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「新聖地」求心力の核に 会場整備、1世紀先見据え

東京五輪 レガシー復興(3)

「よかった。これで計画通りに造れる」。国際オリンピック委員会(IOC)総会が行われたブエノスアイレスのヒルトンホテルで、日本スポーツ振興センター(JSC)の河野一郎理事長は胸をなで下ろしていた。JSCが所管し、2020年東京五輪のメーン会場となる国立競技場のことだ。

新国立競技場での競技開催時のイメージ=日本スポーツ振興センター提供

巨費投じ国立競技場リニューアル

1964年大会で使用された国立競技場は来年から解体工事が始まり、完全リニューアルされる。新競技場は屋根付きの全天候型で収容人員8万人。五輪1年前に開催されるアジア初のラグビー・ワールドカップ(W杯)の主会場にもなり、18年度中の完成を目指している。

国際コンペで選ばれた作品は架橋が縦横に走る斬新なデザインで、総工費は1300億円。別のJSC幹部は打ち明ける。「当然、五輪を見込んで選ばれたデザイン。もし負けていたら計画変更を覚悟していた」

国内最大級の日産スタジアム(横浜)の総工費(600億円超)と比べても確かに高い。しかも、「1300億円は見積もりの最低ライン。増える可能性は捨てきれない。財務省を説得するのは大変だ」とこの幹部は話す。

都の開催準備基金4000億円に的

財源を捻出すべく、JSCの運営するスポーツ振興くじ(toto)関連法案が改正された。海外サッカーの試合なども対象にしたり、当せん金額を引き上げたりすることで年間売り上げを現在の860億円から1千億円に引き上げる狙いだ。そこから毎年売り上げの5%(50億円)を今後7年間、新国立建設に充当する。

もくろみ通りに販売が増えるとは限らない。そこで財務省が狙いを定めるのが東京都の4千億円の開催準備基金。ただ、都は立場上、反発する。「国立の施設の建設費を一部負担することは説明がつかない」(スポーツ振興局)

財源確保と同時並行で、新しい「聖地」はどうあるべきかの議論を尽くす必要がある。都市政策に詳しい明大の市川宏雄教授は「日本全体でインフラが耐用年数を迎えつつある。スポーツ施設も例外ではない。五輪の施設という観点だけでなく、100年先を見据えてレガシー(遺産)となるものを造るべきだ」と主張する。

64年五輪で風船が舞った国立競技場

世界基準満たさぬ主要競技施設多く

日本各地の主要競技施設は、世界基準に満たないものが多い。02年サッカーW杯決勝を行った日産スタジアムでさえ、国際サッカー連盟(FIFA)からは来賓用のホスピタリティースペースが狭いと指摘されているという。新国立はサッカーの聖地とされるウェンブリー(ロンドン)や98年フランスW杯決勝の舞台となったサン・ドニ(パリ)並みのスペースを計画に盛り込んでいる。

五輪の発信力は求心力と言い換えてもいい。20年東京五輪の前後には、スポーツに限らずビッグイベントが日本に集中するはずだ。湾岸エリアに新設される会場も含め、一過性に終わらない長寿命化に耐えうるインフラ整備でなくてはならない。1300億円をめぐる幅広い議論がスポーツの価値を突き詰める。

(山口大介)

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