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済美・安楽の772球 米国人から見た高校野球(上)
スポーツライター 丹羽政善

(4/4ページ)
2013/8/2 7:00
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ところが、ジョーンズ記者が「それでは、日本野球の美しさを失うことになりませんか」と聞くと、権藤氏が考え込んでしまった。

「甲子園の決勝で投げるな」と言えるか

そして、ゆっくりと言った。「そうかもしれないね。しかも、甲子園の決勝で投げるななんて、自分は言えるだろうか」

高校時代、権藤氏自身も甲子園を目指したが行けず、卒業文集に「甲子園に行きたかった」と書いたそうである。

「自分の考えに自信がなくなってきた」。そう口にした後、権藤氏はおもむろに立ち上がり、鞄から携帯電話を取り出すと、ある人に電話をかけ始めた。

「ちょっと、斎藤佑樹に電話してみる。アイツ、あのとき、どう思ったんだろう」

あのときとはもちろん、2006年の夏の甲子園のことである。現在、日本ハムの2軍で調整している斎藤はあの大会で東京・早稲田実業高校のエースとして948球を投げ抜いた。その逸話はジョーンズ記者にも話してある。

彼に権藤氏が誰に電話しようとしているか伝えると、目を丸くした。

確かに、斎藤がなんと言うか興味深いところではあった。一瞬の間があった後、権藤氏の声がホテルの室内に響いた。「権藤です。元気か?」

斎藤は「本望だったと言った」

斎藤が電話に出た。間髪入れず、権藤氏が聞く。「あの時、どう思った? マウンドでつぶれるなら本望だと思ったか」

斎藤がどう答えたかは分からないが、やがて権藤氏がうなずきながら言っている。「そうか……」

権藤氏は最後に「おい、絶対戻ってこいよ」と言って電話を切ると、我々の方を振り返って静かに話した。「本望だったって」

高校球児にとって甲子園とは何か。ジョーンズ記者はそのとき、何か確信を得たようだった。

(下は3日に掲載します)

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