた赤ワイン6000本の販売を今月から開始した。事前に行われた試飲会でも「角がとれて口当たりがなめらか」と評判は上々だったという。「海のゆりかご」が生んだ美酒が人々を酔わせている。

海底貯蔵の泡盛で作った梅酒などを飲みながら、ダイビングで出合った生き物を振り返る。沖縄の海を知り尽くした玉栄さん(左から2人目)の話に花が咲く(沖縄県うるま市のダイビングショップ「マリンスペース」)

海底貯蔵の泡盛で作った梅酒などを飲みながら、ダイビングで出合った生き物を振り返る。沖縄の海を知り尽くした玉栄さん(左から2人目)の話に花が咲く(沖縄県うるま市のダイビングショップ「マリンスペース」)

同県本部町の観光スポット「琉宮城蝶々園」が販売する泡盛の海底貯蔵酒は、2002年に「日本おみやげアカデミー賞」グランプリを受賞。瓶にサンゴなどの海中生物が付くことも付加価値の一つだ

同県本部町の観光スポット「琉宮城蝶々園」が販売する泡盛の海底貯蔵酒は、2002年に「日本おみやげアカデミー賞」グランプリを受賞。瓶にサンゴなどの海中生物が付くことも付加価値の一つだ


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