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ヤクルトの新人・小川、ライアン投法で最多勝狙う

ヤクルトのドラフト2位の新人投手、小川泰弘(23)が7連勝をマークするなど現在、セ・リーグトップの12勝(3敗)を挙げている。創価大時代、米大リーグ(MLB)の奪三振王ノーラン・ライアン氏らが書いた「ピッチャーズ・バイブル」をヒントに身につけた独特なフォームが好成績の原因だ。

上原・松坂以来の新人10勝一番乗り

昨年12月、ヤクルトの新入団選手発表会で同投手が見せてくれたのは、足を高く上げる日本ではユニークな投球スタイル。それを見た時は「こんなフォームがプロで通用するのか」と思ってしまった。

しかし、先発投手不足のチーム事情で開幕5戦目の広島戦で先発すると、七回途中2失点(自責0)の好投で、プロ初登板初先発初勝利。新人投手の今季白星1号となった。続く2戦目の中日戦では六回1死まで無安打投球。途中2試合連続KOされることもあったが、立て直して6月22日には広島戦で今季の新人の中で最初の完封勝利をマークした。

7月13日の広島戦で10勝目。1999年の上原浩治(当時巨人)と松坂大輔(当時西武)以来の新人によるリーグ10勝一番乗りとなった。最近2試合は、あと1人で完封のところでブランコ(DeNA)に同点2ランを浴び、8月17日の阪神戦では7回1失点ながら味方の援護なしと、白星を逃している。それでも、防御率でセ・リーグ3位の2.55と安定した投球に、小川監督は全幅の信頼を寄せている。

大学3年で転機「何かを変えねば」

身長171センチ、80キロと投手としては小柄な方だが愛知・成章高時代には21世紀枠でセンバツに出場、1回戦の北海道・駒大岩見沢高に勝ち、創部103年目での甲子園初勝利の原動力となった。

創価大に進学後、2年でエースの座につき、東京新大学リーグでは春、秋とも最高殊勲選手に選ばれるなど、順調な野球人生だったが、転機となったのは3年生春のシーズン。初戦の東京国際大戦で好投しながら、0-1の完封負けを喫した。同じ相手に2回戦は救援で出て、サヨナラ負け。半ば常勝を期待されている大学だけに、「何かを変えなければ」と思ったそうだ。

野球雑誌で投球フォームの連続写真を見ているとヤンキースなどで活躍したロジャー・クレメンス投手のフォームが目に留まった。そこにはクレメンス投手がライアン氏の著書を参考にしたと書いてあった。それならばと手に入れたのが、「ピッチャーズ・バイブル」(日本語版はベースボールマガジン社発行)だった。

筋トレで足腰さらに強化、下半身安定

クレメンスも現代のMLBを代表する投手だが、ライアンは通算5714奪三振の最多記録を持つ大投手。読んでいるうちに「同じフォームでやってみよう」と挑戦心が生まれてきたという。

ただ、足を高く上げてから投げるには足、腰の強さが必要。徹底的に走り込むことと、同書にあるトレーニング法を参考に筋力トレーニングに励んだ。

今のフォームを見ると、足を上げてから下げて投球するまで実に下半身が安定している。もともと足腰が強かったが、さらに強さを増した。野茂英雄さんばりのトルネード風から、ライアン風にフォームを変えた3年生秋からは同リーグ戦で負け知らず。通算では25連勝という東京新大学記録を作って卒業した。

微妙な間でタイミング合わせづらく

プロに入ってもフォームは微調整を続けているが、一番大きく変えた点は「上げた足を下ろす時に微妙な間をつくったこと」だそう。足をいったん高く上げるだけでも、打者としてはタイミングが合わせづらくなるが、そこに微妙な間が入ることでさらに打ちづらくなった。

快速球とカーブ、晩年にチェンジアップを加えただけの本家本元のライアンが徹底したパワーピッチャーだったのとは異なり、小川の球種はカットボール、スライダー、カーブ、フォークボールと多彩。最速は145キロ前後と特筆すべきものはないが、タイミングの合わせにくいフォームから多彩なボールを制球よく投げているのが、プロでも通用している原因だろう。

MLBでは、クレメンス投手が好きだというドジャースのクレイトン・カーショーが同じようなフォームで投げている。左腕だが、足を下ろした時に少し間をとるのがよく似ている。落差の大きいカーブと速球が主体の投手で2011年のサイ・ヤング賞(最優秀投手賞)を獲得している。

今季の小川の成績と小川登板日のバレンティンの打撃結果
小川バレンティン
日  付相手勝敗投球回安打自責打数安打本塁打
4月3日広島6回2/350
4月10日中日7回10
4月17日中日5回1/374210
4月27日巨人7回32411
5月4日阪神4回84531
5月11日阪神 4回65431
5月18日ロッテ6回50422
5月25日ソフトバンク7回51310
6月1日西武8回32421
6月8日日本ハム4回96531
6月15日オリックス8回71330
6月22日広島9回50411
6月29日巨人7回71310
7月6日中日9回80311
7月13日広島7回2/383422
7月27日広島7回63
8月3日広島8回72432
8月10日DeNA8回2/392200
8月17日阪神7回41410
130回1/311337582813
防御率2.55打率.483

旺盛なチャレンジ精神、打撃も期待

初めて参加したオールスター戦では阪神・能見、広島・前田健、DeNA・三浦らを質問攻めにしたそうだ。好奇心やチャレンジ精神旺盛なのが、投手としての成長の一つの要因のようだ。

8月3日の広島戦では四回、2死二、三塁でミレッジの右前打でためらうことなく二塁から本塁へ向かった。足から滑り込み左手で本塁に触れた。「下手くそでもできることは全部やりたいんです」という。小川監督は「投手も9番目の野手として、塁に出たら一生懸命走る。やるべきことを当たり前にやることが大事」と褒めた。

すでに初安打も初打点も挙げているが、打撃が期待できるのも同投手の長所の一つ。チームが計5安打に終わった17日の阪神戦でも二塁打を放っている。登板日でない、本拠地ゲームの時は投手としての練習が終わった後、神宮室内練習場でマシンを相手に打ち込んでいる。「バッティングは好き」という。創価大の時はDH制で打席に立っていないが、高校時代は新チームになり立てのころは4番で、センバツ出場時は5番だったそう。本塁打も高校通算11本。小川の打席も注目して見る必要がありそうだ。

小川投げればバレンティンが打つ

下位に低迷しているチームの中で、一生懸命投げ、打ち、走って輝きを放っている。同投手を見てナインが力を出しているところもあるのではないか。気分屋の4番バレンティンも、小川が登板する試合は「原因がわからないがよく打てる」と打率4割8分3厘、本塁打13本。最近2試合で援護が少ないのが気になるが、小川が最多勝のタイトル獲得や新人王を取るためには、これまで以上のチーム全体の援護が必要である。

(島田健)

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