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黒田、なるか初の米球宴出場 成績では有力候補

スポーツライター 杉浦大介

ヤンキースの黒田博樹が今季も安定した投球を継続している。7勝5敗の好成績を残し、防御率2.77はチームの先発陣の中では断然トップ。ア・リーグを代表する先発投手の一人として、このままいけばオールスター出場も視野に入ってきそうだ。いぶし銀の魅力を発揮する38歳のベテランは、メジャー6年目にして初の球宴出場を果たせるのか。(記録は6月29日現在)

勝ち星増やせずとも内容は悪くなく

「オールスターまでもう少しなんで、あとは何とか前半の(ための)力を振り絞ってやるだけ。次の登板のことしか考えていないし、その先はどこが相手になるかとかは考えていない。(暑さは)この時期はどこに行ってもそういう気候だし、ハードな部分はあるけど仕方ない」

5月18日以降は1勝のみと勝ち星から見放されかけている黒田だが、6月27日のレンジャーズ戦の前にはそんなベテランらしいコメントを残していた。

5月22日~6月25日までの間の7先発でも、4失点以上を喫したのは2試合だけ。なかなか勝てないとはいっても自身の投球内容が急に悪化しているわけではなく、ア・リーグのワースト3位のチーム打率で低迷する打線の巻き添えを受けている感が強い。

ダルビッシュ有との投げ合いとなった25日のゲームでも、6回2/3を投げて5安打3失点(自責点2)で6奪三振と好投。最終的にチームは逆転勝利を飾ったにもかかわらず、「一発目(の本塁打)は防げるホームランだったので自分の中で一番悔しいホームランだった」と伏兵マーティンに2本塁打を浴びたことへの反省がまず先に出るのがこの右腕らしかった。

ダルビッシュと投げ合い、出来は上

「(三者凡退に抑えた六回は)あそこから最後の力を振り絞ってというか、なんとかチームのリズムをつくりたいと思っていた。あそこからはどれだけ投げろと言われても投げられるような、ハイに入っていたような感じです」

要所を締めるピッチングの出来自体は、大きな注目を浴びてヤンキースタジアムで初めてのマウンドに立ったダルビッシュよりも上だったといってよい。

今季の黒田の投球内容を詳しく見ると、シンカーが41.49%、スライダーが26.07%、スプリットが19.63%で、この3つの球種で全投球の9割近くを占める。フォーシームは8.99%、カーブは3.82%のみだ(数字はBrooksBaseball.netより)。

右打者はスライダー中心に攻め、左打者を2ストライクに追い込んだ場合にはスプリット、シンカーで仕留めにかかるというパターンが定番になっている。

どんな球か分かっても捉えさせない

特に右打者を2ストライクに追い込んだ際に投じるのは50%がスライダー(シンカーは25%、スプリットは20%)で、左打者を2ストライクに追い込んだ場合には40%がスプリット、38%がシンカー(スライダーは14%、フォーシームは8%のみ)。打者にとっても傾向が読みづらい投手ではないはずで、奪三振が必ずしも多くない理由はそこにあるのだろう。

ただ逆に言えば、打高投低といわれるア・リーグの打者たちでさえも、「どんな球が来るのか分かっていても捉えるに至っていない」ということ。"予測できる投手"でありながら好成績を残し続ける事実は、黒田の一つ一つの持ち球の質の高さを物語っているのかもしれない。

似たような成績多く当確とは言えず

防御率でア・リーグ7位の黒田が、7月16日にメッツの本拠地シティフィールドで行われるオールスター出場の有力候補であることは確かだろう。

特に今年の開催地はヤンキースにとっても地元となるニューヨーク。ヤンキースからは、ファン投票で選出が濃厚なロビンソン・カノ、引退を明言していることもあって出場確実なマリアーノ・リベラ以外に、もう一人くらい選ばれてもよさそう。残りの選手の中で最も近い位置にいるのが黒田ではないか。

ただ、当確とまでは言い切れない。投手はまず選手間投票で8人(先発5人、リリーフ3人)が決まり、残り約5人は監督の裁量に委ねられる。今季は特に似たような成績、貢献度の選手が多いだけに、ジム・リーランド監督(タイガース)も頭を悩ませることになりそうだ。

ダルビッシュ、岩隈も選出候補に

先発ではクレイ・バックホルツ(レッドソックス=9勝0敗、防御率1.71)、マックス・シャーザー(タイガース=12勝0敗、同3.10)、岩隈久志(マリナーズ=7勝3敗、同2.42)、フェリックス・ヘルナンデス(マリナーズ=8勝4敗、同2.70)、ダルビッシュ(レンジャーズ=7勝3敗、同2.95)、バートロ・コロン(アスレチックス=11勝2敗、同2.79)、ジャスティン・バーランダー(タイガース=8勝5敗、同3.77)、マット・ムーア(レイズ=10勝3敗、同3.95)らが黒田とともに選出候補となる。

勝ち星は少なくても、近年のメジャーで重視されることの多いWAR(代替可能選手に比べてどれだけ勝利数を上積みしたかを表す指標)のランキングで上位に入る投手も考慮されそう。その中では、クリス・セール(ホワイトソックス=5勝6敗、防御率2.75、WAR3.8は2位)、アニバル・サンチェス(タイガース=6勝5敗、同2.76、WAR2.6は8位)らの出場が有望といえる。

リベラらリリーフの候補も多士済々

さらに1チームから必ず1選手は出場するという規定もあるため、バド・ノリス(アストロズ=5勝7敗、防御率3.35)、ジャスティン・マスターソン(インディアンス=9勝6敗、同3.76)、アービン・サンタナ(ロイヤルズ=5勝5敗、同2.74、WARは13位)などは飛び抜けた成績ではなくとも、不振チームを代表する形で選ばれる可能性もある。

加えてリリーフも、リベラ(26セーブ、防御率1.55)、ジョー・ネイサン(レンジャーズ=26セーブ、同1.56)、ジェシー・クレイン(ホワイトソックス=36回2/3で46奪三振、防御率0.74)、グレン・パーキンス(ツインズ=20セーブ、防御率2.05)、グラント・バルフォー(アスレチックス=18セーブ、同2.03)……と多士済々。

いぶし銀、やや欠けるインパクト

今季を通じてヤンキース最高の先発投手であり続けてきた黒田は、防御率だけでなくWARでもア・リーグ8位とハイレベル。オールスター直前になるとケガなどの理由で辞退する選手が出てくるケースも多いだけに、黒田がたとえ最初の発表で漏れることがあっても、最終的に含まれる可能性はかなり高いように思える。

ただ、いぶし銀のキャラクターのためかややインパクトに欠けるきらいもある。「ヤンキースのCC・サバシアと黒田は良いシーズンを過ごしているが、オールスターレベルではない」(CBSスポーツのマイク・アクシサ氏)と記す記者もいる。そう考えると、現時点では有望ではあるが、必ずしも楽観はできない立場にいるといえるだろう。

「彼(ダルビッシュ)はやっぱりあれだけのピッチャーだし、考え方もしっかりしているんで常に刺激は受けます。同じ投手として年齢に関係なく尊敬する部分はある」

6月27日の試合前、ダルビッシュと同時間帯にブルペンで投球練習を行った黒田は、後輩エースについてそう語っていた。

発表は7月7日、残り登板機会少なく

今ではメジャーを代表する先発投手になった黒田は、そのダルビッシュ、数字的には彼らを上回る成績の岩隈とともに、「夢の球宴」の舞台に初めて立つことができるのか。そうなれば、常に「チームのため」を標榜する黒田のキャリアにまた一つ大きな勲章が加わることになる。

オールスターのメンバー発表は7月7日。6月30日のオリオールズ戦での登板を終えると、発表の日まで先発機会は7月5日に再び相まみえるオリオールズ戦のみと予想される。ここで好内容の勝ち星を挙げておけば、黒田がオールスターのマウンドにぐっと近づくことは間違いない。

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