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設備投資でおもてなし磨く 料理搬送機で裏方楽に

加賀屋相談役 小田禎彦氏(8)

「雪月花」はコンベンションホールを備える豪華な設備にした

石川県内にとどまらず、日本の旅館の代表格である加賀屋(同県七尾市)。3代目の社長で現取締役相談役の小田禎彦氏は、旅行業界紙の「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」で長く連続日本一に選出されたサービスの礎を築いてきた。小田氏の「仕事人秘録」第8回では、相次いで取り組んだ設備投資を振り返ります。

◇  ◇  ◇

新たな投資でぜいたくな造りに

1980年代後半、日本はバブル景気へと向かっていく。加賀屋は89年、150億円を投じて新棟「雪月花」を建設する。8年前に建てた「能登渚亭」の3倍以上の投資額だった。

能登渚亭の人気は続き、保育園付きの母子寮「カンガルーハウス」を設けて客室係の確保にもメドがついてきた。加賀屋がもう一段、大きくなるにはさらに投資が必要だ。

参考になる材料を探しに、米国で18日間ホテルを見て回った。足を運んだのは約40カ所。50階建てのホテルなど、設備の豪華さには目を見張るばかり。何でも見ようと調理場をのぞくと、米国人のコックに包丁を投げられるという冷や汗が出る経験もした。

日本も好景気、豪華なホテルの時代が来る。雪月花はぜいたくな造りにしようと決めた。当時の旅館としては日本一の20階建てにし、千人を収容できるコンベンションホールやディスコも備えた。1人8万~20万円の特別客室「浜離宮」も、今振り返るとバブルならではの発想だろう。

目指すのは「ハイテックとハイタッチ」

客室係の負担を軽減するための投資もした。宴会場や客室に食事を運ぶ自動搬送システムの導入だ。

石川島播磨重工業(現IHI)にお願いし、天井にレールを敷き、ワゴンをつるして運ぶシステムを作った。コンピューター制御で動くため、手作業よりも正確、清潔だ。

「料理を運ぶ仕事がつらい」。客室係からよく声が寄せられ、離職率が高い一因になっていた。能登渚亭にも大福機工(現ダイフク)製の機械式搬送装置を入れていた。床を走るタイプで投資額は7000万円。天井搬送方式の雪月花には4億円をかけた。

実は米国に視察に行ったのは、自動化の先例を見たかったからだ。しかし、現地は人件費が安い中南米の人を使った方がコストが安く、あまり進んでいなかった。

「ハイテックとハイタッチ」。システムを導入して以降のスローガンだ。ハイテックは技術に頼れるところは頼る。ハイタッチは客室係は体力的な負荷が減る分、お客との接触を増やし、満足度を高めようという意味だ。お客をもてなし、お酒や料理を追加してもらえれば、搬送システムの投資も回収できる。

2014年9月、政府の「ロボット革命実現会議」の有識者委員に、妻で女将の真弓が選ばれた。労働力不足、女性の活用といった視点で、加賀屋の搬送システムに着目していただいたのだろう。人材の定着に必死になる中で生まれた仕組みだったが、今評価してもらえるのは光栄だ。

[日経産業新聞 2015年3月6日付]

「仕事人秘録セレクション」は金曜更新です。

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