オリラジを「一発屋」から救った、ある大物の金言
ネット興亡記主演・藤森さん対談

杉本 貴司
編集委員
2020/5/30 2:00
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日経電子版の連載「ネット興亡記」が動画配信サービスParavi(パラビ)でドラマ化され全5話が出そろった。ドラマで主演をつとめたオリエンタルラジオの藤森慎吾さんは、新型コロナウイルスでテレビ出演が激減。一方でユーチューブで盛んに発信し始めた。生き残るためには「形を変えてがむしゃらに作り続けないと」。そう考えるきっかけは、大先輩である明石家さんまさんのある言葉だった。

コロナ禍でテレビの仕事は激減したという

コロナ禍でテレビの仕事は激減したという

■テレビの仕事、激減した

「コロナ禍が明けたら淘汰が始まりますよ。この状況で何ができるのか、自分で考えて発信している人が残っていく」

藤森さんの口からシビアな言葉が発せられたのは、26日に開かれたドラマの記念イベントの場。藤森さんはUSEN-NEXT HOLDINGSの宇野康秀社長やサイバーエージェントの藤田晋社長とともに登壇した。

「今は暗闇の中という芸人がたくさんいるんですよ」。芸能人にとってテレビで活躍することが成功の証だという常識は変わり、今ではインターネットの動画配信サービスがもうひとつの主戦場となっている。その流れを加速させるのが、新型コロナウイルスだ。感染拡大が始まってからというもの、「テレビでの仕事が激減した」という。そこで他の有名人も続々とユーチューブにチャンネルを開設している。

「コロナ禍が明けたら淘汰が始まりますよ」と話す

「コロナ禍が明けたら淘汰が始まりますよ」と話す

■いまは「長めのオーディション」

だが藤森さんは「有名な芸人でも登録数が全然伸びないことがある。これをやれば安泰というものはない。僕も心が折れそうになることがあります」と話す。そこではテレビで培った戦い方がそのまま通用するとは限らないのだ。

「今までだと『しょせんユーチューバーでしょ』という考えの芸人が多かった。『テレビに出ても面白いの?』と。でも、もうそんなことを言っている時代じゃない。それを言ったら負け。現実を受け止めないといけない」

藤森さん自身も淘汰のはざまにいる、という認識だ。このコロナ禍の期間は「長めのオーディションだったという気がするんです」という。そこでどう行動したかで、今後の勝敗が分かれると冷静に見る。

■テレビでできないことも

ユーチューブでは「テレビでお届けできないコンテンツ」をあえて打ち出し続けて、何が視聴者の心を捉えるのか、日々分析し続けている。壇上の宇野氏や藤田氏も大きくうなずいた。テクノロジーの進化を先読みして生き残りの道を探るITビジネスに通じるのかもしれない。

ましてやタレントの世界は一人ひとりがベンチャー企業のような思考が求められるという。生き馬の目を抜くような激しい競争を勝ち抜けるために求められるのが、マインドセットの切り替えだ。

■相方の衝撃的なひと言

影響を受けたのが、オリラジの相方である中田敦彦さんの存在だ。

「俺はもうテレビ(の仕事)をやめる」

ある時、藤森さんにこう告げたという。「かなり衝撃的なひと言でした」。それからはコンビで出演していたテレビの仕事も藤森さんが一人で受け持つようになった。その一方で、中田さんの「YouTube大学」は大ヒットする。現在に至るタレントのユーチューブ参戦という流れを切り開いたパイオニアと言える。

※対談のアーカイブはこちらから視聴いただけます。https://channel.nikkei.co.jp/e/douga_talk0526

■オリラジの原点

時代の変化に挑む戦略の原点は、駆け出し時代に味わった栄光と挫折にあった。

オリラジは学生時代に自動車保険の夜間コールセンターのアルバイトで知り合った中田さんと藤森さんが結成したコンビだ。吉本興業のNSC(吉本総合芸能学院)に在籍中、早くも「武勇伝」のネタで大ブレークを果たす。先輩芸人を飛び越えてテレビの人気者となったが、藤森さんは「あれはラッキーパンチでした」と振り返る。

藤森さん本人も「いずれ飽きられる」と予想したというが、これが残念ながら的中してしまう。3年後には冠番組だけでなくレギュラー出演もゼロに。この間、「武勇伝の次」を見据えて100本のネタを考えたというが、これがことごとく当たらない。そこで武勇伝に戻ると一発屋への道をたどってしまう。「(武勇伝に)戻れば地獄というのは分かっていました」

トークイベントで宇野USEN-NEXT HOLDINGS社長(左)と

トークイベントで宇野USEN-NEXT HOLDINGS社長(左)と

■一発屋の恐怖

その後は一発屋として消えていく焦りを抱えながら、キャラ作りを繰り返しては外すという負のサイクルが続いた。そして再ブレークのきっかけとなったのが「チャラ男」だった。「結局、諦めなかったというのが一番(の理由)だと思います」

実は不遇の時代に胸に刺さった言葉があったという。「芸人は3カ月に一回、ブレークせなあかん。俺は今でもずっとそう考えてるんや」。オリラジの2人にこう話したのが、お笑い界に君臨し続ける明石家さんまさんだったという。その言葉を「形を変え続けてがむしゃらに(新しい姿を)作り続けろ」と捉えた。

■「チャラ男」の次へ

さんまさんの金言は今も生きている。藤森さんは「もうチャラ男も賞味期限です」と言い、次のモードチェンジへと向かい始めた。「(芸能人は)昔の自慢話を始めると危なくなる」と考えるからだ。今回のドラマでチャラ男を封印したのも、そのためだ。

ドラマではIT起業家を追いかける記者役を演じている

ドラマではIT起業家を追いかける記者役を演じている

ダーウィンの進化論から、「生き残るのは強い者や賢い者ではなく、変化できる者」という趣旨の言葉を教訓とする企業経営者は多い。藤森さんはコロナがタレントの選別の時代をもたらしたと見るが、それは多くの企業や働き手にも通じるはずだと思わされた。

(編集委員 杉本貴司)

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