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「金」候補を発掘せよ 才能伸ばす試み着々

東京五輪 レガシー復興(5)

東京・荒川の水面をボートが疾走していく。11日に開かれた国民体育大会ボート競技会に出場した高橋かほ(17)が競技を始めたのは3年前。東京都のジュニアアスリート発掘事業に応募したのがきっかけだった。

競技歴3年で世界に飛び出す選手も(ボート女子の高橋かほ)

評価を参考、選手自身が1競技選ぶ

同事業は2009年度に始まった。運動能力の高い都内の中学2年を選抜し、ボートや自転車など7つの夏季五輪種目を体験させる。各競技団体の関係者が視察し、競技への適性を評価。それを参考に、選手自身が1競技を選んで高校から本格的に取り組む。

それまでバレーボールをしていた高橋だったが、「水の上をすいすい進むのが楽しくて」とボートを選択。ボート部のある本所高校に進学し、競技歴3年目の今年、世界ジュニア選手権に出場した。生まれ育った東京での五輪開催決定に心が躍る。「うれしかった。あと7年もあるので世界との差を埋めて、五輪に出たい」

自治体によるタレント発掘の試みは全国に広がっている。04年スタートの福岡県など12自治体が取り組む。日本スポーツ振興センター(JSC)によると、一連の発掘事業に参加したのは計1201人。なかでも国際大会出場までになったのが高橋を含めて13人。「これまで選手発掘は偶然に頼っていたが、同事業はそれを必然にする取り組みだ」と、全国の同事業を評価・分析するJSCの山下修平氏は語る。「こどものスポーツ体験の場が学校体育と部活動、民間クラブなどに限られていた現状では、ボートなど環境の整わない競技での才能発掘が難しかった」

競技の入り口、いかに広げるか

体操の内村航平、レスリングの浜口京子、重量挙げの三宅宏実……。近年の日本の五輪メダリストには2世選手が目立つ。生まれた時から競技環境に恵まれた2世選手にとどまらず、トップレベルへとつながる形で競技の入り口をいかに広げるか。「子どもたちが色々な競技と出会い、適性を発見する仕組みを20年五輪強化育成のひな型として残したい」と山下氏は意気込む。

日本オリンピック委員会(JOC)が08年から始めた、ジュニア期(中高生)の有望選手を集めて寄宿制で才能を伸ばす「エリートアカデミー」。第1期卒業生のレスリング・宮原優は世界選手権出場を決めるなど着実に成果を上げている。

閉ざされすぎた環境に置かない

もっとも、成功例ばかりではない。日本バレーボール協会が05年から始めた、有望な女子中学生を「東洋の魔女」の拠点となった大阪府貝塚市に集めて寄宿制で鍛えた「貝塚ドリームス」は12年度末で解散した。

スポーツカウンセリングを研究する大阪体育大の土屋裕睦教授は「1つの競技を幼少期から続けるのは、挫折した時のダメージが大きい」と指摘する。20年五輪へ、タレント発掘、英才教育の動きが一層加速しそう。「JOCがエリートアカデミー生を地元の中学、高校に通わせて一般社会との接点の場を確保しているように、閉ざされすぎた環境に子どもたちを置かないことが必要だ」と話す。

(田村城)

=おわり

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