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オン・ザ・グリーン 「うまくない」けど「強い」 19歳比嘉の不思議な魅力

ゴルフライター 月橋文美

史上最年少、10代での公式戦初制覇に王手をかけていた比嘉真美子(19)は、雨中のプレーオフで屈した。国内女子ツアーの今季メジャー第2戦、日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯。15日の最終日が中止となり、3日目まで通算11アンダーで首位に並んでいた韓国のイ・ボミ(25)との優勝決定戦のみを行う異例の展開となった。

6ホール目、比嘉はティーショットの"池ポチャ"からダブルボギーをたたき、ビッグチャンスを逸してしまった。大物感たっぷりの19歳は、果たして「強い」のか「弱い」のか。「うまい」のか「うまくない」のか。

悪天候で異例の優勝決定戦のみに

最終日、北海道・恵庭CC周辺の空には早朝から不吉な色の雲が見えていた。雷雲接近のため午前7時20分スタートの第1組からプレーが見合わされ、7時45分時点で1時間後の第1組スタートへ向け準備が始められた。しかし8時33分、再度スタートを遅らせることに。

結局、11時に悪天候のため最終ラウンドは競技中止。プレーオフによる優勝決定戦のみ決行のアナウンスが流された。プレーをするのは比嘉とイの2人だけ。コース整備可能と判断された15、16番の2ホールを使い、午後1時、3ホールストロークプレーのトータルスコアで競うプレーオフが始まった。

「スタートが見合わされていた時点で、プレーオフだけになる確率はかなり高いだろうと思ってました。説明を受けた瞬間『始まるな』と身が引き締まる思いがした」と比嘉。

両者譲らず、勝敗分けた6ホール目

16番パー3から15番パー4、そして再び16番へ。3ホールを両者パープレーで引き分けると、4ホール目からはサドンデス決戦に。両者一歩も譲らぬ戦いが急展開を見せたのは6ホール目、3度目の15番だった。

カップ位置が切り替えられ、左奥から右手前へ。それにともないティーグラウンドも3ヤード前に変更された。比嘉は「その前の2度目の15番で、ドライバーショットがフェアウエーを突き抜け、奥の池の手前ラフまで行っていた。そこまで行くとは思ってなかった。いつもより飛距離が出てしまっていて……」。緊張と興奮でアドレナリンが出ていたのだろう。奥の池までは255ヤードという計算だったという。今度は3番ウッドを握る。

ミスショットで池ポチャ、ダボたたく

しかし、この3番ウッドでフェアウエーに刻むはずのティーショットが左に曲がり、左の池へ。「ただのミスです。タイミングがちょっとズレてしまった」。残り155ヤードの位置にドロップして打った3打目もグリーンをとらえられず、さらにピッチングウエッジでチップインを狙った第4打はカップを大きくオーバー。結局ダブルボギー。イは手堅くパーをセーブし、勝敗が決した。

「クラブ選択に後悔はないし、昨日までの3日間も、プレーオフの6ホールでも、1打も悔いのあるショットは打っていない。どんなにいいプレーをしても、いい流れで来ていても、勝つ時は運を味方にしないといけない。今日のウイナーはボミさんでした」。比嘉は、最後は潔く勝者をたたえた。優勝決定のグリーン上でも、笑顔でイを祝福し「勝った人に心からの称賛を贈ることが、戦った相手のすべきことだと思うので」と語った。

賞金ランク5位も他の数字が伴わず

期待された史上最年少メジャーVへの挑戦は、10月第1週の日本女子オープンへ持ち越し。3年後のリオデジャネイロ五輪、7年後の東京五輪でのメダル獲得を目指してもいる。世界の頂点へ上り詰めるには「メジャーといわれる試合でしっかり勝ち抜くことが必要。それ以外でたくさん勝つことも大事だけど、大きな試合に照準を合わせていくのも欠かせない」と話す。

ところでこの飛ばし屋、データ面から見ると、かなり不思議なプレーヤーだ。国内女子ツアーの部門別ランキングから比嘉の名前を拾ってみると……。

賞金ランキング5位(日本女子プロ選手権前まで8位)、平均ストローク30位(同37位)、平均パット数16位(同21位)、パーセーブ率44位(同51位)、パーオン率33位(同38位)、リカバリー率63位(同68位)、平均バーディー数13位(同16位)。

今季2勝、今回の公式戦でもプレーオフ負けの2位という限りなく優勝に近い成績を出して賞金ランク5位に付けているのに、他の数字がまったく伴っていないのだ。

大きな飛距離と攻撃的プレーに魅力

逆に、この優勝で賞金ランクを19位から9位に上げたイは、平均ストロークで3位、平均パット8位、パーセーブ率とパーオン率1位、リカバリー率14位、平均バーディー数10位と、その安定した技術が数字によって裏付けられている。

比嘉は今季開幕前、「平均ストローク1位を狙いたい。そこを目指すことが1勝できるかどうかのポイントだと思う」と、度胸満点に話していた。しかし、現状はその目標とはかけ離れている。それでも1勝どころか2勝して、賞金女王すら目指せなくはない位置にいる。そんな本人は気づいている。「もっと安定したゴルフ、技術を身につけなければ」と。

アマチュア時代から培ったゴルフ経験値は高く、大きな飛距離と攻撃的なプレーは魅力的。バンカーショットやパッティングにも人並み外れたセンスを見せる。だが、数字は比嘉をまだ「うまい」と認めてはいない。それでも間違いなく今「強い」。面白いではないか。

「カッコよく思ってもらえるように」

日本女子プロ選手権の期間中、新人研修としてトーナメントの裏方業務をこなすルーキーたちを眺めながら、比嘉が言った。「1年前は私もあの中にいたんです。トップ合格できず、大会に出られなかった悔しさもあった。だけど、ロープの外から見るプレーヤーは本当にカッコいいって、心の底から思ったんですよ。だから、私が去年そう思ったように、今度は私がカッコよく思ってもらえるようになりたい」

東京五輪の主力選手候補は、今の「強さ」を磨きつつ、徐々に「うまさ」も自分のものにしていくに違いない。

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