/

COP延期が問う環境戦略 コロナで脱炭素は進むか

Earth新潮流

第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)の開催が、2021年11月1~12日に決まった。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、1年延期した。この時間を温暖化ガスについて、より「野心的」な削減目標の設定を検討できる好機ととらえるか、削減機運をそぎかねない足踏みの期間とみるか。受け止め方の違いは今後の戦略を左右する。

次回のCOP26は21年11月の開催に延期された(19年の会場風景)=ロイター

「今こそグリーン・リカバリーを」。欧州連合(EU)は新たなスローガンを掲げ、新型コロナで深刻な打撃を受けた経済の回復を環境重視で進める方針を鮮明にする。規制強化で企業活動を縛るのではなく、環境関連産業の育成と新市場の開拓を加速する狙いだ。

COP26は20年11月に英国で開催し、温暖化ガス削減の国際枠組み「パリ協定」の本格始動を確認しあうはずだった。議長国の英国はパリ協定に基づき、各国が提出済みの30年頃にかけての削減目標を引き上げるよう求め、気候変動対策に弾みをつけようとしていた。

だが、目標引き上げに応じるとしていた国や地域はわずかで、英国の力量不足が問われる可能性もあった。EU内にもパリ協定は幸先の良いスタートを切れないと懸念する声があった。コロナは結果的に、一層の削減努力を検討する時間的猶予を与えてくれたとも受け止められている。

欧州委員会は5月下旬、総額7500億ユーロ(約90兆円)にのぼるEUの経済復興計画案をまとめた。修正される可能性もあるが、約4分の1が温暖化対策などの環境関連投資に振り向けられるとみられる。

□ ■ □

EUは19年、温暖化ガス排出を50年に実質ゼロにするための包括的な環境政策を「欧州グリーンディール」として発表。30年に50~55%減らす新目標も検討中だ。21~27年の国際研究開発プロジェクト「ホライズン・ヨーロッパ」が研究や技術革新を担う。復興計画の一部は同プロジェクトにも回る。

一方、「環境対策どころではない」と温暖化対策を含む環境規制の緩和に動くのが米国だ。20年6月、トランプ大統領は高速道路やパイプライン建設の際に必要とされる環境評価を省く大統領令に署名した。こうした動きはコロナ危機を口実にさらに加速しそうだ。

では、日本はCOP26の開催延期をどう見ているのか。環境省の瀬川恵子審議官は「(目標引き上げなど検討の)余裕ができたというよりは悲観的な感触だ」と打ち明ける。「コロナ対策の経済措置がとられる結果、資金や施策が温暖化対策に回りにくくなる可能性がある」

小泉進次郎環境相はCOPの延期によって「対策の空白を生じさせてはいけない」と話す。9月にもオンラインの閣僚級国際会議を開催しようと各国に呼びかけている。国連気候変動枠組み条約事務局のエスピノーサ事務局長らが歓迎の意向を示したが、国内の反応は盛り上がりに欠ける。

新型コロナの拡大で世界経済が失速した結果、温暖化ガスの排出量は大きく落ち込んだ。国際エネルギー機関(IEA)は20年1~3月期の実績などから、20年の世界の温暖化ガス排出は19年比で8%減ると予測する。リーマン・ショック時を上回る減少幅だ。

□ ■ □

温暖化ガス研究・調査の国際計画グローバル・カーボン・プロジェクトがネイチャー・クライメート・チェンジ誌に5月に発表した論文では、1日当たりの温暖化ガス排出は4月に19年比で約17%減ったという。

だが、最新調査では6月上旬には約5%減まで戻した。大都市のロックダウン解除などの影響とみられている。振り返ればリーマン・ショックの際も、09年に排出量が大きく減少した後、10年には過去最高水準にリバウンドしている。

感染を防ごうと電車を避け、自家用車で通勤する人が増えればガソリン消費量を押し上げる。在宅勤務が進むと家庭用エアコンなどによる電力消費が増える公算が大きい。新しい生活スタイルは必ずしも脱炭素を意味しない。コロナ禍の中でも排出を低いままに抑えるのは、かなりの痛みを伴う可能性がある。

(編集委員 安藤淳)

[日経産業新聞2020年6月30日付]

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

日経産業新聞をPC・スマホで!初回1カ月無料体験実施中

 スタートアップに関する連載や、業種別の最新動向をまとめ読みできる「日経産業新聞」が、PC・スマホ・タブレット全てのデバイスから閲覧できます。直近30日分の紙面イメージを閲覧でき、横書きのテキストに切り替えて読むこともできます。初めての方は1カ月無料体験を実施中です。

詳細はこちらから

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン