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新・指導者像を探る 選手強化と一体で

東京五輪 レガシー復興(4)

日本列島を熱狂させた1964年東京五輪女子バレーの金メダル。変化球サーブや回転レシーブの新技を編み出し、ソ連を倒した「金メダルポイント」のテレビ視聴率は66.8%に達した。肥大化した「東洋の魔女」伝説が、日本のスポーツ界に及ぼした影響はあまりに大きかった――。

「コーチをコーチする」

「アスリートに努力を求めているみなさん自身は、よきコーチになる努力をしていますか」。今月4日、東京・大田の日体荏原高校。日体大でコーチング学を研究する伊藤雅充准教授が各部活の顧問ら約50人に問いかけた。

大阪市立桜宮高校バスケットボール部員の自殺や女子柔道日本代表チーム内のパワハラなどスポーツ指導者をめぐる問題が次々に顕在化している。「コーチング学の研究者として責任を痛感している」という同氏はこんな活動に打ち込む毎日だ。「コーチをコーチする」

この日は系列高校に出向き、指導者による選手への過干渉には全く効果がないと説いた。一例として、体罰や暴言などの「ムチ」はもちろん、指導者が選手に報酬を与える「アメ」も悪影響を及ぼしかねないという研究結果を紹介した。

「コーチが報酬を与えると、報酬そのものがアスリートの目的となって意欲が失われる。一般にはあまり知られていないが、コーチング学においては有名な事象です」

上下関係の原点、64年大会に

「正確な知識があれば、体罰や暴言が指導に介在することはあり得ない。選手に努力を求めながら、自らはこういう知識を習得する努力をしない指導者は即刻やめるべきだ」

指導者が絶対的存在に位置付けられる日本のスポーツ界。体罰問題の温床ともいえるこの上下関係は、どう形成されたのか。

「原点は64年の東京五輪にある」。こう指摘するのはスポーツ倫理学を研究する早大スポーツ科学学術院の友添秀則教授。東京五輪に向けた選手強化の方針が「根性づくり」とされ、根性を養成するための科学的な研究もなされた。出た結論は「猛練習が根性を育む」。根性づくりのテキストも選手に配布されたという。

日本は1大会としては今なお最多タイの16個の金メダルを獲得、根性主義は成果を上げた。「その象徴が、突出した猛練習で金メダルに輝いた女子バレー。あれは社会現象になった」と友添教授。

指導現場、猛練習と体罰を混同

さらに五輪直後から、ときに暴力を行使するスパルタ指導者によって鍛えられていく選手の物語を描いた漫画やドラマが相次ぎヒットした。「これが猛練習と体罰の混同を招き、学校の部活動の指導現場にまでまん延した」と同教授は分析する。

当時形成された価値観が半世紀近くも日本の指導現場を支配した。これも五輪が有するパワーゆえのこと。友添教授は2度目の五輪に期待する。「価値観は時代とともに変わる。20年五輪が国際基準の指導体系を根付かせる機会になれば」

増額が見込まれるスポーツ関連予算の一部を、指導者がコーチング学を学べる環境整備に充てるべきだと語るのは伊藤准教授。選手強化と指導者教育の両立が、2度目の東京五輪の勝利の方程式となる。

(田村城)

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