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日本勢も活躍のア東地区 高いレベルの激戦に

スポーツライター 杉浦大介

以前と比べてレベルダウンしたとささやかれていたアメリカン・リーグ東地区。だがシーズンの蓋が開いてみると、今季も5チーム中4チームがすでに50勝以上を挙げる激戦地区になっている。レッドソックス、レイズ、オリオールズ、ヤンキースの4強が6ゲーム差以内にひしめく混戦模様。このままいけば2チーム以上がプレーオフに進出する可能性も大きい。今回は日本人選手も多く、注目度の高いこの地区の前半戦を振り返り、後半戦を占ってみたい。(記録は13日現在)

【レッドソックス

今季ここまでで最大のサプライズは、レッドソックスがア・リーグ最高の勝率で前半戦を終えることだろう。

昨季は1965年以来最悪となるシーズン69勝93敗と惨敗。しかし、ファレル新監督の下で結束力を取り戻したチームは今季、開幕前の「最下位候補」という大方の予想を軽く吹き飛ばす勢いで勝ち続けて来た。

打線はチーム得点で両リーグ1位、打率で2位と好調で、オルティス(打率3割2分2厘、19本塁打)、ペドロイア(3割1分5厘、6本塁打)、エルズベリー(3割1厘、36盗塁)、ナポリ(2割6分、11本塁打)といった主力打者はそれぞれ持てる力を発揮。さらにナバ(2割9分、10本塁打)、イグレシアス(3割7分5厘=規定打席以下)らの伏兵が成長したのも大きかった。

ファレル監督が名門球団立て直し

投手陣でもラッキー(7勝6敗、防御率2.78)、上原浩治(8セーブ、1.79)といったベテランが奮闘。バレンタイン監督指揮下で崩壊した昨季から一転、名門球団を立て直したファレル監督を、今季のリーグ最優秀監督賞の筆頭候補に挙げる声も多い。

もっとも、前半戦はやや出来すぎの感もあり、このペースを持続できるかどうかには疑問符も付く。特にブルペンの負担は大きく、登板数でチーム1位に並ぶ上原、田沢純一(4勝3敗、3.02)の疲れが心配。12日に左腕ソーントン(3.86)を獲得したものの、36歳のベテランは今季は右打者には打率3割2分と打ち込まれているだけに、大きな助けになるかは微妙なところだろう。

後半戦でも首位を保つためには、序盤は絶好調ながらもケガで離脱したバックホルツ(9勝0敗、1.71)、6月は防御率7.62と絶不調だったレスター(8勝6敗、4.58)という右左2枚看板の復活が必要になってくる。

【レイズ】

6月22日まで38勝37敗と出遅れたものの、以降に16勝4敗と大きく勝ち越して地区首位に3.5ゲーム差まで迫ってきた。日本人選手が所属していないために日本での注目度こそ低いが、もともと好投手をそろえたレイズを今季の地区本命に挙げる声は多かった。その呼び声通り、チーム得点、防御率でともにリーグ5位と、バランス良い戦力を整えてきている。

故障離脱していた昨季のサイ・ヤング賞(最優秀投手賞)左腕プライス(3勝5敗、3.94)が7月2日に復帰し、ヘリクソン(8勝3敗、4.67)は最近5戦で4勝0敗と復調、ムーア(13勝3敗、3.44)も初のオールスター出場を果たした。この3人が持てる力を発揮すれば、先発3本柱はヤンキース(CC・サバシア、黒田博樹、ペティット)、レッドソックス(レスター、バックホルツ、ラッキー)のそれよりも総合力で上だろう。

ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の疲れからか序盤戦は不振だった抑えのロドニー(22セーブ、3.79)が復活しているのも大きい。

確立された投打の軸、知将も健在

打線でもロンゴリア(打率2割7分7厘、18本塁打)、ローニー(3割1分6厘、9本塁打)、ジョイス(2割4分1厘、14本塁打)が中軸を固める。加えて期待の大型新人、マイヤーズ(2割8分、3本塁打)がメジャーの水に慣れ始めれば破壊力は増すはずだ。

年俸総額は地区内で最低ながら、投打の軸がしっかりと確立され、知将マドン監督ももちろん健在。この激戦区の中でも、レイズがこの6年間で4度目となるプレーオフ出場を果たす可能性は小さくないのではないか。

【オリオールズ】

昨季15年ぶりのプレーオフ進出を果たした主力メンバーがほぼそろって残り、今季もポストシーズンが十分に狙える好位置に付けてきた。

これまで一発屋の印象が強かったデイビス(3割1分3厘、36本塁打)が完全に開花し、シーズン60本塁打も狙える勢いでMVP候補となっている。加えて2年目のマチャド(3割1分1厘、39二塁打)が成長し、ジョーンズ(2割9分3厘、18本塁打)、ウィータース(2割3分1厘、12本塁打)、JJ・ハーディ(2割5分1厘、16本塁打)らと強力打線を形成。得点で両リーグ3位、長打率で1位、本塁打数では断トツの破壊力は、他チームを恐れさせるのに十分だ。

弱点は投手陣で、故障者続発のために前半戦だけですでに13人の先発投手を登用してきた(昨季は1年間で12人)。ブルペンも昨季51セーブを挙げた守護神J・ジョンソン(32セーブ、防御率3.80)がすでに7度もセーブ失敗し、1点差ゲームで29勝9敗と圧倒的な成績を誇った昨季ほど強靱(きょうじん)ではない。

修羅場くぐった昨季の経験生きるか

それでも7月2日にトレードでベテランのフェルドマン(7勝7敗、3.87)を獲得し、10日には右脇腹痛で故障離脱していたチェン(4勝3敗、2.82)も復帰。ティルマン(11勝3敗、3.95)、ゴンザレス(7勝3敗、3.48)らとともに、後半戦では徐々に投手陣も整備されていきそう。

「トータルでは昨年より良いチームになっていると思う」とチェン。もくろみ通りなら、マイナーでリハビリテーションを続ける和田毅の出番がないほどに層の厚い投手陣になりうる。

今後の地区内の競り合いの中で、シーズン終盤、プレーオフと修羅場をくぐり続けた1年前の経験も生きるはず。ダイナミックな攻守を誇るオリオールズが、今季も終盤まで地区優勝争いに絡んでくる可能性は高い。

【ヤンキース】

主力のロドリゲス、ジーター、グランダーソン、テシェイラらがケガでほぼ不在なことを考えれば、51勝43敗は大健闘といってよい。

序盤戦では、開幕前に駆け込み移籍してきたハフナー(打率2割1分8厘、12本塁打)、オーバーベイ(2割4分6厘、11本塁打)、ウェルズ(2割4分2厘、10本塁打)らが予想外の活躍。彼らが徐々に停滞しても、CC・サバシア(9勝7敗、防御率3.99)、黒田博樹(8勝6敗、2.65)、リベラ(30セーブ、1.83)、ロバートソン(4勝1敗、2.11)らの投手陣が踏ん張り、急降下を食い止めてきた。

特に黒田は打線の援護に恵まれないながらも、粘りの投球でリーグ2位の防御率をマーク。このベテラン右腕こそが前半戦のチーム内MVPとみる関係者も多く、オールスター不選出が不思議なくらいだった。

ジーター再離脱、追撃ムードに水

こうして何とか勝ち越しを保ったチームに、あとはケガ人たちが徐々に戻ってくれば、後半戦に追撃態勢は整うかもしれない。

しかし……。そんな楽観ムードも、左足首の骨折から7月11日にようやく復帰したジーターが、そのカムバック戦で右太ももの痛みを訴えて再離脱したことで水を差されてしまった感がある。

「フラストレーションがたまる。想定外の事態になってしまったが、とにかく早く復帰してチームの勝利を助けたい」。ジーターはそんな声明文は発表したが、オールスター直後にすぐに復帰したところで、故障再発しないとも限らないし、かつてのように働けるかも分からない。不確かなことだらけの状況下で、厳しい戦いが続きそうである。

それでも先発、中継ぎ、抑えまで含めた投手陣の総合力では依然として地区内最高レベルだけに、プレーオフ進出の可能性は残っている。あとはチーム最強打者のカノ(打率3割、21本塁打)、6月は打率2割9分2厘と上昇気配だったイチロー(2割7分8厘、13盗塁)らを軸に、何とか必要な得点を稼げるかどうか。そして少しでも得点力をアップさせるべく、今月末までのトレード期限内に多少なりとも野手陣のてこ入れを行っておきたいところだ。

【ブルージェイズ】

今季ここまでで最も期待を裏切ったチームと言っていいだろう。

オフに大補強を施して開幕に臨むも、RA・ディッキー(8勝10敗、防御率4.69)、バーリー(5勝6敗、4.89)、ジョンソン(1勝4敗、4.62)といった新加入の先発投手たちが大誤算。先頭打者の役目を果たすはずだったレイエス(打率3割1分8厘、4本塁打)が左足首の捻挫で長期離脱したのも響き、6月10日まで27勝36敗と大きく出遅れた。その後、同11~23日に怒とうの11連勝で勝率5割以上に戻したものの、以降また失速している。

川崎、ハッスルプレーでアクセント

レイエスが復帰し、バティスタ(2割5分6厘、20本塁打)、エンカーナシオン(2割6分5厘、25本塁打)、リンド(3割7厘、11本塁打)もまずまずの数字を残すなど、野手のタレントが豊富なことに変わりはない。川崎宗則(2割1分3厘、7盗塁)もユーモラスなしぐさとハッスルプレーで地元の人気者となり、チームに独特のアクセントを添えている。

あとは投手陣が上向けば再浮上も不可能ではないとはいえ、地区レベルの高さを考えれば、前半戦の出遅れは致命傷に近い。これから先、優勝争いにまで絡んで来るのはやはり難しいのではないだろうか。

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