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女子ゴルフで63年ぶり快挙 朴仁妃に史上最強の声

ゴルフライター 川野美佳

女子ゴルフの朴仁妃(韓国)が今季開幕からのメジャー連勝記録を「3」に伸ばし、伝説のゴルファー、ベーブ・ザハリアス(米国)以来63年ぶりの快挙を達成した。

主催者も想定外の好スコア

6月30日に閉幕した第68回全米女子オープン選手権はニューヨーク州セボナックGCがその舞台。開場は2006年と比較的新しいが、ジャック・ニクラウスとトム・ドークという当代きっての設計家を起用し、まさに最高峰のメジャーを開催するために造られたといっても過言ではない名コースである。

フェアウエーは広いが起伏に富む。大きくうねった硬いグリーンは、1メートルに満たないパットでさえ、息を止めボールの行方を見つめなければならないほど難しい。そこに大西洋から吹きつける強い風が選手たちを翻弄する。大会を主催する全米ゴルフ協会(USGA)は優勝スコアをイーブンパーに設定し、これでもかとカップを厄介な場所に切り、パーセーブさえ難しいセッティングを完成させた。

実際4日間を終えアンダーパーをマークしたのは3人だけ。あらかたUSGAのもくろみは当たったといってよいだろう。ただし優勝した朴のスコアだけは想定外。2位の金寅敬(韓国)に4打差をつける通算8アンダーでの優勝は、単純に考えて1日2ストロークずつ朴の方がUSGAとの駆け引きに勝ったことになる。

点から点を攻める緻密なゴルフ

しかもメジャー3連勝が懸かっていたのだから、そのプレッシャーたるや想像を絶するものがある。そんな中で「ここしかない」という、点から点を攻める緻密なゴルフで難コースを攻略した朴。「インビー(朴)だけが違うコースを回っているようだった」とライバルたちがため息をつくのも無理はない。

これで今季6勝目。獲得賞金は200万ドル(約2億円)の大台を2年連続で突破し、昨年に続く賞金女王のタイトルに加えプレーヤーズ・オブ・ザ・イヤー(年間最優秀選手賞)もほぼ手中に収めたことになる。

朴が初めてクラブを握ったのは母国の先輩・朴セリが弱冠20歳で全米女子オープンと全米女子プロ選手権(現ウェグマンズLPGA選手権)に優勝した15年前。同じく朴セリの快挙に触発されゴルフを始めた1988年前後生まれの通称「パルパル世代(韓国語で88はパルパル)」が、現在の韓国勢の中核をなしており、昨年の全米女子オープンで優勝したチェ・ナヨンや全英リコー女子オープン2勝の申ジエらがそれに当たる。つまりライバルにはこと欠かないということだ。

日本ツアーで勝ち方学び飛躍

ゴルフを始めて2年後、12歳で米国にゴルフ留学した朴はアマチュア時代に卓越した戦績を残し、17歳でプロ転向。2008年には全米女子オープンを史上最年少の19歳で制し騒がれたが、その後は勝ち星に恵まれない時期を過ごしている。「誤算でした。アマチュア時代の戦績からすれば、もっとプロでも活躍できると思っていたのだけれど……。2勝目までが遠かった」

チェや申の活躍の陰に隠れ、ひっそりと日本ツアーの予選会を受験し、日本に活路を求めた時期もある。一見「都落ち」にも見える行動だが、この日本での経験が後に生きることになる。

「日本では自分のスタイルを貫けば勝てることを学びました」と言うように、10年には初戦から3試合連続で2位(タイを含む)に食い込んだ後、4戦目の西陣レディースで初優勝。その年に2勝、翌11年は開幕戦のダイキンオーキッドレディースを制し、朴は"勝ち方"をマスターした。

年間グランドスラムも視野に

日本で培った自信を胸に米ツアーに挑んだ12年シーズンは朴にとって飛躍の年。エビアン・マスターズで4年ぶりのツアー通算2勝目を挙げると、その類いまれなるパッティングセンスと抜群の安定感で常に上位をにぎわし、初の賞金女王に輝いた。

さらに今季はクラフト・ナビスコ選手権、ウェグマンズLPGA選手権、全米女子オープンと、いずれも危なげない横綱相撲でメジャーに連戦連勝。メジャーが年間4試合以上になってからは女子では前人未到の年間グランドスラムが見えてきた。

話がグランドスラムに及ぶと「あんまりプレッシャーをかけないで」と笑う朴。口では「まだとてもそんなこと考えられません」と言いながら、その表情には自信があふれている。

婚約者のコーチと二人三脚

女子ゴルフ史上最強と呼ばれるアニカ・ソレンスタム(スウェーデン)を朴が「超えた」と言うのは、全米女子オープンでテレビ解説をした岡本綾子だ。勝ち星こそツアー通算72勝のアニカには遠く及ばないが、シーズン半ばでメジャー3連勝を含む6勝はアニカの記録すらかすむほど。

少し前まで世界ランキング1位に君臨していたヤニ・ツェン(台湾)は攻めには強いが守りには弱かった。飛距離が武器なだけに、プレッシャーがかかるとわずかの誤差で大きく球が曲がり、取り返しのつかないミスをした。

朴には死角が見当たらない。決して飛ばし屋ではないが、ここ数年、婚約者でコーチのG・H・ナム氏と二人三脚で取り組んだスイング改造により、体重移動がスムーズになりインパクトが断然力強くなった。

昨年のブレークは「ウイークポイントだった」ショットの精度が上がったからに他ならない。ショートゲームにもともと定評のあった朴だが、ここに来てまた一段と技量を上げたのは、ナム氏の手腕もあるはずだ。ポーカーフェースの新女王はいったいこれからどこまで進化していくのか?

宮里藍は朴と12打差の11位

宮里藍は大会初日に大きく出遅れながら2日目以降に挽回し、11位タイに入った。「よく我慢できたと思う。これまでの全米女子オープンの中では一番納得のいく内容でした」とサバサバした表情でメジャーの戦いを振り返ったが、歯を食いしばって全力を尽くしても朴との差は4日間で12ストローク開いていた。果たしてこの12打をどうやって埋めるべきか悩ましい。

次なるメジャーは聖地セントアンドルーズのオールドコースで8月に行われる全英リコー女子オープン。6年前、思うようなゴルフができず泣きながら練習グリーンで球を転がし続けた藍が、年間グランドスラムを目指す朴の前に立ちはだかるためには、本人が言う通り「ショートウッドの距離感とパッティング」がカギになる。

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