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トーナメントへようこそ ゴルフのプロアマ大会 お客をいかに楽しませるか

日本ゴルフツアー機構(JGTO)専務理事 山中博史

プロゴルフトーナメントには、たいてい主催者やスポンサーの企業名や製品名がついています。それは言うまでもなく、トーナメントを通じて企業や製品の宣伝やイメージアップ効果を見込んでいるからです。しかし、実は主催者やスポンサーがトーナメント開催に際して最も重視していることの一つが、プロアマ大会なのです。

「男子は感謝の気持ち足りない」

本戦に先立って開催するプロアマ大会に大切なお客さんを招いて、1日接待する。それによって日ごろの愛顧に感謝を表すと同時に、これからもよろしくというメッセージを伝えるのです。

例えが悪いと怒られそうですが、ひと昔前の銀座の高級クラブでの接待を考えてみてください。どんなに有名で雰囲気の良いお店でも、どんなに高いお酒を出されても、ホステスさんが無愛想でお客さんが気持ちよく過ごせなければ、その接待は失敗に終わってしまいます。それだからこそ、ホステスさんはいろいろな話題を提供し、ホスピタリティーにあふれるキャラクターが求められるわけです。

プロアマ大会も同じです。ここでは、主催者やスポンサーにとって大切なお客さんを楽しませることが、プロゴルファーに求められているのです。

しかし2003年頃からでしょうか、「プロアマで、男子プロたちは感謝やホスピタリティーの気持ちが足りないのではないか」という批判やお叱りを受けることが多くなってきました。

試合数がどんどん減っていく中で

女子プロとの比較で論じられた側面がありますが、そういう意識が欠けていたことは否めません。「プロアマの最中に平然と自分の練習をやる」「お客さんとの会話そっちのけでコースチェックをする」「同行するマネジャー、トレーナーばかりと話す」という声が寄せられたのです。

折も折、景気低迷でトーナメントから撤退する企業が相次ぎ、試合数がどんどん減ってきました。確かにプロ選手はすばらしいプレーで観客に夢と感動を与え、それでお金(賞金)を稼ぐのが仕事なのですが、トーナメントが開催されなければ元も子もありません。

このため選手間でも「試合を継続してもらったり、新しい試合を増やしたりするためにはどうしたらよいか」という危機意識が高まりました。その結果、「スポンサーに喜んでもらうためには何が必要か」を考えるようになり、その一つとして「プロアマの満足度を高める」がクローズアップされたのです。

プロアマ欠場なら本戦に出場できず

トーナメントの成り立ちを考えれば当たり前の話ですが、なかなかそこまで思いが至らなかったということでしょう。ちなみに現在では、プロアマを欠場すると(例え理由が体調不良でも)本戦にも出場できないルールになっています。

話は変わりますが、男子トーナメントのプロアマで難しいのは、プロとアマチュアのティーインググラウンドが違う点です。女子プロのドライバー飛距離はそれほどアマチュア男性と変わらないので、同じティーインググラウンドからプレーできます。一方、男子プロの飛距離は平均でも280ヤードを超えるので、アマチュアより50ヤードから時には100ヤード以上も後ろのティーインググラウンドから打つことになります。

ティーショットの待ち時間が、一番会話が盛り上がるのはご存じのとおりです。しかし、プロが100ヤードも後ろのティーインググラウンドでは会話のしようがありません。間近でスイングを見ることもできないので、会話だけでなく、レッスンの機会も減ってしまいます。

会話増やすため新たな競技方法も

これを解消するため、最近はパー3だけでも同じティーインググラウンドを使用したり、競技方法にスクランブル方式(ティーショットは全員が打ち、2打目以降は、毎ショット一番良いポジションを選んで、そこから全員がプレーし、ホールアウトまでこの方法でプレーする形式)を採用するトーナメントも増えています。

これだと、みんなが同じ場所から打つので会話が増え、プロもレッスンしやすいですし、プロのショットも間近で見られるというメリットがあります。

さらに新しいプロアマのスタイルも試みています。5月に東北復興支援チャリティーをかねて、選手会主催のもと、仙台で開催した「サンクフル主催者ゴルフ懇親会」では、プロ1人とアマチュア1人が組んで、これを2チーム合わせて1組にしました(通常はプロ1人にアマチュア3人)。

表彰式やパーティーで交流重視

これだと、プロはマンツーマンでアマを教えられるし、さらに同じ組のプロ同士、アマチュア同士もスコアを競い合えるので、緊張感を持ってプレーできます。前夜祭や表彰式でも、みなさん楽しんだ様子がうかがえました。

また個人的には、アマチュア1人にキャディーが1人つくワンバッグで回る企画も面白いと思っています(通常はアマチュア3人にキャディー1人)。ワンバッグはクラブ選手権に出場するようなゴルファーでなければ、なかなか機会がないでしょう。プロアマだからこそ、プロと同じスタイルでラウンドするぜいたく感を味わってほしいからです。

表彰式やパーティーもお客さんとのコミュニケーションを重視したものになってきました。プロアマの多くは1番、4番、7番……など異なるホールから一斉にスタートする「ショットガン方式」でラウンドするのが普通でした。これだと表彰パーティーまで、最終組のホールアウトを待つ時間が短くなるからです。

重大な欠点…100人近くが風呂に殺到

でも、この方式は重大な欠点があるのです。それはお風呂です。ほぼ同じ時間にホールアウトした人たちがお風呂に入ると、浴室(一般住宅よりははるかに大きいのですが……)がいっぱいになってしまうのです。100人近くの人が一斉にお風呂に入ったら……。皆さん、想像できますよね。

このため最近では1番、10番スタートにして、ホールアウト後は組ごとに軽食で一杯やって解散。順位表や賞品は、後日自宅に送るというスタイルもあります。ゲストはゆったりラウンドして一汗流した後、プロとゆっくり話ができるし、プロも解散後、本戦に向けて自分の練習ができるというわけです。

09年までのツアー選手権では、土曜日に本戦開催コースの近くで、予選落ちした選手を集めて、プロもアマと同じティーインググラウンドからプレーしてもらいました。出場したプロにとっては、本来なら予選落ちで賞金ゼロのところを多少の収入が入るし、リラックスしてサービス精神も全開。ゲストも土曜ということで堂々とゴルフを楽しんでいただけました。

ようやく「顧客ニーズにきめ細かく」

本当はこのサタデープロアマを増やしたいのですが、難点は「金曜日夕方まで、どのプロが参加するかわからない」ということです。

このように主催者がどのようなプロアマを求めていて、それに対してツアーやプロがどのようなメニューを提案できるのかが、一層重要になっています。遅ればせながら、「顧客のニーズにきめ細かく対応する」体制ができたということでしょう。

ちなみに欧米ツアーのプロアマは、スタート受付や表彰パーティーなどできめ細かい対応はしていないように思えます。スタート時間にゲストが来なければ、そのままスタートさせてしまいます。ゲストも「用事があるからハーフだけ」ということもあります。ですから外国人ゲストが日本ツアーのプロアマに出場すると、丁寧な応対にびっくりしています。

プロ一人ひとりの意識も変化

こうしたツアー側の対応と同時に、プロ一人ひとりの意識もずいぶん変わりました。今年の米ツアーのソニー・オープンでは選手会長の池田勇太が同じ組の松山英樹(当時アマチュア)に「おまえも将来プロアマでホストをやることになる。その時どうやるべきか、今日は見せるから」と模範を示したそうです。

後で松山が「わかっているつもりだったが、あそこまで丁寧になるとは驚きました」と言っていました。先輩がプロとしての模範を示し、それが引き継がれていくという好循環が生まれつつあります。

プロアマに出場するプロは男女とも前年度の賞金ランキング上位と、残りは主催者推薦で選んでいきます。男子ツアーでは数年前から主催者推薦の比率を70%まで引き上げています(以前は50%)。理由は、「大切なお客様の接待を、ぜひこのプロにお願いしたい」という主催者の意向を反映するためです。

外国選手のホストぶりに学ぶ必要

「銀座のクラブと同じで全て指名制にしたらどうか」という笑い話すらあるほどです。社会人としての常識を持ち、好印象で、求められる仕事をきちんとこなす。そんなプロを主催者は求めているのです。

逆に、ランキング上位者でもプロアマに声がかからない選手は、「どうして呼ばれないのか?」を考える必要があります。何せ、プロアマで一人でも言動や態度のよろしくない選手がいると、それが男子プロ全体のイメージに取られてしまいますので。

その点、外国人選手のホストぶりには感心します。「僕、英語だめだからなあ」とぼやきながらスタートしていったゲストが「とにかく手取り足取りの丁寧なレッスンとホスピタリティーにびっくりした。すっかりファンになりました」というシーンを数えきれないほど見てきました。

ゴルフ用語のほとんどは英語ですし、ボールの行方に一喜一憂するのに国境はありません。「気持ちを伝えよう」「理解しよう」という姿勢があれば、コミュニケーションは成立します。彼らの姿勢に学ぶべき点はたくさんあります。

一般アマもプロアマに参加可能

最後に「どうやったらプロアマに参加できるのか?」です。トーナメントの8割以上は主催者の完全招待制ですが、一部には一般アマチュアがエントリー(購入)できる試合もあります。ホテル、ブレザー、飛行機代など至れり尽くせりのサービスで超VIP待遇です。

代表的なものでは中日クラウンズ、ダンロップフェニックストーナメントなどがあります。興味のある方は、主催者にコンタクトしてみてください。ただし、ギャラリーの視線やトッププロの前で、堂々とプレーする勇気は必要ですが。

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