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スコアアップ工房 パターのグリップ、意外に大切な「角」の有無

クラブデザイナー 喜多和生

今年のマスターズ・トーナメントのテレビ中継を見ていたら、「極太グリップ」を装着したパターを使っている選手が結構いました。極太グリップは3年ほど前に米ツアーで活躍する崔京周(K・J・チョイ=韓国)が使い始めたのが最初とされる。グリップが太いと手首を使わずストロークが安定する、というのが理由だったそうです。

評価、180度変わることも

ゴルフクラブのおもしろいところは、それまで「邪道」「あり得ない」と言われていたものが、あるきっかけで「革新的」「あれはよい」と、評価が180度変わることです。

きっかけとはそのクラブを使って、誰かが優勝することです。それが人気プロであればあるほど、また大きな大会であればあるほど影響が大きいのです。

今ではすっかり定着した長尺パターについて、グリップを体につけて固定して打つことを2016年から禁止することが決まったのも、メジャー大会での優勝が相次いだため規制する論議が本格化した結果でしょう。

ゴルフ規則のクラブのデザインの項目を見ればお分かりの通り、パターのグリップは断面が円形でなくてもよいと認められています。

製造法や素材で性格に違い

パターグリップの基本型となっているのが、ピンパターに装着されているピストル型(正面が平面になっていて、左手で持つ部分がやや角度があって太くなっているデザイン)です。これが定番となっていることは、グリップ各社が必ずピストル型をラインアップに加えていることからもわかります。

これはパターではグリップ正面の平面に両手の親指を、グリップ横面には両手の指の腹をあてがった握り方が主流になっていることと無関係ではありません。もし、ドライバーやアイアンのような握り方でパッティングをしたら、手首が動きすぎて距離や方向が一定しないでしょう。

ここで注意していただきたいのは、同じピストル型グリップでも、デザインや製造方法、素材によって性格に違いがあることです。そして、その違いが皆さんが思っている以上にパッティングに影響するという点です。

金型に入れてできあがったグリップは、はみ出した「ばり」をサンドペーパーで削り取って仕上げます。この際にグリップの正面と横面の角が丸くなりすぎるケースが結構あるのです。

角が丸くなりすぎていると…

こういうグリップを装着すると、パターを構えたときに「グリップ正面に乗っている親指はカップにスクエアに構えられているのに、両手の指の腹はスクエアに構えられていない」という感覚に陥ることがあります。

グリップの角が丸くなりすぎて、指の腹に角が当たっている感覚が得られません。このため、グリップの横面を意識しにくくなるのです。加えて、素材が柔らかいグリップだと、握った際にグリップから押し返してくる感覚が弱いので、さらに面を意識しにくくなります。

これだと「カップに対しスクエアに構えていないのではないか」という不安がよぎることがあります。これだけでパッティングを壊す十分な理由になります。

グリップを太くして手首固定

最近はボールが「柔らかい打球感」を強調しているためか、パターも柔らかいタッチが出せるようなフェース素材や構造を工夫しています。これが行きすぎて柔らかい打球感につながるものなら何でも歓迎というわけで、グリップの素材も以前には考えられないくらい柔らかいものが登場しています。これもスクエア感覚がとりにくい要因になっているようです。

極端な言い方をすれば「ふにゃふにゃ」「ふかふか」の素材。これではグリップから押し返す感覚がないので、さらにスクエア感覚がわかりにくくなります。すると、どうしてもインパクトを調整する、つまり手首を使ってストロークするようになります。

これではまずい。どうしたらよいでしょうか。一番簡単なのは、グリップを太くして手首を固定することです。

冒頭に紹介した極太グリップにも柔らかい素材が使われています。柔らかい打球感を出すため柔らかい素材にしたから、極太にせざるを得なかったというのが開発の流れだったのではないか、とすら勘繰りたくなります。

先日「どうもパッティングのタッチが出ない」と相談に来られたお客さんのグリップを見たら、グリップの角がほとんどなくなっていました。カートに積むときに、他人のパターと接触して無理に出し入れしている間に角がすり減ったようです。

正面と横面の角、ある程度はっきりと

ご本人は「皮脂や紫外線でゴムが劣化して硬くなってきたので、一皮むこうと紙ヤスリでこすった」と言っていましたが、これでさらに角が削れたようです。これではタッチが出なくて当然です。

上記のような理由から、私は適度に硬くて、グリップの正面と横面の角がある程度はっきりしているグリップをお薦めしています。このお客さんにはゴルフプライドのニオンを装着してみました。「角がしっかりしていると、グリップが太くなったような感じがする。グリップの横面の感覚がわかりやすくなったので、スクエアに構えやすくなった」と喜んでいました。

タッチがいまひとつなら、チェックを

もちろん、グリップの硬さやデザインには好き嫌いがありますから、一概には言えません。ただ、ドライバーやアイアンに比べて、パターのグリップは減り具合がわかりにくいため、長年交換しないでいるゴルファーが多いのも事実です。パターのタッチがいまひとつという場合にはフェース素材やボールとの相性もさることながら、グリップもチェックすることをお薦めします。

 きた・かずお 1966年ミズノに入社、クラフトマンとして中嶋常幸、鈴木規夫、岡本綾子らトッププロのクラブを手がけた。90年にゴルフクラブ工房の「ジョイメニィー」を設立。「クラブがスイングを創る」をテーマにプロ担当経験を生かし、アマチュア向けクラブも製作する。92年に製作したドライバーがクラフトマンモデルとしては世界で初めて、英セントアンドルーズゴルフクラブにあるR&A(ロイヤル&エンシェント)のゴルフミュージアムに展示されている。

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