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NISAが得とは限らない 課税口座にも利点あり

運用方針で使い分け

 投資の利益が非課税になる少額投資非課税制度(日本版ISA=NISA)。来年から始まるこのNISAの口座を、投資のベースにしようと考える人は多いだろう。だが、ちょっと待ってほしい。過去の運用実績や方針によっては、通常の証券口座が有利なことがある。うまく使い分けることが大切だ。

「NISA口座だけで投資したいのに、なんでそうできないの」。東京都に住む女性会社員、Aさん(42)は困惑気味だ。NISA口座を作ろうと大手証券に問い合わせたところ、課税される口座も開く必要があると説明されたからだ。

それはなぜか。NISA口座が金融機関に設ける取引口座の一部という位置付けだからだ。

取引口座を持たない金融機関にNISA口座を設ける際、証券会社では「証券総合口座」、銀行なら「投資信託口座」を作るよう求められる。これらは投資用の口座をまとめる箱のようなもの。この中にNISA口座と運用益が課税される一般口座や特定口座が置かれる形だ。

株式などの取引に総合口座は欠かせないものでもある。NISA口座に入れられるのは証券会社なら上場株と公募株式投資信託(図A)、銀行では公募株式投信だけ。投資資金は課税口座にもNISA口座にも入れられず、証券会社では普通、総合口座のマネー・リザーブ・ファンド(MRF)などで管理するからだ。NISAの非課税期間は最長5年で、2027年に制度が終わる予定。期間が過ぎても商品を持ち続ける場合は課税口座に移すことになる。

投資をNISAに絞ることはできる。課税口座では株と公募株式投信の運用益に14年以降、原則20.315%の税金がかかる。年100万円までの投資の運用益が課税されないNISAなら、利益の手取りが約1.25倍に膨らむ計算だけに、そうしようと考える人も多いだろう。

損益通算で節税

だがNISA以外の投資に目を向けないのは考えものだ。課税口座にはNISAにない利点もあるからだ。

まず課税口座の年間の運用損益は確定申告すれば、その人が持つすべての課税口座で通算することができる。ある口座で利益が出ても別の口座で損が出ていれば、通算して納税額を抑えられる。

さらに通算した結果が損失だった場合は、毎年確定申告をして損失額を翌年から3年繰り越すこともできる(図B)。「結果として、損失と同額の利益が非課税になり、節税効果がある」(SMBC日興証券証券税制・相続業務推進室次長の新井裕之氏)

そう考えると、当面はNISAを使わない方がよいケースも見えてくる。千葉県の会社員、Bさん(55)はその一人。昨年、株式の運用で100万円の損失を確定申告して繰り越したからだ。

Bさんの損失が来年も残った場合、NISA口座で株や投信を運用して利益をあげても通算できない。税理士の柴原一氏は「わざわざ繰り越した損失が無駄に消えてしまう恐れがある」と指摘する。

昨年までは運用が難しい環境が続いていたので、多額の繰越損失を抱える人は少なくないだろう。その場合は「損益の通算による節税を終えてから、NISA口座を利用するのも一案」と柴原氏は助言する。

「NISA口座では損失を抑えることを重視する人が多くなりそう」(ファイナンシャルプランナーの神戸孝氏)との見方も広がっている。NISAの非課税の利点は、損失が出たら全く生かせないからだ。

期間終了後も視野

三重県の会社員、Cさん(56)もそう考えている。バイオ関連など成長期待が先行しやすい株を購入し、値上がりで元本の20倍になった経験があるが「NISAでは値上がりも値下がりも大きくなさそうな株を買いたい」と話す。

事業規模の小さい企業は成長期待が高まりやすい半面、大企業に比べて投資する人が少なく、NISAの非課税期間の終了時点で株価が下がっている可能性も小さくないからだ。

加えてCさんが問題視するのは、期間終了後に株や投信を課税口座に移すと、損が出ていても課税される可能性があることだ。

NISAで買った商品は期間終了までに時価で売却するか、評価し直して口座を移すしかない。仮に100万円で買った株が50万円に値下がりした時点で課税口座に移したとする。その後に売却すると、元手の100万円に戻っていなくても売却益に課税されてしまうのだ。「トータルで損がでているのに課税される。これは納得しにくいだろう」と神戸氏は強調する。

従って例えば価格変動が比較的大きいと考える商品は課税口座で運用。NISA口座では国内外の金融商品にバランスよく分散投資し、リスクを抑えるなどの使い分けが重要になる。

買った金融商品が大幅に値上がりすれば非課税の恩恵をより享受できるのは確かだが、投資に損失はつきもの。

「値上がりしたら売却益を得る目的の割安株投資などは特定口座で、NISA口座ではインフレ対策で値動きが小さめの投信を買うのも一案」(神戸氏)。自分なりの使い分けを考えよう。(大賀智子)

[日本経済新聞朝刊2013年9月11日付]

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