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スコアアップ工房 右に押し出しやすいパター、ソールもチェックを

クラブデザイナー 喜多和生

スコアをまとめるには、1メートル前後のパットはぜひとも決めたいところ。こうした場面で右に押し出したり、左に引っかけたりした経験はどなたもお持ちでしょう。「結果を見ようとして、ヘッドアップした。次は気をつけよう」と考える人がほとんどだと思います。しかし、実際にはパターのソール形状が原因で、ショートパットのミスを誘発しているケースが結構あるのです。

スクープ角が大きすぎるパターはアドレスでフェースが右を向いてしまう

パターヘッド、左に行かない工夫

ショートパットをしっかり打とうとすると、インパクトで力が入り左に引っかけやすくなります。数えきれないほどのゴルファーが繰り返してきたこのミス対策として、パターヘッドには左に行かない工夫が施されているのです。

パターを逆さにして、シャフトを垂直にフェースがスクエアになるように持って、ソールの角度をよく見てください。リーディングエッジから後ろに向けて、下がっているわずかな傾斜が確認できるはずです。これが引っかけを防ぐ工夫、スクープ角です。

その角度は1~2度とほんのわずかですが、この角度のおかげでフェースをスクエアに構えられるのです。いわゆる「ヘッドの座り」をよくするための先人の知恵です。

常識で考えると、シャフトとソールの角度が直角にできているパターの方が目標にスクエアに構えやすく、カップインの確率が高いように思えます。ところが、こうしたパターは引っかけを多発しやすいのです。なぜでしょう。

「スクープ角あり」と「スクープ角なし」のパターをそれぞれフローリングの床でソールしてみると、「あり」のパターはフェースが右を向きやすいのです。ところが実際にグリーン上でソールしてみると、まっすぐ構えられます。これはスクープ角がうまく働いて、グリーンの芝をクッションのように使って、フェースをまっすぐに向けているのです。

パターを逆さまにすると、目視でスクープ角がわかるパターも多い

「なし」のパターだとフローリングの上では真っすぐ構えられます。しかし、グリーン上では芝をうまく使えず、ストロークをするとき、ソールの後ろの部分が芝に当たって、フェースがかぶりやすくなります。それを避けようとゴルファーが無意識にアドレスを調整すると、地面とシャフトの角度やパターのロフト角が変化してしまいます。

スクープ角、地味なテーマでも重要

20年ほど前にNC(数値制御)のミーリングマシンでヘッドを削りだしたパターが流行したことがあります。こうしたパターの中には、シャフトとソールが直角になっているものがありました。「コンピューター制御」「フェース平面度が髪の毛の30分の1」などの宣伝文句で人気を集めましたが、やがて姿を消しました。

パターのスクープ角はそれほど重要なのです。パター1本1本にばらつきが出やすい半面、雑誌などで取り上げられることはほとんどありません。あまりに地味なテーマだからです。

構えたときにパターがどう見えるかを気にする人は多くても、わざわざひっくり返してソールをチェックする人がほとんどいないことも影響しているかもしれません。

シャフトを垂直にして計測すると、リーディングエッジ(右側)から後ろに向けての傾斜(スクープ角)がわかる

さらにアドレスの癖も影響します。ボールとの距離、パターをつり気味に構えるか、ハンドダウンで構えるか、利き目は右か左か……。いろいろな要素が重なり、ゴルファー一人ひとり違ったアドレスになっているのです。ですからそれぞれの癖に合わせて、パターを調整する必要があります。

ドライバーのシャフト選びには時間とお金を惜しまないゴルファーでも、パターは買ってきたものをそのまま使っているケースがほとんどではないでしょうか。おまけに「プロが使っている」「友人のパターを借りたらよかった」などの理由でパターを次々と買い替えていることも「パターのアドレスが決まらない」「自分のアドレスに合うようにパターを調整できない」などと"いたちごっこ"が続く一因でしょう。

スクープ角が大きすぎる場合は薄い鉛を貼って、ヘッドの座りを調整する

スクープ角が大きいために右に行くパターは、スクープ角の度合いを小さくします。その際、ソールが水平に近づくようにネックを曲げればスクープ角は小さくなりますが、このやり方では、さらに使いにくくなる場合があるのです。

薄い鉛、慎重に貼って対応

ネックを曲げてスクープ角を減らすと、ロフト角が増えてしまいます。スクエアにアドレスしたときのロフト角が最適だったのに、調整の結果、ロフト角が大きくなれば、ボールがインパクト直後に必要以上に持ち上げられ、転がりが悪くなってしまいます。当然、距離も合わなくなります。

どのくらいの厚さ、大きさの鉛を貼るかはパターによって異なる

スクープ角が小さすぎて左に引っかけやすいパターの場合、ネックで調整するとロフト角が小さくなり、今度は地面から十分にボールを持ち上げられなくなります。これもやはりボールの転がりが悪くなってしまいます。

ロフト角が変わらないようにスクープ角を調整するには、多少見栄えは悪くなるのを覚悟でソールに厚さ0.1~0.3ミリの薄い鉛を貼ります。スクープ角が大きすぎるならトレーリングエッジ寄り、少なすぎるならリーディングエッジ寄りに貼ります。どこに貼るのかも慎重に選ばなければなりません。

鉛の幅や長さも大切です。5ミリ単位でその人に合った最適サイズを決めます。「芝がクッションになるんでしょう? 0.1ミリの鉛でそんなに変わるんですか」という質問を受けますが、間違いなく変わります。ぜひ一度ご自身のパターのチェックと調整を体験してください。

 きた・かずお 1966年ミズノに入社、クラフトマンとして中嶋常幸、鈴木規夫、岡本綾子らトッププロのクラブを手がけた。90年にゴルフクラブ工房の「ジョイメニィー」を設立。「クラブがスイングを創る」をテーマにプロ担当経験を生かし、アマチュア向けクラブも製作する。92年に製作したドライバーがクラフトマンモデルとしては世界で初めて、英セントアンドルーズゴルフクラブにあるR&A(ロイヤル&エンシェント)のゴルフミュージアムに展示されている。

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