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ダイヤモンドの人間学(広澤克実) 交流戦、セ・リーグはなぜこんなに弱いのか

今年の交流戦も、パ・リーグがセ・リーグを圧倒した。一時は上位6チームがパ・リーグで、下位6チームがセ・リーグという恥ずかしい図式になった。巨人の頑張りで何とか最悪の事態は免れたが、結局は60勝80敗4分けと、セ・リーグが大きく負け越した。

セ・リーグ勝ち越しは一度だけ

特にDeNAやヤクルト、中日の負け越しが目立つ。リーグの中をみれば今年は中日も下位グループの仲間入りをし、2強と4弱の戦力格差という問題も抱える。巨人、阪神という2大球団の人気に頼らざるを得ない球団経営のツケが回ってこようとしている。

交流戦が始まって今年で9年目となる。表でわかるように、セ・リーグが勝ち越したのは2009年の一度だけ。昨年やっと、巨人がセ・リーグ勢として初めて優勝しただけで、他の年はパ・リーグ勢が制している。この「パ高セ低」状態をどうみるか。

交流戦成績
 引き分け優勝
2005年104勝105勝ロッテ
06年107勝108勝ロッテ
07年66勝74勝日本ハム
08年71勝73勝ソフトバンク
09年70勝67勝  ソフトバンク
10年59勝  81勝オリックス
11年57勝78勝ソフトバンク
12年66勝67勝11巨人
13年60勝80勝ソフトバンク

「個のパ」が「組織のセ」を上回る

まず、背景に野球の質があると思う。一言でいえば、緻密な野球で、データを生かしチームワークで戦うのがセ・リーグ。野球自体は粗いが、「個」の力で戦うのがパ・リーグの特徴だ。ストライクとボールの見極めから、バントや走塁まできめ細かな戦いをするセ・リーグの野球は長丁場のレースとなると、強みを発揮するはずだ。

しかし、交流戦は1カードが「2連戦×ホームアンドビジター=4試合」の超短期決戦の連続だ。データもそれほど生きない短期決戦では個人個人の局面の打開力がモノを言う。「組織のセ」を「個のパ」が打ち破ってきたのが、交流戦の歴史なのだ。

両リーグの野球の違いをもたらしているのは何か。理由はいろいろあろうが、指名打者(DH)制も大きな要因かもしれない。

投手が打席に立たないDH制では「9番投手」となるべきところが「4番DH」などとなるわけで、イケイケ野球になるのも無理からぬところ。逆にDHを採用しないセ・リーグが、打者全員でつないでいく野球になるのは当然かもしれない

野球の違い、ドラフト戦略にも

また、野球の違いはドラフト戦略にも反映される。

セ・リーグは足が速くて、バントや進塁打がうまくて守れるという、チームプレーに欠かせない選手を求める。基礎的な能力でみると、身体に力はないがスピードはある選手だ。

対してパ・リーグは多少の欠点には目をつぶり、どこか一カ所でも秀でたものがあればいい、という指名の傾向がある。単純に「飛ばす」とか「足が速い」とか「肩が強い」という点を見る。

私が打撃コーチを務めた阪神では「こいつは飛ばす才能がある。4番候補として育ててみたい」という選手はまずいなかった。走攻守、どれをとってもソツはなく、飛び抜けた能力というより各要素が平均点という選手だ。大和(前田)がその代表格で、成長の最終形が2番打者という選手だ。阪神は大和タイプの野手を毎年のように指名している。

4番打者候補、セに見当たらず

ラインアップのなかで何人かはそういう選手も必要だし、大和タイプが良くないということではない。要はバランスの問題だ。実際、今シーズンの大和は重宝する存在になっている。しかし、決して大砲にはなり得ない。チームでクリーンアップを打ち、国際大会で日本の4番を務めるという選手にはならないのだ。

他のセ・リーグ球団を見渡しても2番打者候補はいるが、4番打者候補はなかなか見当たらない。

巨人も同じように"一振りの魅力"というよりは、守備力や足に重きをおき、かつ、チームプレーができる選手を指名する傾向にある。数年前、大砲と期待して獲得した大田泰示にもバントや進塁打を打てることをチームが望み、少々ボール球を振ってもいいから遠くへ飛ばさせる、という育成を嫌う。

パ・リーグではおかわり君こと中村剛也(西武)、中田翔(日本ハム)が、4番として立派に育っている。これから楽しみという選手も多く、現在西武で代役の4番を務めている浅村栄斗や、同じく西武の坂田遼が長距離砲のにおいをプンプンさせている。

パに多く育つ長距離打者

ソフトバンクの柳田悠岐も「これは将来楽しみだ」というスイングをしている。ボール球を振ってしまう粗さもあるが、バットに当れば簡単にスタンドインするパワーのある選手だ。

彼らはうまく育てば、リーグで本塁打王争いをしたり、WBCなどの日本代表の4番打者になったりしておかしくない選手だ。

セ・リーグを見渡しても この条件に合う選手はなかなかいない。うまく育って3番止まり。4番打者は外国人というチーム編成になる傾向だ。

広島の堂林翔太、中日の高橋周平も成長の最終形は3番打者。セ・リーグの若手で"規格外"の魅力を持つのは、DeNAの筒香嘉智くらいのものだろう。

「3拍子そろった選手」の是非

ここで球界の常識の一つを再考してみたい。阪神や巨人が求める「3拍子そろった選手」が本当にいいのかどうか、ということだ。

走攻守の3要素がイチロー(ヤンキース)や青木宣親(ブルワーズ)ほどのレベルでそろっているなら、何物にも代え難い値打ちがある。しかし、どれも平均点の「3拍子」は要らない。そういう選手は少なくともチームに2、3人いれば足りるのだ。

プロ野球の魅力を考えたとき、たとえ「1拍子」の選手であっても、その一つの長所が飛び抜けていれば、十分な売り物になるはずだ。足は遅いがパワーはある、打つのはダメだが足がズバ抜けて速い、守備が飛び抜けてうまいという何かに秀でた選手は魅力がある。野村克也氏いわく「超二流」の選手だ。

その点、パ・リーグは 「超二流」の選手が多く、スカウティングにおいてリスクはあるが、積極的に獲得している。

セのスカウト戦略、リスク取らず

外野守備だけでもお金がとれる岡田幸文(ロッテ)のような一芸に秀でた選手がいる。

中田にしても、おかわり君にしても、スカウトの目からすれば、パワーはあるが荒削りだとか、太りすぎとか、マイナス要素も目についたに違いない。しかし、そうした要素を計算に入れてもなお、そのパワーの魅力は捨てがたいと評価したわけだ。

ボールを遠くに飛ばす才能はそうそう転がっているものではない。パ・リーグの球団はハズレのリスクを覚悟してでも、一発の魅力に賭けているわけだ。

一方のセ・リーグはそういうリスクを取ろうとしない。「3拍子そろった選手」といえば聞こえはいい。しかし、それは逆にいうなら、現場サイドから「こんな選手を獲得してどうするんだ」という声が出ないようにするための"守り"のドラフト戦略なのだ。打つのがダメでも守りで、とか、打つのがダメでも足で、とか、逃げ場をつくっているのだ。そこからは夢と華のある選手は生まれない。

影落とす「リーグ内の格差」

サッカーの日本代表、本田圭佑(CSKAモスクワ)がワールドカップ(W杯)ブラジル大会への出場を決めたときに日本の課題を口にした。「日本はチームワークは最高だが、世界で戦うためには個の力を高めることがこれからの課題だ」と。つまり、W杯で勝つことを考えたとき、日本はチームワークはよいが、まだまだ個の力が弱いと指摘したのだ。

本田の言葉は そのままセ・リーグの現状に当てはまる。

スーパースター候補不在という問題とともに、「リーグ内の格差」が、セ・リーグに影を落とす。圧倒的資金力を持つ巨人、阪神の2大球団が「我慢して育てるより他球団の主力選手を獲得すればよい」という発想で来たことが、リーグを極端な構造にしている。

金本知憲、新井貴浩を阪神に出した広島、村田修一を巨人に出したDeNA、アレックス・ラミレスを巨人に出したヤクルト。下位チームから上位チームへ主力選手が動き、また、黒田博樹(ヤンキース)、内川聖一(ソフトバンク)や青木宣親ら下位チームの主力選手が次々とチームを離れていくことで、ますます戦力格差は広がる。

主力選手の去就がリーグの命運を左右

つまり、何年も下位に甘んじるチームから上位へ主力選手が流出していけば、戦力の格差が広がるのは当然で、この下位チームが交流戦で勝てず、セ・リーグとパ・リーグの対戦成績に影響を与えるのも当然の結果である。この現象はセ・リーグのペナントレースが常に巨人、阪神の2強で争われることになっても不思議ではない構図を生む。

かつては「人気のセ、実力のパ」といわれたものだが、この先どうなるか不安である。スーパースター不在で、しかも格差の広がった試合を見せられたら「人気のセ」も怪しくなってくる。さらに交流戦の意味をもなくし、日本シリーズの興味も失われかねない。

少なくとも、セ・リーグが「3拍子信仰」を捨てない限り、個性があふれ魅力ある選手は出てこないし、「人気も実力もパ」になりかねない。そうなってしまえば、プロ野球全体に悪影響を及ぼし、プロ野球人気の衰退につながるだろう。このようなことが起こりはしないかと危惧している。

(野球評論家)

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