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モイズ新監督、マンUどう変える 香川起用法がカギ

サッカージャーナリスト 原田公樹

今季のイングランド・プレミアリーグは19日閉幕し、英国のサッカー界はまるで冬を迎えたかのような雰囲気だ。25日には欧州のサッカーシーズンを締めくくる、欧州チャンピオンズリーグ(CL)決勝がロンドン郊外のウェンブリー競技場で行われるにもかかわらず、まったく盛り上がっていない。ボルシア・ドルトムント―バイエルン・ミュンヘンのドイツ勢対決だからだろう。

欧州CL決勝、関心薄いロンドンっ子

英国メディアはそれなりに報じ、ロンドン市内でもイベントが開かれているが、人気がない。ロンドンっ子たちはこのドイツの2強への関心が薄いのだ。

2年前にもウェンブリーで欧州CL決勝が行われ、バルセロナ(スペイン)が「地元」のマンチェスター・ユナイテッドを3-1で下して優勝した。このときとは雰囲気がまるで違う。この静けさは、単に今季の欧州CL決勝のカードだけの問題ではない。

いま英サッカー界は少しショック状態にある、と見ている。今季欧州CLの8強には1995~96年以来、実に17シーズンぶりにイングランド勢が1チームも入らなかった。その決勝でドイツの2強が「我らの」ウェンブリーで戦うという。サッカーの母国を自負する人たちのプライドが傷つけられないわけがない。その裏返しとして、徹底的に無関心を装うというところに行き着いたのではないか。

ビッグネーム、相次ぎ引退

さらに今季末、多くのビッグネームが引退した。パリ・サンジェルマン(フランス)のMFで元イングランド代表主将のデービット・ベッカム(38)。ワンダーボーイと呼ばれた元イングランド代表ストライカーで、今季はストークでプレーしたマイケル・オーウェン(33)。さらに17シーズンにわたってリバプール一筋でプレーした元イングランド代表DFのジェイミー・キャラガー(35)。そして27年間にわたってマンUを率い、13回のリーグ優勝を含め38ものタイトルを獲得した、サー・アレックス・ファーガソン監督(71)も第一線から去った。

彼らは90年代にプレミアリーグが急成長し、ビジネス面で大成功して世界一のリーグへと押し上げた主役たちである。サッカー界にぽっかりと穴が開いたかのような寂しさも感じているのだろう。

新時代へ導く名将が2人上陸

だがイングランドの人たちの気質として、廃れていくのを黙って眺めているわけがない。それぞれが何か次なる一手を考えているはずだ。

状況も悪くない。来季からチェルシーの指揮官には、レアル・マドリード(スペイン)を今季限りで退任することが決まったジョゼ・モウリーニョ監督(50)の復帰が濃厚だ。正式に決まればメディアは連日、大々的に報じるだろうし、活気が戻るような気がしている。さらにマンチェスター・シティーの指揮官には、今季マラガを率いたマヌエル・ペジェグリーニ監督の就任が確実視されている。

ファーガソン監督は去ったが、プレミアリーグを新時代へ導く世界的な名将が2人もイングランドへ上陸する、というわけだ。プレミアリーグ全体の競技レベルがまたひとつ上がるのではないか、と期待している。

ファーガソン氏とよく似た戦術

日本人にとってもっとも気になるのは、マンUの指揮官に就任するデービット・モイズ新監督(50)の下で、MF香川真司(24)がどれくらい活躍できるかだろう。

モイズ新監督はスコットランド人で2002年からエバートンを率いてきた。栄冠は一度もないが、リーグ戦は04~05年の4位を最高に今季の6位を含め、7位以上が8回もある。これをエバートンという限られた予算しかない中堅クラブで長年続けたところに、モイズ氏をファーガソン監督が後継者に指名した理由がある。

スタイルはクラシックなイングランドのダイレクトサッカーとパスサッカーを混合させたもので、ファーガソン氏とよく似ている。だからマンUの選手たちはすぐに馴染めるだろう。だが4-4-2を使うことが多いため、基本的にはトップ下のポジションがない。つまり香川が冷遇される可能性もなくはない。

モイズ新監督がエバートンで培ってきたスタイルをマンUに当てはめれば、間違いなくすぐに機能して上位に食い込むだろう。だがライバルのマンチェスター・シティーを凌駕し、欧州CLで上位に勝ち上がれる強いチームになるかは疑問だ。はっきりいえば難しいだろう。

新得点パターン、未完のまま

ファーガソン監督は今季、チームをさらに進化させるため香川を獲得し、主に左MFやトップ下で起用した。従来のマンUのスタイルである、クロスからの得点だけでは勝てないと、優勝を逃した昨季、思い知ったからだろう。香川を軸にゴール前の混み合ったエリアにパスを通し、ドリブルで切り込んで得点を生み出すパターンも加味するためだった。

だが未完のまま終わった。香川のリーグ戦の戦績は17試合に先発し、3試合は途中出場だった。6得点を挙げ、4つのアシストにゴールの起点は多数……。3月のノーリッジ戦でハットトリックを決めるまで、なかなかチームのスタイルに馴染めず苦戦した。ようやく息が合ってきて自信も生まれたときには、もうシーズン終盤だった。

香川自身も「ゴール数は2桁いきたかったけれど、残念ながら達成できなかった。チームに貢献できたかというと(2季連続で)優勝したドルトムント時代と比較したら、自分のシーズンじゃなかったと思う」と悔いた。

エースのルーニーが移籍したら…

つまり来季、モイズ新監督の香川起用法を見れば、マンUをどのようなチームに変化させようと考えているか、分かるのではないか。今季終盤、退団希望を出したエースのウェイン・ルーニーがやはり今夏に移籍する、と取りざたされている。現時点で最も有力な移籍先はパリ・サンジェルマン。もしそうなれば、さらに新監督の香川への依存度は高まるはずだ。

香川が今季と似たようなトップ下やセカンドストライカーという役目を与えられれば、今季以上の戦績を残すことが期待できる。もしかするとルーニーなきチームでファンペルシーと並び、主力中の主力という存在になる可能性もある。来季の欧州CL決勝の試合会場は、リスボンのエスタディオ・ダ・ルスだ。そこでいまよりもはるかに輝く香川が見られるかもしれない。

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