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トーナメントへようこそ プレジデンツ杯誘致 韓国に後れ取った日本

日本ゴルフツアー機構(JGTO)専務理事 山中博史

男子ゴルフの米国代表と欧州を除く世界選抜チームの対抗戦、プレジデンツ・カップが10月3日から6日まで米オハイオ州のミュアフィールドビレッジGCで開かれ、日本からはルーキーの松山英樹が出場しました。試合は18.5-15.5で米国代表の8度目の勝利。松山は1勝3敗1分けでしたが、タイガー・ウッズとの対戦など、これから米ツアーで戦う上で良い経験になったと思います。

次回プレジデンツ杯、韓国で開催

プレジデンツ杯は、1994年からライダーカップ(米国と欧州の対抗戦)の開催されない年に開かれており、次回2015年は韓国での開催が決まっています。ゴルフに関する限り、日本より後発である韓国が一足先にプレジデンツ杯を開催することについて、ちょっと違和感を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。開催に至る経緯をご紹介しながら、日本のゴルフを取り巻く環境について考えてみたいと思います。

実は日本もプレジデンツ杯誘致に動いたことがあります。09年大会(米サンフランシスコ)のときに試合を主管している米PGAツアーに打診し、資料を取り寄せて研究、検討しました。招致マニュアルには会場となるコースの条件、ホテルの収容能力、都心からの距離などいろいろな条件が細かく示されていました。しかし、最終的にネックとなったのは開催国が負担する「15億円以上の巨額の開催経費」と「王(皇)室もしくは政府の全面的支援体制」の2点でした。

メリット感じられなかった日本企業

まず開催経費ですが、15億円というと国内トーナメントの3~4試合分に相当します。しかもプレジデンツ杯はスポンサー企業の冠大会にはできません。通常トーナメントではおなじみのプロアマ大会もありません。コーポレート(ホスピタリティー)テントや大会プログラム、場内の看板の一部に小さく企業名を出せる程度です。

これでは、これまで国内トーナメントでのスポンサーシップに慣れてきた日本企業にとって、スポンサーに名乗りを上げるメリットはほとんどありません。また11年には東日本大震災もあり、資金集めは困難だろうという意見も多かったのは事実です。

加えて、大きいのは国の支援体制です。これまで米国以外でプレジデンツ杯を開催した南アフリカ、オーストラリア、カナダは国がスポーツ振興に多くの予算を振り向けています。いずれの国でもスポーツ大会への支援は基本的に免税対象になります。当然、それ以外の部分でも、国としての支援体制も充実しています。これに対して日本はどうでしょうか?

国を挙げて誘致のムードにはならず

日本では国家公務員倫理規程で「たとえ割り勘であっても利害関係者とのゴルフは禁止」となっています。汚職報道では判で押したように「ゴルフ接待」が出てくるなど、社会一般にはゴルフに対して「プレーに名を借りた利害調整の場」「特権階級のぜいたくな遊び」という偏見が根強いように思います。

「ゴルフ場利用税」はその代表例でしょう。テニスや野球をしても税金はかかりません。ゴルフだけに税金がかかるというのは、戦前ならいざ知らず、日本経済・社会の現状を考えると違和感が残ります。これでは、とても国を挙げて(特に政府が中心となって)、ゴルフの試合誘致に動くというムードにはなりません。

韓国の取り組みはどうだったのでしょうか? 韓国はゴルフに関しては「日本に後れを取っている」という意識はあります。一方で、世界の舞台で活躍する選手を輩出してきたという自負もあります。米ツアーを見れば、女子は上位には韓国人選手がズラリ。男子も通算8勝の崔京周(K・J・チョイ)を筆頭に、09年全米プロ選手権でアジア人として初めてメジャーを制したY・E・ヤン、今年初優勝を挙げた裴相文(ベ・サンムン)らがいます。

ゴルフブームの起爆剤を狙った韓国

それだけに、韓国ゴルフ界は次のステップに踏み出す象徴として、国際大会を誘致することに力を入れていました。ちょうど1957年に日本で開催されたカナダカップ(現在のワールドカップ=W杯)がきっかけとなって、ゴルフブームが起きたように、韓国でのゴルフブームの起爆剤としたいという思惑もあったのでしょう。

韓国は政治、経済などで米国と深いつながりがあります。米政府、ホワイトハウスに太いパイプを持つ人たちが、いろいろな影響力を駆使したであろうことは想像に難くありません。国威発揚の一環として、政府もバックアップしたのでしょう。

さらに急速な経済発展に伴ってスポンサーも確保できたようです。財閥に象徴されるように、韓国企業のスポンサーシップについての考え方は、いろいろなステークホルダー(利害関係者)に配慮しなければならない日本企業とは異なります。それだけに、企業としては思い切った投資ができるわけです。

広告効果限定、それでもスポンサーに

こうした背景を踏まえて、今回のミュアフィールドビレッジでの大会を見てみると、いろいろ考えさせられるシーンがありました。

スポンサー(大会ではグローバルパートナーという位置づけ)はシティバンクとロレックスの2社だけでしたが、会場内で企業ロゴはほとんど見かけませんでした。プログラムの隅に小さく出ている程度です。当然、広告効果は限られています。それでも、彼らはプレジデンツ杯をスポンサーすることに、企業価値の向上やイメージアップ、企業メセナとしての意味を見いだしているわけです。そこには日本企業のスポンサーシップとは別の目的、意味合いが読み取れます。

さらに、大会初日には第43代のブッシュ前大統領が出席、開会式ではオバマ大統領もビデオメッセージを寄せました。オハイオ州知事も毎日のように会場に顔を見せました。それ以外にも政府や州を挙げて、プレジデンツ杯をサポートしている様子がうかがえました。日本ではなかなか考えられないサポートぶりです。

役者がそろえば日本でも観戦者来る

それでは、日本でプレジデンツ杯のような国際大会を開く可能性はどうなのでしょうか? 2001年に「日本ゴルフ100年祭」のメーンイベントとしてW杯を静岡県御殿場で開催した経験から「役者(選手)がそろえば、ギャラリーは来る」と断言できます。

御殿場ではウッズのほか、アーニー・エルス(南アフリカ)、レティーフ・グーセン(同)、セルヒオ・ガルシア(スペイン)ら、一流どころが顔をそろえました。メディアも大きく取り上げ、会場にはゲートオープン前から長い列ができました。試合の盛り上がりも、私たちの予想をはるかに上回るものでした。

日本には国際大会を開催できるコース、そしてクオリティーの高い運営などの条件はそろっています。実現するには、「世界の一流選手が出場する大会を日本で開こう」との声を日本のゴルファーの間で上げ、それを起点に大会誘致の機運を盛り上げていくことが必要だと思います。では、こうした機運を盛り上げるためには、どうしたらよいのでしょうか?

あくまで個人的意見で怒られそうですが、例えば日本のゴルフ振興のためゴルファーがラウンドするたびに10~20円ずつチャリティーする(年間7億~14億円が集まります)。その一部を、ゴルフ関連団体が取りまとめ役になって活用し、誘致ムードを盛り上げていく。これが企業の背中を押し、政治を動かして、日本全体としての支援体制を充実していく……といった流れができれば最高だと思います。

東京五輪のリハーサルでW杯誘致を

20年の東京オリンピックのゴルフ競技は、霞ケ関CCで開催されます。その前年、19年はW杯開催年に当たります。W杯は日本ゴルフツアー機構(JGTO)も加盟しているプロゴルフツアー国際連盟(通称フェデレーション)が管轄しているので、開催地選びでJGTOの意向を考慮する余地は大きい。しかも、出場資格はほぼオリンピックと同じですから、20年のリハーサルとしてはうってつけです。

国際大会誘致は単なるトーナメントにとどまりません。その国にどれだけゴルフが根付いているか、どのようなゴルフ文化が育っているかを世界にアピールするチャンスです。これは取りも直さず、日本を世界に売り込む場なのです。また、このような真の国際トーナメントを日本で開催することにより、日本のゴルフ界が大変な盛り上がりを見せることは必至です。

そして何よりも皆さん、世界のトッププレーヤーの本気プレーを目の前で見たいのではありませんか?

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